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第3章

第217話 新しいクレクレ?

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「デヴィン?」
ダークグレーの男の様子をみた、赤髪の二人が俺達の方を振り向いた。

「あ!もしかして貴族?」
赤髪の女の子が真っ赤な瞳を見開いた。

そして赤髪の男の子の袖を引っぱり、俺達の方を指差した。
「ねえ、ロアン!あの人達にお金貸してもらったら?」

意味不明の状況に今度は俺達の方が固まった。彼らは、多分貴族の子息子女なんだと思う。そうでなきゃ、目の前の相手が貴族だと思いながら
金を借りに行けとかせかしたりはしないだろう。‥‥だよね?

赤毛の女の子は自分では俺達に言い出さずに、やたらと赤髪の男の子の背中を押して俺達に金を借りに行けとせかしている。
それには赤髪の男の子だけでなく、ふてくされた態度だったダークグレーの髪の男も動揺している様子だ。

「ちょっ!ローレ!そんな失礼な事できないよ!」
「大丈夫よ、ロアン!多分学園に通っている人だよきっと。学園内って、あまり身分差で態度変えないって聞いたよ。」
「僕達、まだ学園入ってないだろ!」
「言ってみるだけ言ってみようよ!」
「ローレ、流石にそれは俺もちょっとどうかと思うぞ。」
「何よ、デヴィン!普段、貴族なんか!って言っているくせに!」
「ちょっ‥‥。ここで言うなよ!」

彼らの話し合いが終わるのを待っていた方がいいのだろうか。いや、時間の無駄だよな。
俺の前に立ってくれていたジョセフィンの肩にポンと手を置いた。

「ジョス、ありがと。‥‥ちょっと話聞いてみようか。」

ジョセフィンも最初は警戒してピリピリした魔力を手足に溜めていたけど、彼らの会話を聞いていて、呆れた様子になっていた。
俺達が話を聞く気があると気付いたのか、赤髪の男の子が前に一歩踏み出して、深々とお辞儀をした。

「ロアン・ルーベンと申します。こっちは双子の妹のローレ。もう一人は、デヴィン・ザンダーです。」
ルーベン家は男爵家だったと思う。ザンダー家は‥‥騎士爵家かな。

「ぼ、僕達、春から学園に入学予定なんです!」
「おいっ!俺は違うぞ!」
「デヴィン、諦めない為にお金を貯めてるんじゃないか。」

ダークグレーの髪のデヴィン君が、学園入学を否定して、ロアン君と揉め出した。すると、どんっと二人の背中をローレ嬢が叩いて、ヒソヒソと耳打ちした。
脱線するなってことかな。
ロアン君が再度俺達の方に向かって頭を下げた。

「あの‥‥多分学園に通っている方達ですよね。年齢的に‥‥。その‥‥、後輩を助けると思って‥‥今日の宿代分だけで良いんです!お金を貸していただけませんか?」

ロアン君がそう言うと、どんっと更にローレ嬢がロアン君の背中を叩いた。

「食事代はどうするのよ!」
「手持ちでパンくらいは買えるだろ。」
ヒソヒソと話をしている。ローレ嬢は、しっかりちゃっかりした性格なのかな。

場所はギルドの受付のカウンター前。他にも冒険者達がいるので場所を変えて話をする事にした。
ダメ元でギルドの個室を借りれないか聞いてみると言って、受付の女性の所に近付いた。カウンターの上に名前が書かれた札があった。
受付の女性はフレイヤさんと言うらしい。

「マーカス・プリメレモンと申します。」
「‥‥ギルド職員のフレイヤです。」
「フレイヤさんとお呼びしても?」
「ええ、構いませんわ。」

微笑んで挨拶をしたらフレイヤさんの表情が和らいだ。
彼らの方に一瞬目線を動かしてから、フレイヤさんに尋ねた。

「彼らとの話し合いの為にギルドの個室をお借りすることは出来ますか?」
「申し訳ございませんが、冒険者同士のお話しの為の個室の貸し出しはしておりません。」

フレイヤさんは相変わらず淡々とした口調で答えた。
俺は頷いてから、もう一つ質問をした。

「個室の件は判りました。もう一つ質問です。このギルドには、緊急寄宿の場所はないんですか?」
フレイヤさんの焦げ茶色の瞳が揺れた。ピクリと眉を動かして俺の顔を見た。

「‥‥ございます。」
「空きはないんですか?」
「‥‥ございます。」

緊急寄宿というのは、彼らの様に護衛依頼の途中で宿泊に困ったり、魔獣溢れなどで旅人が村に避難して来たときとかに、
ごく最低限の宿泊場所を冒険者ギルドが提供するという制度だ。外で野宿をして魔獣の襲われたり、凍死したりしないように最低限の夜明かしをする場所を提供するだけなので屋内の訓練場で寝袋で寝るとかという程度だ。それでも、雪の中で放り出されて凍死したりしないだけマシだと思うが。

このギルドにも緊急寄宿の場所はあるらしい。しかし、フレイヤさんは、彼らには説明はしなかったようだ。
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