243 / 324
第3章
第242話 護衛の依頼主
しおりを挟む
「パーン!パーン!」
パン入った袋を抱えて歩きながら、ユリウスが歌う。
隣で、同じようにパンの袋を抱えながら、トマソンが眉間に皺を寄せた。
「ユリウス。今、街は混乱状態なんだぞ。気を引き締めろ。」
「そうである。ひったくりの的になるであるぞ。」
マーギットさんにも注意されてユリウスはしゅんとなった。
大量にパンを購入してしまったので、ラドロ達に差し入れをしようかと、俺達は冒険者ギルドに向かっていた。
「パンもイーモのように温かいでござる。」
焼いてあまり時間が経っていないパンだったのか、抱えている麻袋にパンの熱が伝わってくる。
ユリウスはそれが嬉しいらしくてニコニコしていた。
冒険者ギルドに近付くにつれ、何となく不穏な雰囲気を感じた。
討伐が上手く行っていないのかな。
いくつもの魔力が不規則な波動で伝わってくる感じがする。
「あ、もしかして心配してきてくださったんですか?」
冒険者ギルドの中に入るのを躊躇していたら、横から声をかけられた。
ロアン君達だった。討伐後の武器を運んで手入れをするところらしい。
「アイスリザードを何体か倒したことは倒したらしいんですけど、思ったより数が多かったみたいで‥‥。」
ラドロ達は先発隊に加わったそうだ。
ロアン君達は、後方支援として留守番をしていたらしい。
「矢とか補充してもう一度討伐に出るかを話合っているそうです。
アイスワームの偵察も、雪であまり上手く進めなかったみたいで。」
街道の先行部隊の一部と,街道から完全に逸れて平原を進む部隊でアイスワームの偵察に行ったらしい。
しかし街道はアイスリザードが多く、平原は、雪に足下をとられてしまって思うように進めなかったそうだ。
「なんだか、アイスリザードの数が、昨日兄が見た時よりかなり増えているみたいで‥‥。」
ロアン君が悔しそうに言って目を伏せた。兄の成果が無駄になったと思うのかもしれない。
「難航していそうだね。あ、差し入れを持って来たよ。パンだけだけど。」
パンの焼けた匂を微かに振りまいている麻袋を少し上に上げてみせた。ローレ嬢の顔が輝いた。
「うわぁ。嬉しい!ありがとうございます。」
「凄く大量にあるんだけど。他の冒険者にも配ってくれない?」
そう言って皆が手にしている麻袋を指し示した。
「そんなに一杯?わぁ~。ホントにありがとうございます!」
パンの入った麻袋を嬉しそうに受け取るロアン君達に、ちょっと気になった点を告げる。
「ロアン君達って、元々護衛依頼でこの街に来ているよね。依頼主と連絡とってる?」
「え?」
「依頼主が契約している馬車隊が迂回するって言い出したらすぐ、街をでる可能性もあるよ。アイスリザードの問題が昨日のうち二解決してたら
今朝街をでるところだったんだよね。」
ロアン君達は目を見開き、お互い顔を見合わせていた。
「ちゃんと連絡とっていないと依頼主に置いて行かれるぞ。」
「えええ‥‥。ど、どうしよう‥‥。」
「宿の名前覚えてないや。」
依頼主の話をしたら、ローレ嬢が戸惑った様子でピョンピョンと飛んだ。
パン入った袋を抱えて歩きながら、ユリウスが歌う。
隣で、同じようにパンの袋を抱えながら、トマソンが眉間に皺を寄せた。
「ユリウス。今、街は混乱状態なんだぞ。気を引き締めろ。」
「そうである。ひったくりの的になるであるぞ。」
マーギットさんにも注意されてユリウスはしゅんとなった。
大量にパンを購入してしまったので、ラドロ達に差し入れをしようかと、俺達は冒険者ギルドに向かっていた。
「パンもイーモのように温かいでござる。」
焼いてあまり時間が経っていないパンだったのか、抱えている麻袋にパンの熱が伝わってくる。
ユリウスはそれが嬉しいらしくてニコニコしていた。
冒険者ギルドに近付くにつれ、何となく不穏な雰囲気を感じた。
討伐が上手く行っていないのかな。
いくつもの魔力が不規則な波動で伝わってくる感じがする。
「あ、もしかして心配してきてくださったんですか?」
冒険者ギルドの中に入るのを躊躇していたら、横から声をかけられた。
ロアン君達だった。討伐後の武器を運んで手入れをするところらしい。
「アイスリザードを何体か倒したことは倒したらしいんですけど、思ったより数が多かったみたいで‥‥。」
ラドロ達は先発隊に加わったそうだ。
ロアン君達は、後方支援として留守番をしていたらしい。
「矢とか補充してもう一度討伐に出るかを話合っているそうです。
アイスワームの偵察も、雪であまり上手く進めなかったみたいで。」
街道の先行部隊の一部と,街道から完全に逸れて平原を進む部隊でアイスワームの偵察に行ったらしい。
しかし街道はアイスリザードが多く、平原は、雪に足下をとられてしまって思うように進めなかったそうだ。
「なんだか、アイスリザードの数が、昨日兄が見た時よりかなり増えているみたいで‥‥。」
ロアン君が悔しそうに言って目を伏せた。兄の成果が無駄になったと思うのかもしれない。
「難航していそうだね。あ、差し入れを持って来たよ。パンだけだけど。」
パンの焼けた匂を微かに振りまいている麻袋を少し上に上げてみせた。ローレ嬢の顔が輝いた。
「うわぁ。嬉しい!ありがとうございます。」
