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第3章

第176話 西への同行者

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「本提出でも充分な出来に見えるけど。」
「ふふ。ありがとう。でも、休暇中に刺繍を頑張ったらもっと上達して良い作品が出来上がるかもしれないでしょう?」
「そうかぁ。良い作品が出来ると良いね。」

フローラ達淑女科の生徒達も「大お茶会」が終了したので、明日あたりから帰省を始めるそうだ。休暇前の最後に顔を会わせる機会だからと、1年の淑女科のクラスメイト達でカフェテリアに集まっていたのだそうだ。
大お茶会で集まったばかりだけど、上級生が集まる「大お茶会」と同じクラスの気心が知れた集まりとは全く違うらしい。
そしてカフェテリアに居たら、俺達の姿を見つけたので声をかけて来てくれたようだ。

ニコニコと話をしていたら、イリーとカサンドラが近付いて来た。フローラは二人を見てパアッと笑顔になった。まるで花が咲いたかのようだ。

「イリー、カサンドラ。レポートお疲れさま!明日よろしくね。」
「フローラもお疲れ様。荷造りできた?」
「大体は出来ているわ。」
「明日朝、淑女科の寮に迎えに行くわよ。荷物運び手伝うからね。」
「わあ、ありがとう!」

イリー達が帰省の時に馬車で同行するのは、フローラとナディア嬢だった。きちんと聞いては居なかったけど、そうだろうなとは思っていた。
領地の位置的にもカサンドラの実家へ向かう途中の位置になるからね。
直接聞かなかったのは、‥‥まあ、ちょっと羨ましかったからだ。

「フローラ、ナディア、明日ヨロシク~。」
ヘンリーが手を振って近付いて来た。うん‥‥。ヘンリーがカサンドラの馬車に乗せてもらうって言っていたからなぁ‥‥。

そこがまた気になって、直接聞けていなかったんだよね‥‥。

「‥‥ヘンリー、途中の宿とかどうする予定なの?女子ばっかりだよね。」
「御者さんと同室だよ~。」
「‥‥ああ、なるほど‥‥。」

ちょっと思い切って聞いてみたら、あっさりと答えが返って来た。まあ、よく考えればカサンドラの実家の馬車で帰るということは、御者以外にも使用人も同行しているんだよな。
ちょっとホッとした。

使用人と同室で良いのかって、カサンドラも気にしたらしいのだが、馬車に便乗させてもらうんだから構わないとヘンリーは答えたそうだ。
そうだよな。俺だって,フローラと同じ馬車で旅できるなら、宿の部屋とかは使用人と同室だろうが大部屋だろうが構わないと思うよ。

俺だって便乗したい。というか、馬車で送る側でも可能なら申し出たいくらいだ。でも、カサンドラやフローラの実家は王都から西方面。
エルストベルクは南方面で、方向が全然被らないんだよなぁ。

ユリウス達の白蛇山地の方面は王都から南西の方角で山を越える位置だけど、カサンドラ達は山地より北を迂回していく街道を通って行くのだ。

彼らの明日の出発時の話とかを聞いていると微妙な気持ちになるなと思っていたら、話題がこちらに振られた。

「マーカス達も明日出発なの?」
「うん。」
フローラの問いに微笑んで答えるとイリーが補足してきた。

「ユリウスとトマソンも一緒なのよね。」
名前を呼ばれたので、トマソンとユリウスが振り返った。椅子に座ってお茶を飲んでいたが立ち上がって会釈をした。

「あ、ダンスの時のご令嬢でござるな!」
ユリウスは、形式的な挨拶をした後にナディア嬢がダンスレッスン時にパートナーとなった事がある人物だと気がついたようだ。ハッとして挨拶をし直した。
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