上 下
171 / 324
第3章

第170話 社交の場と宿題

しおりを挟む
馬車の便乗計画が、だんだんバカンス計画みたいになっていく。それはそれで楽しい。
試験が終わった後なので教室の雰囲気はかなりゆったりしていた。
既に授業は自習だ。急いで帰省する人はすぐ休みに入るし、補講を受ける人以外は帰省の馬車の日程に合わせて通学している人だったりで、日を追う毎に教室の人数が少なくなって来ていた。

イリーとカサンドラは、補講はないけど淑女科で一緒に帰省をする人に日程を合わせているらしい。

「淑女科にも試験の慰労会とかあるの?」
「お茶会があるみたいよ。」

試験の日程は各学科で大差ないのに、淑女科のスケジュールに合わせて帰省するというから聞いてみたらそんな返事が返って来た。

「お茶会の為に帰省を遅らせるの?雪がどんどん深くなって行くこの時期に?」

試験が終わって、仲間内で羽を伸ばしてということは理解できるんだけど、それだけで何日も帰省を遅らせるというと良くわからない。

「うーん。結局は特進科の慰労会の日程と絡んでいるんだと思う。兄妹で特進科と淑女科っていう家も結構あるでしょ。
帰省は一緒にってなると、特進科の慰労会までは王都に残るからその間にお茶会を開催するみたいなのよね。」

嫡男は特進科に通っていて子女は淑女科に通うというケースは確かに多そうだ。
特進科の慰労会の日程までは、帰省が延期されるからその間に淑女科では、お茶会を開催する。参加者の中にはお茶会参加だけの為に帰省の日程を遅らせる人もいるということか。

「社交の場だからね。」
「イリーとカサンドラもお茶会に出るの?」
「出ないわ。お茶会と言っても、1年から3年までの淑女科の生徒が参加する規模が大きい会なのよ。部外者が入ると浮いちゃうから。」
「ああ、ほぼ公式の規模だね。」

特進科だけ「慰労会」というものを開催する事についての対抗心もあるのではないかとイリーは小声で話していた。
まあ、確かに特進科だけ特別待遇な面はあるよね。対抗心で規模が大きいお茶会が開催されるようになって、規模が大きいので参加しないと話題から取り残されるというような空気になっていくのかもしれないな。

「うーん。ちょっと面倒くさそうだね。結果的にイリー達の帰省のタイミングまで遅くなるわけだし。」
「大勢で帰った方が楽しいから待つのはよいのよ。それにその間に宿題片付けるし。」
「宿題かぁ。確かに学園の図書室使えるうちに片付けちゃうのはありだね。」

ガタッ!っと音を立ててヘンリーが立ち上がった。

「宿題!ねえ!レポート一緒にやらない?」

俺達の話が聞こえていたらしい。
更にガタッとユリウスも立ち上がる。

「しゅ、宿題って皆でやるでござるか~?」

冬季休暇は長いので、当然、宿題が色々出されている。各実家の地域に関するレポートなど地元でやった方が良いもののあるけど、図書室で資料を身ながらの方が進めやすいものも多いのだ。
俺の実家の図書室も蔵書は多い方だと思うので実家でやれば良いと思っていたけど、帰省まで時間に余裕があるから片付けられるものは片付けてしまってもよいかと思った。
ヘンリーは、一人で調査をするより皆でやりたい派のようだ。ユリウスは宿題をこなす事自体に不安があるみたいだ。

「ヘンリーとユリウスは補講があるだろ。」
「宿題も不安でござるよ。」
「補講以外の時間でできればいいんだね。皆でやろうよぅ~。」

ヘンリーとユリウスが詰め寄って来た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

大好きな母と縁を切りました。

むう子
ファンタジー
7歳までは家族円満愛情たっぷりの幸せな家庭で育ったナーシャ。 領地争いで父が戦死。 それを聞いたお母様は寝込み支えてくれたカルノス・シャンドラに親子共々心を開き再婚。 けれど妹が生まれて義父からの虐待を受けることに。 毎日母を想い部屋に閉じこもるナーシャに2年後の政略結婚が決定した。 けれどこの婚約はとても酷いものだった。 そんな時、ナーシャの生まれる前に亡くなった父方のおばあさまと契約していた精霊と出会う。 そこで今までずっと近くに居てくれたメイドの裏切りを知り……

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

悪魔退治は異世界で

tksz
ファンタジー
タカシは霊や妖を見ることができるという異能を持っている。 いつものように退魔師の友人に同行して除霊に赴いたタカシ。 いつもと見え方が違う悪霊に違和感を持つが友人とともに除霊を行うが5体の霊たちに襲われる。 友人から託されていた短剣で3体の悪霊を切り伏せたが4体目を切った瞬間に反撃を食らってしまった。 意識を取り戻した時に見たのは病室に横たわる自分の姿。 そして導かれて訪れた花畑の中の東屋で会った神様に驚くべき真実が告げられる。 悪霊と思っていた霊は実は地球の人々の邪心と悪意が生み出した悪魔だった。 タカシが食らった反撃は呪いようなものであの悪魔を倒さないとタカシは助からない。 地球の時間で3日のうちに異世界パスロに逃げた悪魔を倒すために神様の加護をもらいタカシは異世界へと旅立つ。 地球から不当に召喚された人たちも守っり、神様の加護で無双できる力は持っているけど、それでは解決できない問題の方が多いよね。 本当の力、本当に強いって何だろう。 他のサイトでも公開中の作品です。

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。

あいつに無理矢理連れてこられた異世界生活

mio
ファンタジー
 なんやかんや、無理矢理あいつに異世界へと連れていかれました。  こうなったら仕方ない。とにかく、平和に楽しく暮らしていこう。  なぜ、少女は異世界へと連れてこられたのか。  自分の中に眠る力とは何なのか。  その答えを知った時少女は、ある決断をする。 長い間更新をさぼってしまってすいませんでした!

私は、忠告を致しましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。  ロマーヌ様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ?

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...