上 下
205 / 324
第3章

第204話 宿取り騒動

しおりを挟む
彼らは街についてから乗降広場で馬車を降りて、宿取りに走ったそうだ。事前に紹介してもらっていた宿に向かったが、男子二組が二人部屋をそれぞれ確保出来ただけだったようだ。
8人乗りの馬車できて、男子4人、女子4人の組み合わせ。女子4人が宿にたどり着いたときには、部屋が埋まった後だったらしい。

そこでフォーゲル君が、「令嬢を路頭に迷わすわけにはいかないから、男子が確保した部屋を令嬢達に譲ってはどうか。」と言い出したそうだ。
マルロイ君達からすれば、言いたい事は理解できるが、宿に泊まれないと凍死しかねないと思って困っているという。

「ホコリ高き王国貴族子息としては令嬢に譲るべきなんだっぺか~。でもこの真冬の中泊まる所がなくなるのは死活問題だっぺ。」
「それは困ったでござるなぁ。」
ユリウスは、青ざめた顔色のマルロイ君にホカホカのカップを持たせてやった。そしてどうしようかと首を傾げてチラリとこちらを見た。

「名案はないでござるか?」
「名案というか‥‥。他の宿も一杯なのかな。」
ユリウスが助けを求める様に聞いて来たので、詳しい事を聞いてみる事にした。

「宿は一つしか教えてもらっていないだっぺ。」
マルロイ君は手にしていた案内書きのを見せた。乗り合い馬車の乗客向けの案内らしい。立ち寄る街の案内として、夕食をとるのにお勧めの食堂がいくつか紹介されていて
そのうちの一つがこの宿の隣の食堂だった。たまたま宿の名前が書いてあっただけで、宿の案内でもないよ、これ。

「まず、譲るとかの話に時間かける前に他の宿に当たった方が良いよ。こうしている間にも部屋は埋まって行くよ。」
「ええ~!?あ~!そうだっぺか。でも、他の宿は知らないだっぺ!」
「行った先の宿の受付で、近くで同じような価格帯の宿を教えてもらえるか聞いてみなよ。」
提案してみたらマルロイ君はハッとして大きく頷いた。

「その手があったっぺ!聞いてみるっぺ!前進あるのみだっぺ!」
「ありがとうだす。希望は捨ててはいかんのだす。」
シン君もお礼を言って、二人で通りの向かいに戻って行く。

時々雪に足を滑らせながら走って行く彼らの後ろ姿を見送った。

「大丈夫でござるかな。」
ユリウスが心配そうに言った。

「そもそも、女子に譲ろうと提案した彼はどうするつもりだったんだろうか。」
トマソンが通りの向こう側を見つめながら眉間に皺を寄せた。

「さあ。他にあてがあったのか、後で考えれば良いと思ったのか‥‥。」
「あてがあったらマルロイ君達にもそう言うんじゃないのか。」
「そうだね‥‥。彼ら昼飯も食べ損ねてたくらいだからなぁ‥‥。」

ちょっと心配になる人達だよね。従者とか誰もつけていないのに、実家からは自力で帰ってこいって言われているんだろうか。
クラスメートで馬車を貸し切っているから「お友達と一緒なら大丈夫ね」って話になっているのかもしれない。
まあ、一応宿を取れていない同級生を気遣ったりはしているみたいだしね。
通りの向こうの彼らの様子を眺めていたら、他の宿の情報を聞いて来たのか、建物の中から出て来たと思ったら左右に分かれて移動し始めた。

「他の宿を探しに行ったようであるな。」
「宿が見つかると良いでござる‥‥。」
ユリウスとマーギットさんが、彼らが去って行った通りの向かいの宿の入り口を心配そうな顔をして眺めていた。
確かに気になるよね。宿が取れなくても野宿は厳しいし。

ユリウスは胸ポケットから宿のカードを取り出して、ハッとした様子で言った。

「拙者達の宿は満室と聞いていたから、伝えなかったでござるが何か有った時の連絡先として教えればよかったでござる。」
「‥‥彼ら自身は向かいの宿に部屋を確保したのだろう?宿に戻ってくるのではないか?」
トマソンが眉間に皺を寄せながら腕組みをして通りの向こうに目をやった。

