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第3章

第94話 皆で淹れたお茶

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「ねえ、見て!お湯沸かせたよ!あったかーい!」

トリー殿下が、ポットの蓋を開けてニコニコしている。ボワッと白い湯気が広がる。

「火傷、気をつけてね。」
「うん!エドワード、今日のお茶の葉決まった?」
「うん、こちらの香りがいいやつに。」
「いいね!じゃあ、ポット温めるんだったよね。」

トリー殿下が慎重にポットに湯を注いだ。ジョセフィンが傍にぴったりついてお湯の注ぎ方まで細かく注意をしている。
火傷でもしたらこの早朝お茶会自体ができなくなってしまうかもしれないと皆判っているから、楽しくお茶を淹れてはいるけど真剣だ。
トリー殿下の所作を心配そうに見つめていたエドワードが、緊張した様子でお茶の葉をポットに入れた。
エドワードの手がぷるぷる震えているのを見て、思わず声をかける。

「エドワード、お茶の葉では火傷しないよ。」
「‥っ!葉っぱこぼれちゃう!」

口の端を緩めるエドワード。茶葉は無事にこぼれずにポットに入った。そして砂時計をスタンバイ。
トリー殿下がポットにお湯を入れ終わったら、砂時計をセットするのだ。

「ふー、こんなに緊張すること、ジョスはいつもやっているの?」
「慣れれば緊張せずにできるようになるんですよ。」
「そうなんだ。ふふっ‥‥後少し‥!飲むの楽しみだね!」

トリー殿下は砂時計の残りの砂を眺めてニコニコした。

「美味しーい!これ,僕が淹れたんだよね!」

カップにお茶を注ぐところまでやりきったトリー殿下は、紅茶を一口飲んで目を輝かせた。

「ええ、トリー殿下がお入れになったお茶です。‥‥とても美味しいですね。」

ジョセフィンが、紅茶を味わって微笑んだ。

「ありがとう!ジョスが教えてくれて、エドワードが茶葉を選んでくれたおかげだよ。マーカス、マーカスは‥‥。」
「‥‥お茶菓子は俺が選びました。」
「そうだった!このお茶菓子、凄くお茶に合うよ! 皆で協力したお茶会だね!」

ぱーっと花開く様にトリー殿下が嬉しそうに笑った。気持ちがほっこりする。


お茶会でほっこりした後、普段通るコースを変更して、騎士科の寮の裏手の道を進んだ。この時間帯は寮の裏庭でフリードリヒ先輩が修練していることがあるので、
もし会えたら寮への立ち入りルールなどについて聞いてみようと思ったのだ。

‥‥婚約解消後も、婚約者の権利を行使して寮に立ち入っているとして、誰かが迷惑を被って訴えでているわけではないんだけど。
ローズピンク嬢が既に特進科の別の生徒と婚約している可能性だって、ないわけじゃない。
でも、既に無効ははずの証書を使っているのだとしたら‥‥。そういう状況を許しているとしたらセキュリティー上問題じゃないかと思う。
トリー殿下も同じ寮にいるんだ。
権限ない人がうろうろする状況を作りたく無い。
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