「凄く大量にあるんだけど。他の冒険者にも配ってくれない?」
そう言って皆が手にしている麻袋を指し示した。
「そんなに一杯?わぁ~。ホントにありがとうございます!」
パンの入った麻袋を嬉しそうに受け取るロアン君達に、ちょっと気になった点を告げる。
「ロアン君達って、元々護衛依頼でこの街に来ているよね。依頼主と連絡とってる?」
「え?」
「依頼主が契約している馬車隊が迂回するって言い出したらすぐ、街をでる可能性もあるよ。アイスリザードの問題が昨日のうち二解決してたら
今朝街をでるところだったんだよね。」
ロアン君達は目を見開き、お互い顔を見合わせていた。
「ちゃんと連絡とっていないと依頼主に置いて行かれるぞ。」
「えええ‥‥。ど、どうしよう‥‥。」
「宿の名前覚えてないや。」
依頼主の話をしたら、ローレ嬢が戸惑った様子でピョンピョンと飛んだ。
0
お気に入りに追加
97
あなたにおすすめの小説
死んだと思ったら異世界に
トワイライト
ファンタジー
18歳の時、世界初のVRMMOゲーム『ユグドラシルオンライン』を始めた事がきっかけで二つの世界を救った主人公、五十嵐祐也は一緒にゲームをプレイした仲間達と幸せな日々を過ごし…そして死んだ。
祐也は家族や親戚に看取られ、走馬灯の様に流れる人生を振り替える。
だが、死んだはず祐也は草原で目を覚ました。
そして自分の姿を確認するとソコにはユグドラシルオンラインでの装備をつけている自分の姿があった。
その後、なんと体は若返り、ゲーム時代のステータス、装備、アイテム等を引き継いだ状態で異世界に来たことが判明する。
20年間プレイし続けたゲームのステータスや道具などを持った状態で異世界に来てしまった祐也は異世界で何をするのか。
「取り敢えず、この世界を楽しもうか」
この作品は自分が以前に書いたユグドラシルオンラインの続編です。
異世界ハニィ
ももくり
ファンタジー
ある日突然、異世界へ召喚されてしまった女子高生のモモ。「えっ、魔王退治はしなくていいんですか?!」あうあう言っているうちになぜか国境まで追いやられ、隙あらば迫ってくるイケメンどもをバッサバッサとなぎ倒す日々。なんか思ってたのと違う異世界でのスローライフが、いま始まる。※表紙は花岡かおろさんのイラストをお借りしています。※申し訳ありません、今更ですがジャンルを恋愛からファンタジーに変更しました。
大好きな母と縁を切りました。
むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。
領地争いで父が戦死。
それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。
けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。
毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。
けれどこの婚約はとても酷いものだった。
そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。
そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。
言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。
喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。
12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。
====
●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。
前作では、二人との出会い~同居を描いています。
順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。
※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。
あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活
mio
ファンタジー
なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。
こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。
なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。
自分の中に眠る力とは何なのか。
その答えを知った時少女は、ある決断をする。
長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!
私は、忠告を致しましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。
ロマーヌ様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる