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第3章

第242話 護衛の依頼主

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「パーン!パーン!」
パン入った袋を抱えて歩きながら、ユリウスが歌う。
隣で、同じようにパンの袋を抱えながら、トマソンが眉間に皺を寄せた。

「ユリウス。今、街は混乱状態なんだぞ。気を引き締めろ。」
「そうである。ひったくりの的になるであるぞ。」
マーギットさんにも注意されてユリウスはしゅんとなった。

大量にパンを購入してしまったので、ラドロ達に差し入れをしようかと、俺達は冒険者ギルドに向かっていた。
「パンもイーモのように温かいでござる。」

焼いてあまり時間が経っていないパンだったのか、抱えている麻袋にパンの熱が伝わってくる。
ユリウスはそれが嬉しいらしくてニコニコしていた。

冒険者ギルドに近付くにつれ、何となく不穏な雰囲気を感じた。
討伐が上手く行っていないのかな。
いくつもの魔力が不規則な波動で伝わってくる感じがする。

「あ、もしかして心配してきてくださったんですか?」
冒険者ギルドの中に入るのを躊躇していたら、横から声をかけられた。
ロアン君達だった。討伐後の武器を運んで手入れをするところらしい。

「アイスリザードを何体か倒したことは倒したらしいんですけど、思ったより数が多かったみたいで‥‥。」
ラドロ達は先発隊に加わったそうだ。
ロアン君達は、後方支援として留守番をしていたらしい。
「矢とか補充してもう一度討伐に出るかを話合っているそうです。
アイスワームの偵察も、雪であまり上手く進めなかったみたいで。」
街道の先行部隊の一部と,街道から完全に逸れて平原を進む部隊でアイスワームの偵察に行ったらしい。
しかし街道はアイスリザードが多く、平原は、雪に足下をとられてしまって思うように進めなかったそうだ。

「なんだか、アイスリザードの数が、昨日兄が見た時よりかなり増えているみたいで‥‥。」
ロアン君が悔しそうに言って目を伏せた。兄の成果が無駄になったと思うのかもしれない。

「難航していそうだね。あ、差し入れを持って来たよ。パンだけだけど。」
パンの焼けた匂を微かに振りまいている麻袋を少し上に上げてみせた。ローレ嬢の顔が輝いた。
「うわぁ。嬉しい!ありがとうございます。」
「凄く大量にあるんだけど。他の冒険者にも配ってくれない?」
そう言って皆が手にしている麻袋を指し示した。
「そんなに一杯?わぁ~。ホントにありがとうございます!」

パンの入った麻袋を嬉しそうに受け取るロアン君達に、ちょっと気になった点を告げる。
「ロアン君達って、元々護衛依頼でこの街に来ているよね。依頼主と連絡とってる?」
「え?」
「依頼主が契約している馬車隊が迂回するって言い出したらすぐ、街をでる可能性もあるよ。アイスリザードの問題が昨日のうち二解決してたら
今朝街をでるところだったんだよね。」
ロアン君達は目を見開き、お互い顔を見合わせていた。
「ちゃんと連絡とっていないと依頼主に置いて行かれるぞ。」
「えええ‥‥。ど、どうしよう‥‥。」
「宿の名前覚えてないや。」
依頼主の話をしたら、ローレ嬢が戸惑った様子でピョンピョンと飛んだ。
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