「宿で待っていれば良いでござるか?」
「メッセージを預ければよいのではないか?」
デリックさんもユリウスに助言をした。ユリウスははっとして大きく頷いた。

宿の受付にメッセージを残す事にして通りを渡って宿に入ってみた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

前回は断頭台で首を落とされましたが、今回はお父様と協力して貴方達を断頭台に招待します。

夢見 歩
ファンタジー
長年、義母と義弟に虐げられた末に無実の罪で断頭台に立たされたステラ。 陛下は父親に「同じ子を持つ親としての最後の温情だ」と断頭台の刃を落とす合図を出すように命令を下した。 「お父様!助けてください! 私は決してネヴィルの名に恥じるような事はしておりません! お父様ッ!!!!!」 ステラが断頭台の上でいくら泣き叫び、手を必死で伸ばしながら助けを求めても父親がステラを見ることは無かった。 ステラは断頭台の窪みに首を押さえつけられ、ステラの父親の上げた手が勢いよく振り下ろされると同時に頭上から鋭い刃によって首がはねられた。 しかし死んだはずのステラが目を開けると十歳まで時間が巻き戻っていて…? 娘と父親による人生のやり直しという名の復讐劇が今ここに始まる。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 全力で執筆中です!お気に入り登録して頂けるとやる気に繋がりますのでぜひよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

愛されなかった私が転生して公爵家のお父様に愛されました

上野佐栁
ファンタジー
 前世では、愛されることなく死を迎える主人公。実の父親、皇帝陛下を殺害未遂の濡れ衣を着せられ死んでしまう。死を迎え、これで人生が終わりかと思ったら公爵家に転生をしてしまった主人公。前世で愛を知らずに育ったために人を信頼する事が出来なくなってしまい。しばらくは距離を置くが、だんだんと愛を受け入れるお話。

あ、出ていって差し上げましょうか?許可してくださるなら喜んで出ていきますわ!

リーゼロッタ
ファンタジー
生まれてすぐ、国からの命令で神殿へ取られ十二年間。 聖女として真面目に働いてきたけれど、ある日婚約者でありこの国の王子は爆弾発言をする。 「お前は本当の聖女ではなかった!笑わないお前など、聖女足り得ない!本来の聖女は、このマルセリナだ。」 裏方の聖女としてそこから三年間働いたけれど、また王子はこう言う。 「この度の大火、それから天変地異は、お前がマルセリナの祈りを邪魔したせいだ!出ていけ!二度と帰ってくるな!」 あ、そうですか?許可が降りましたわ!やった! 、、、ただし責任は取っていただきますわよ? ◆◇◆◇◆◇ 誤字・脱字等のご指摘・感想・お気に入り・しおり等をくださると、作者が喜びます。 100話以内で終わらせる予定ですが、分かりません。あくまで予定です。 更新は、夕方から夜、もしくは朝七時ごろが多いと思います。割と忙しいので。 また、更新は亀ではなくカタツムリレベルのトロさですので、ご承知おきください。 更新停止なども長期の期間に渡ってあることもありますが、お許しください。

断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。

みちこ
ファンタジー
両親が亡くなり、家の存続と弟を立派に育てることを決意するけど、ストレスとプレッシャーが原因で高熱が出たことが切っ掛けで、自分が前世で好きだった小説の悪役令嬢に転生したと気が付くけど、小説とは色々と違うことに混乱する。 主人公は断罪から逃れることは出来るのか?

恋より友情!〜婚約者に話しかけるなと言われました〜

k
恋愛
「学園内では、俺に話しかけないで欲しい」 そう婚約者のグレイに言われたエミリア。 はじめは怒り悲しむが、だんだんどうでもよくなってしまったエミリア。 「恋より友情よね!」 そうエミリアが前を向き歩き出した頃、グレイは………。 本編完結です!その後のふたりの話を番外編として書き直してますのでしばらくお待ちください。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

処理中です...