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第3章
第106話 カフェテリアに向かう途中
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買い物ツアーから一週間もすると、王都には雪がちらつき始めた。
冬の買い物はギリギリだったんだな。
昼休み、カフェテリアに向かう途中の渡り廊下を、冷たい風が吹き抜ける。
ブルッと身震いして、一瞬足を止めた時、声が聞こえた。
「クラーラ様がひどいんですぅ~、エルマー様ぁ~」
「クラーラ!一体何をした!?」
「わ、わたくしは何もしておりません‥‥。」
「足を引っかけられたり、池に突き落そうとされたりしたんですぅ~、怖かったですぅ~、エルマー様ぁ~」
「本当か?クラーラ!」
「や、やっておりません!」
「嘘よ、エルマー様につきまとわないでって、嫌がらせを‥‥。エルマー様ぁ~。」
どうしよう。またマリエル嬢とエルマーさんとクラーラ嬢だ。
渡り廊下の中央で言い争っている。
カフェテリアに行きたいんだけどな。
魔黄金虫でも飛ばそうかと思っていたら背後から人の気配がした。
「道が混んでいるでござるか?」
振り向くと、トマソンとユリウスが立っている。
トマソンは,マリエル嬢を見て眉間に激しい皺を寄せた。黒いオーラが出ていそうだ。
ユリウスはじっと彼らの様子を見た後、「ふむ」、と軽く息を吐いて足を踏み出した。
「通して欲しいでござる!カフェテリアに着かないうちに、昼休みが終わってしまうでござる!」
「!」
エルマーさんが、はっとして、時計を見やった。
「は、話はこの次にする。」
ざっと大股でカフェテリアの方角に歩き出した。マリエル嬢が「待ってぇ~」と言いながら後を追って行った。
クラーラさんは涙ぐんでその場に立ち尽くしている。
俺はクラーラさんに歩み寄ってから、ハンカチを出してクラーラさんに差し出した。
「マーカス君‥‥。」
そのままにもしておけないので、一緒にカフェテリアに向かうことにした。
「カフェテリアではどなたかと待ち合わせだったんですか?」
「ええ、イリー達と。カフェテリアに向かっていたら、急にあの方が近くで転んで‥‥、わ、私が足をかけたと‥‥。」
マリエル嬢が騒いでいたら、後からエルマーさんがきて、先程の状況になったのだという。
「わ、私、気に入らないからと足をかけたりなど‥‥。」
「オーバーキルのクラーラさんが、そんな小さな攻撃するわけないよね。婚約者さんはクラーラさんが小さい攻撃苦手なのをしらないの?」
「マーカス様っ。」
俺が言うと、ジョセフィンが脇腹をつついてきた。
クラーラさんは俺が渡したハンカチで涙をふき、顔を上げた。
「‥‥ご存知のはずです‥‥。」
「うん?どういう状況で知ったのか気になるけど。知ってるなら、やってないって気がつかないのかな。」
「わからないです‥‥。」
俯くクラーラさんに、ジョセフィンが声をかけた。
「でも、『やったのか?』とは訊いてはいたけど、『やっただろう』とは言ってませんでしたね。」
「え?」
カフェテリアに向かう。もう少し話しを訊きたいところだったけど、クラーラさんはイリー達とランチの約束をしているし、俺とジョセフィンはエドワードと待ち合わせているので、カフェテリアの入り口で別れを告げた。
なぜか、後ろに、トマソンとユリウスがついて来ている。
「えっと‥‥二人は、兄君達と待ち合わせなんじゃないの?」
「なぜ、わかったでござるか?は‥‥まさか、暗黒の力を‥‥。」
「怖い妄想やめて。カフェテリアは他の学科の人と一緒の時に使うからさ。」
「なるほどでござる。拙者らは定期的に会合を設けているでござる。」
試作品のときに出会って意気投合‥‥、というほどではないけど領地が近く、同じように領地の復旧を目指している状況なので情報の共有の目的で、昼食時に集まっているらしい。
