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第3章

第160話 聴取終了

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「仲間だよ‥‥。エルマーさんは仲間だ‥‥。」
「将来集る対象だっただけじゃないか。」
「違う!違うんだ‥‥!ああ‥‥僕は‥‥僕は何て事を‥‥。」

ゼラルド伯爵令息が泣き出して机に突っ伏してしまった。

暫く泣き声が室内に響くのを黙って聞いていた。でも、ずっと泣き止まない。どうしようかとジョセフィンの方を見ると、ジョセフィンが目を細め肩を竦めた。
困って周囲を見回すと、壁際に立っていた騎士二人も肩を竦めるポーズをしてみせた。ヴィルヘルムさんの方を見るとやれやれという表情。

ええー?俺が泣かしたみたいになってるんだけど‥‥。

暫く様子を見たけど、ゼラルド伯爵令息がなかなか泣き止まなかった。結局ドンっと背中を軽く叩いて、涙でぐちゃぐちゃになっているゼラルド伯爵令息の顔を無理矢理ハンカチで拭いて帰って来た。
外はすっかり真っ暗になっていて、チラチラと雪が降り始めていた。
何だか気が沈むけど寒いので早歩きになりながら帰路についた。

「ねえ、ジョス‥‥。イマイチ収穫なかったね。」
「‥‥新しい情報としては‥‥そうですね‥‥。でも、ゼラルド伯爵令息の心境には何か影響あったかもしれないですよ。」
「どうかねえ。」

彼の心境に変化があったとして、エルマーさんとクラーラさんに謝罪するかどうかっていう位な気がする。まあ、エルマーさんも彼らの事を「仲間」だと思っていたなら
謝罪に来るメンバーが一人もいなかったら辛いだろうしなぁ。

まあ、エルマーさんは、クラーラさんへの対応を考えると、完全に被害者というのは微妙な気がするけどね。
学園内の「仲間」を大事にしようとする気持ちだったとしても、婚約者を不安にさせちゃってたんだからね。

図書委員会ってなんだよって思ってた所があったけど、存続させてあげたいっていう友情からだったんだとちょっと見直した。
とは言っても、今後は本当に存続は危ういだろうけど‥‥。
今までだって、ゼラルド伯爵令息から相談を受けたエルマーさんが加入するまで誰も入らなかったみたいだし。

「ゼラルド伯爵令息がグズグズになっちゃったんで、詳しく訊けなかったけど‥‥ラウム伯爵令息って急に委員会に入って来たみたいだね。エルマーさんの侍従候補になったのは、図書委員に入った後だよね。
親しくもない元々誰も入らない委員会だったのに。」

「‥‥エルマーさんが加入したときに、宣伝でもしたんじゃないでしょうか。存続の危機だから協力してくれとか。公爵令息が宣伝していたから加入する、ということはあるんじゃないですか。」

俺の言葉にジョセフィンが考えて答えてくれる。

「それなら、もっと沢山加入する人がいるんじゃないか?」
「‥‥ロセウス子爵令嬢は、ラウム伯爵令息が委員会に連れて来たのでしたっけ。」
「怪しいよなぁ。ラウム伯爵令息とは話ができないかな。」
「‥‥‥あちらは‥‥王宮騎士団の取り調べの後は冬期休暇が終わるまで戻って来ないのでは。」
「そうだよねぇ。」

もう少ししたら学園内では試験があり、試験が終わると長めの冬期休暇に突入してしまう。
正確には、試験後、冬期休暇までは数週間あるのだが自習やレポート等の軽めの授業になっていて遠方に帰省する場合は帰省してしまってよい事になっている。
雪が深くなると帰省がし辛くなるからね。

そういえば王宮騎士団に連行された彼らは試験を受けられるんだろうか。
‥‥特進科にいられるかも微妙なのかな。その辺はこちらが考えても仕方がないけど。

2番街の商会の部屋でジョセフィンが入れてくれた生姜入りのお茶を飲みながら窓の外を見た。チラチラと降り続ける雪が通りを白く染め始めている。そろそろ本格的に冬が始まろうとしていた。
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