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第3章

第169話 バカンスへの期待

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大部屋の宿泊費用は平均銀貨3枚くらいらしい。だから、一泊銀貨1枚と聞けば破格だと思うだろう。だけど、そうではないんだ。

「一部屋銀貨一枚なんだよ。6人で泊まれば一人当たりは1/6だよ。」
「は?」

俺の言葉に、ユリウスがぽかんとした。目が点になっている。

「食事は施設についている安い食堂がある。質素なメニューで構わないっていうなら、暖房費と朝夕の食事込みで一人銀貨1枚だって。こっちの方が値段が判りやすいか。」

セット料金でなくても食堂は使えるんだけどね。食事と暖房費のセットの利用料というがあって、それが銀貨1枚。もし一人で一部屋の宿泊の時は食事代分が浮く計算だ。一部屋の宿泊人数が少ないときは、セット料金の方が断然お得なのだ。
6人で一部屋の場合は、セットじゃなくても大体同じくらいの金額になる。

「銀貨一枚で朝夕の食事付きって何考えているでござるか!住みたいでござる!むしろずっと住みたいでござるよ!」
「いや、王都じゃないんだからずっとは住めないでしょ。言っとくけど設備も食事も簡素だよ。貴族用の部屋というわけじゃないからね。」

契約金で運営されているからの価格なので、街中で同じ価格帯で食事をするよりはマシだとは思うけど。それでも、貴族がバカンスで使う為の部屋ではない。

「食事は食べられば問題ないでござるよ。何日いられるでござるか?3泊とかくらいできるでござるか?」
「え?延泊は1日の予定だったのに。まあ、宿泊自体は1週間でも問題ないけど‥‥。実家に帰るんだよね。」

俺がそう言うと、ユリウスはトマソンの方をバッと振りむいた。

「トマソン氏!拙者は連泊問題ないでござるよ。冬期休暇は長いでござるから!3日!どうでござるか?1週間は長過ぎるでござるか?」
「‥‥俺も3日でも1週間でも問題ない。帰省の時は馬車に乗りっぱなしになるから、中間地点で身体を休められるのは正直助かる。日数については確認するけど、延泊自体は兄も問題ないはずだ。」

何だか1日延泊の提案をしたのに、3日とか1週間とかの話になってきた。まあ、俺も問題ないからよいか。

実家の様子は気になるから帰省はするけど,実家に長期滞在したいわけではないらしい。経済的に余裕があるなら実家に何日か滞在した後は保養地に行ったりバカンスを楽しみたいのだそうだ。
だが、現状は経済的に厳しい状況なので、ツヴァンで連泊できるというのは魅力的なことだったらしい。
ユリウスの兄、マーギットさんも問題ないだろうということだった。というか、ユリウスが交渉してみせると息巻いていた。

散々、消音魔法だとか他の人に知られたらクレクレされるだとか言っていたユリウスだったが、ツヴァン滞在計画でテンションが上がってしまったようだ。消音魔法を切った後、周囲に話しそうになってトマソンに止められているという光景を何度か見た。
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