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第3章

第216話 冒険者ギルドでの揉め事

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通りを歩いていると、大きな荷物を持って、急ぎ足で歩いている人が多い。

「結局出発しないって‥‥。今頃言われたってどうしろってんだよ!」
「ああ、宿確保しないと‥‥。」
「おい、宿ってどこにあるんだよ。」

昼に立ち寄って直ぐ出発予定だった馬車隊の人達かもしれない。宿泊予定じゃない街で泊まる事になるのは厳しいよな。

冒険者ギルドが有る場所は、第二広場と呼ばれる馬車の停留場の広場のすぐ近くだった。俺達が街に到着したときに着いた場所は第一広場で、第二広場の方が狭いが
近隣の街への乗り合い馬車の発着は第二広場でが使われているらしい。
立て札を持った人が大きな声で案内をしていた。

「南行きは運行を見合わせています!」
「王都方面は間もなく最終便が出発します!」

バタバタと王都方面の馬車に乗り込んで行く人達。ピーッと出発の笛の音が響く。馬車が去って行くと、第二広場は人気が少なくなり急に静かになった。そうすると
冒険者ギルドからの声が響いて来た。

「困るのよ!予定外の所で宿泊なんて!せめて宿代分を先払いしてよ!」

街に立ち寄った冒険者が足止めを食らって、文句を言っているのだろうか。
冒険者ギルドに足を踏み入れると、扉の開け閉めの音で周囲から少し視線が集まったが、受付前で大きな声を出してた人物はこちらには感心は示さず
受付に座っている女性に詰め寄っていた。

俺達と変わらないくらいの年齢の男性二人、女性一人の三人組だ。赤毛の男女は兄妹とかだろうか。髪色も雰囲気もちょっと似ている。装備もお揃いに見える。
もう一人の男性は二人よりは背が高くて、筋肉質。どことなくやる気がなさそうな雰囲気だ。

「お受けになったご依頼は、ネーダベルクまでの護衛依頼ですので依頼料はネーダベルク到着後に支払われます。」

受付にいた栗色の髪の女性が淡々とした様子で説明している。
バン!と、赤毛の男性がカウンターを手で叩いた。

「だから!オバサン!ちゃんと聞いてるの?元々今日の夕方に着く予定の護衛依頼だろ。既にもう夕方なんだよ。本当だったら依頼料はとっくに払われている時間じゃないか。依頼料が出ないと今日の宿泊どうしろっていうんだよ!」
「‥‥移動の護衛依頼は多少のリスクはあるものです。ギルドに登録時に説明が有ったと思いますが。」
「今そんな事言われても!オバサン、酷い!」

赤毛の女性‥‥女の子と言った方が適切かな。女の子がわっと両手で顔を覆った。赤毛の男の子が女の子の背中に手を回した。
ダークグレーの髪色をしたもう一人が、苛ついた様子で受付の女性に向かって言った。

「なあ、オバサン。俺達に凍死しろって言うのか?こんな雪の中、宿に泊まれなかったらどうなるかわかんだろ?」
「‥‥護衛依頼に急なスケジュール変更はあり得るのですから、あらかじめ準備しておくべきではないですか?」

受付の女性の声がどんどん冷たくなってる。あーあ、相当怒らせちゃってるよなぁ。

彼らの目的地であるネーダベルクは、この街から馬車で少し進んだところだ。多分、宿泊なしの半日の予定の護衛依頼だったんだろう。それが目的の街の手前で足止めになってしまって、一日の収入として見込んでいた依頼料はまだ出なくて宿泊料が準備できないみたいだ。

護衛依頼を受けられるようなレベルになったばかりの冒険者にありがちだ。半日の移動の護衛は負担は軽そうに見えるからつい引き受けてしまうんだろうな。
宿泊混みの護衛依頼の場合には予定が変わって日程が伸びた場合は、移動途中で依頼人が宿代を支払ってくれるはずだ。

半日護衛でも、不足の事態のときに宿代を払うという条件がついているものはある。依頼を受ける際に条件を確認しなかった彼らの落ち度ということだ。
夏場なんかは、野宿でもいいので延期の場合の条件は気にしないという人も多いけど、冬場はね。下手すると予定外の宿泊で赤字いいいだ。

とはいえ、一応冒険者ギルドも救済策は講じているはずなんだけどね。

助け舟を出すべきだろうか‥‥。考えていたら、ダークグレーの髪の男がこちらを振り返ってじろりと睨んだ。

「ああん?何見てんだ‥‥っ‥‥。」

ダークグレーの髪の男が怒鳴ろうとした時、ジョセフィンがすっと前に出た。ブワッと手や足から魔力が溢れ出る。

「何か?」
「‥‥いえ‥‥。」

ジョセフィンに軽く威圧されたらしく、ダークグレーの髪の男は怯んだ様子で固まった。
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