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第3章

第102話 噂をすれば

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鶏料理のランチコースを注文したら、ハーブをまぶしてカリカリに焼いた鶏のローストが出て来た。付け合わせの野菜が色とりどりで綺麗だ。
カリッとした表面をナイフで切ると、中はジューシー。なかなか美味しい。
フローラも鶏料理を注文していた。同じ物を食べてる!美味しいね、といったら頷いて微笑んだ。可愛い。

「マーカス様とジョス様は、風紀委員なのでしょう?」

ナディア・マローネ子爵令嬢は、やはり2年の風紀委員、フーゴ・マローネ先輩の妹君だった。
食後の茶を飲みながら、委員会の話題となったときに、俺とジョスに話しかけてきた。

「いや、正式には入っていないんだよ。」
「そうでしたの。兄と一緒に歩いているところをお見かけしたので、風紀委員なのかと思いましたわ。」

ナディア嬢は、小柄で目がくりくりしている。小動物を思わせる雰囲気だ。
クスクス笑った後、ふと思い出した様子で、言った。

「‥‥そういえば‥‥あの、青い髪で左手にだけ手袋をされた方‥‥。以前ダンスで‥‥。」
「ああ、ユリウスの事?」
「ええ、パートナーの交換の事で、結局話がまとまらずに一曲見学になってしまったでしょう。その時、自分の手袋が嫌がられたせいだってとても気にされていた様子でしたの。」
「あれ、君たちはパートナー交換を申し出られただけだったから、見学でなくてもよかったよね。」
「そうなんですの! そもそもロセウスさんが、ごねなければ「流石ですわぁ~!エルマー様ぁ!」」

ナディア嬢の言葉を吹き消すように、甲高い声が耳に飛び込んで来た。

声が聞こえた方に目をやると、奥側の少し離れた席に、身覚えのあるローズピンクの髪と、赤金髪が見えた。
二人きりではなく、5人でテーブルを囲んでいる。噂をしたら召還してしまったのか‥‥?

「瞳の色と同じ色の猫の目魔石のペンダントなんて、とってもお洒落ですのね!」
「お、お洒落かな‥‥。気に入ってはいるんだ。」

エルマーさんの胸元は見えないけど、瞳の色の猫の目魔石って‥‥。

「お洒落ですよぉ~!それに猫の目魔石ってとっても高価だって聞きました。それなのに瞳の色と同じ色なんて、手に入り難いのではありません?」
「そうかな‥‥。」

エルマーさんとマリエル嬢が隣あって座っていて、向かい側に3人座っている。パッと見た感じ学園の生徒のようだ。
手前側に座っていた深緑色の髪をした人物が何か計算するように指を動かして発言した。

「相場は原石で30万ゴルくらいと聞きます。宝飾品となったら100万ゴル位でしょうか。質が良い物はもっとするかと。」

「まあ!」

マリエル嬢が声を張り上げた。エルマーさんは、ちょっと居心地悪そうに見える。
金額の相場を言うとか、無粋だよな。

「青の猫の目魔石って‥‥。」

フェリクスが呟く様に言った。猫ダンジョンに行ったメンバーは、エルマーさんの顔を見た事がなくても、ピンと来たようだ。視線を泳がせている。
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