「それと、カフェテリアの方が、料理が美味しいのでござる。」
「それはわかる。」
冬の買い物はギリギリだったんだな。
昼休み、カフェテリアに向かう途中の渡り廊下を、冷たい風が吹き抜ける。
ブルッと身震いして、一瞬足を止めた時、声が聞こえた。
「クラーラ様がひどいんですぅ~、エルマー様ぁ~」
「クラーラ!一体何をした!?」
「わ、わたくしは何もしておりません‥‥。」
「足を引っかけられたり、池に突き落そうとされたりしたんですぅ~、怖かったですぅ~、エルマー様ぁ~」
「本当か?クラーラ!」
「や、やっておりません!」
「嘘よ、エルマー様につきまとわないでって、嫌がらせを‥‥。エルマー様ぁ~。」
どうしよう。またマリエル嬢とエルマーさんとクラーラ嬢だ。
渡り廊下の中央で言い争っている。
カフェテリアに行きたいんだけどな。
魔黄金虫でも飛ばそうかと思っていたら背後から人の気配がした。
「道が混んでいるでござるか?」
振り向くと、トマソンとユリウスが立っている。
トマソンは,マリエル嬢を見て眉間に激しい皺を寄せた。黒いオーラが出ていそうだ。
ユリウスはじっと彼らの様子を見た後、「ふむ」、と軽く息を吐いて足を踏み出した。
「通して欲しいでござる!カフェテリアに着かないうちに、昼休みが終わってしまうでござる!」
「!」
エルマーさんが、はっとして、時計を見やった。
「は、話はこの次にする。」
ざっと大股でカフェテリアの方角に歩き出した。マリエル嬢が「待ってぇ~」と言いながら後を追って行った。
クラーラさんは涙ぐんでその場に立ち尽くしている。
俺はクラーラさんに歩み寄ってから、ハンカチを出してクラーラさんに差し出した。
「マーカス君‥‥。」
そのままにもしておけないので、一緒にカフェテリアに向かうことにした。
「カフェテリアではどなたかと待ち合わせだったんですか?」
「ええ、イリー達と。カフェテリアに向かっていたら、急にあの方が近くで転んで‥‥、わ、私が足をかけたと‥‥。」
マリエル嬢が騒いでいたら、後からエルマーさんがきて、先程の状況になったのだという。
「わ、私、気に入らないからと足をかけたりなど‥‥。」
「オーバーキルのクラーラさんが、そんな小さな攻撃するわけないよね。婚約者さんはクラーラさんが小さい攻撃苦手なのをしらないの?」
「マーカス様っ。」
俺が言うと、ジョセフィンが脇腹をつついてきた。
クラーラさんは俺が渡したハンカチで涙をふき、顔を上げた。
「‥‥ご存知のはずです‥‥。」
「うん?どういう状況で知ったのか気になるけど。知ってるなら、やってないって気がつかないのかな。」
「わからないです‥‥。」
俯くクラーラさんに、ジョセフィンが声をかけた。
「でも、『やったのか?』とは訊いてはいたけど、『やっただろう』とは言ってませんでしたね。」
「え?」
カフェテリアに向かう。もう少し話しを訊きたいところだったけど、クラーラさんはイリー達とランチの約束をしているし、俺とジョセフィンはエドワードと待ち合わせているので、カフェテリアの入り口で別れを告げた。
なぜか、後ろに、トマソンとユリウスがついて来ている。
「えっと‥‥二人は、兄君達と待ち合わせなんじゃないの?」
「なぜ、わかったでござるか?は‥‥まさか、暗黒の力を‥‥。」
「怖い妄想やめて。カフェテリアは他の学科の人と一緒の時に使うからさ。」
「なるほどでござる。拙者らは定期的に会合を設けているでござる。」
試作品のときに出会って意気投合‥‥、というほどではないけど領地が近く、同じように領地の復旧を目指している状況なので情報の共有の目的で、昼食時に集まっているらしい。
「それと、カフェテリアの方が、料理が美味しいのでござる。」
「それはわかる。」
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