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第3章

第117話 晩秋の夕べのチケット

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「ねえねえ、僕達も『晩秋の夕べ』に参加しない?」

俺が薬草の事を考えていたら、エドワードが提案してきた?

「え?あれは特進科専用のイベントだろ? 俺達は警備で参加ってこと?」
「同行者枠だよ。友達一人は呼べるんだ。ダンスじゃないから男女関係ないし。」

エドワードが掌に指を当てて何かカウントしているような仕草をした。

「特進科三人で騎士科三人なら全員参加できるよね。」

エドワードがそう言うとデリックさんが急に慌てた様子になった。

「ちょ、ちょっと待って欲しい。演奏会に参加する費用の余裕はないのだが。」

トマソンも、気がついたのかハッとしている。アワアワしてキョロキョロ周囲を見回している。フフフとエドワードが笑って胸ポケットから何かを取り出した。

「じゃーん! 招待チケット貰ってたんだよ。これ一枚で一人同行者も付いて参加できるんだ。」

エドワードがテーブルの上にチケットを並べた。四枚ある。
そしてテーブルに並べたチケットを自分で覗き込んで、エドワードが「あ」と声を上げた。

「このチケットだと特進科じゃない人二名でも大丈夫みたいだよ。」

言われて覗き込むと確かにそのように記載されている。学園長の印も押されている。ちゃんとしたチケットのようだ。

「エドワード、これどうしたの?」
「イベントの推進委員の人に貰ったんだよ。昼休み食事をしていると宣伝にくるんだ。ちょっとイベントのお話を聞いてあげると毎回1枚くれるんだ。」
「そ、そんなの俺は貰った事ないが‥‥。」

デリックさんが眉をひそめて困惑顔ををしている。

「うん。殿下とのお食事グループに参加してた時だけだね。」
「‥‥ああ、なるほど‥‥。」

トリー殿下との特進科グループとの食事の時に、推進委員がイベントの宣伝に来ていたということか。
イベント推進委員はそんなに気軽に殿下に近づけるのかというと、実はそうではないらしい。グループで食事している間にイベント宣伝の為の挨拶に来られたときには
昼食に参加しているグループのうち誰か一人が対応をするということになっていて、エドワードは頻繁に対応をしていたのだという。

イベント推進委員達側もトリー殿下に直接挨拶ができなくても、挨拶に来たという事実が有れば満足していくのだそうだ。

説明を聞いてデリックさんもやっと納得したようだ。

「正直演奏会はちらっと見に行く程度に考えてたんだけど、シュヴァルツ公爵令息達が別の所でお揃いのジャケットを買ってくるかもしれないよね。
ちょっと気にならない?」
「うん‥‥。クラーラさんが傷ついたりしそうで心配だな。」
「でしょでしょ。もう一枚あるからアイヴリンガー侯爵令嬢にも使ってもらって誰か同行したらいいんじゃないかな。」

なるほど。イリーかカサンドラと同行してもらうか。
何かが起きるっていうわけではないけど。エルマーさん達が揃いのジャケットを来ていなかったとしても、エルマーさんとマリエル嬢が一緒にいたらクラーラさんは心穏やかじゃないよな。
誰か付いていた方が安心な気がする。

エドワードの案に乗ることにして「晩秋の夕べ」の演奏会のチケットを受け取った。
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