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第3章

第286話 イーモコール

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ラドロのパーティメンバーもロアン君達も朝食はまだだったらしい。
冒険者ギルド脇のベンチで食べるというので、温風魔法で壁を作った。

「すまんな。気を遣ってもらって。」
「役に立ったなら良かった。」

何か他に食べる予定だったのかと思ったけど、適当なパンを買う予定だったそうで、焼きたてなので喜ばれた。

「本当はイーモにする予定だったのでござるが品切れだったでござる。」
「「「イーモ!」」」

イーモと聞いて、ロアン君達が一斉に腕を振り上げた。それを見てユリウスも嬉しそうに腕を突き上げている。

「イーモの代わりに焼きたてパンでござる。」
「温かくて美味しいです!ありがとうございます!」

パンを両手でモグモグと齧っている。

温風魔法で壁を作ったついでに消音魔法も発動させた。まあ、誰か聞き耳を立てているわけでもないんだけど。

「もう少ししたら出発だから、一応連絡とれるように、しておこうと思って。」

ラドロ達が暫くツヴァンで過ごすと言っていたから、ツヴァンでも会えそうだけど、何かあったらツヴァンの商業ギルドに連絡をいれてもらうように伝えた。

「商業ギルド?冒険者ギルドじゃなくて?」
「冒険者ギルドでも良いけど、商業ギルドの方が早く伝えてもらえるようにしておけるから。こっちがツヴァンに居なくても連絡してもらえるんだ。」
「へえ。商業ギルドに登録しておくと便利なんだな。」
「有料ではあるけどね。」
「まあ、そうか‥‥。」
「都度料金じゃないから遠慮しないでね。ラドロ達へは、冒険者ギルドに連絡した方が良いのかな。」
「そうだな‥‥。紹介状を送ってもらう返事は商業ギルドで受け取る事になっているが。」

口座開設の為の紹介状を書いて送ってもらうように実家に頼んでいて、その返信はツヴァンの商業ギルドに送ってもらう事にしたそうだ。
その為、返事が来たかどうか定期的にツヴァンの商業ギルドに確認に行く予定らしい。
まあ、だけど、紹介状が届いたら商業ギルドに頻繁に行く必要もないだろうから、連絡は冒険者ギルド経由の方が確実かもしれない。

俺とジョセフィンは商業ギルドと商会経由で、ツヴァン以外に滞在していても連絡がつくようにしてある。

「ツヴァン以外の商業ギルドからでも連絡がつくからね。もしよかったら拠点を移したりしても連絡くれると嬉しい。」
「そうか。ありがとう。連絡するよ。」

ツヴァンに滞在するのは、雪が少なくて、辺境程魔獣が強くないからだと思う。冬の間の活動の為なのだったら、春になったらまたどこかに拠点を移すだろう。
そうなった時も一応連絡が取れるようにしておこうと思ったのだ。

‥‥そんなに用件はないかもしれないけれどね。ロアン君達は春になったら学園に入学する。
ロアン君達が兄と連絡が取れる手段の一つになれば、いうことも考えてのことだった。

「おおお!もしかして、拙者がアリアス領の商業ギルドに行っても、連絡できるということでござるか?」

ユリウスが声を上げた。ツヴァン以外の商業ギルドからでも連絡ができるという言葉に反応したらしい。

「‥‥手紙を出すとかって、普通そういうものだろう?まあ、伝手があるから早くは伝わるけど。」
「居場所がわからなくても連絡がつくというのは凄いでござるよ!」
「俺達そんなにあちこちウロウロしてないと思うけど。」
「今も移動中でござる。」
「‥‥まあ、そうか。」

確かに言われてみれば、移動している時間が長いんだよな。帰省して往復している途中でも連絡がつくというのが嬉しいようだ。
それなら魔鳥便も教えようかな。

朝食用のパンを食べ終わった後、残りのパンをそれぞれ布に包んで懐にしまった。
そしてロアン君がお礼を言ってお辞儀をしてきた。

「すごくお世話になりました。この街でのこととか、口座の事もだけど、デヴィンの入学の事も‥‥。」

ロアン君が姿勢を正して礼を言い始めたのを見て、ローレ嬢とデヴィン君が慌ててそれに習った。

「「お世話になりました!」」

まだ、途中の街のネーダベルクやツヴァンでも会うとは思うんだけどね。でも出会った時に比べて表情が明るくなっているし、
感謝の気持ちは伝わって来た。

「「「イーモ!」」」
「「「イーモ!」」」

冒険者ギルド前で別れたのだが、最後はなぜかイーモコールになった。
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