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第3章
第78話 晩秋の虫採り
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早朝お茶会を終えて、一度部屋に戻る為、ジョセフィンと並んで歩きながら、赤く色づいた木々が冷たい風に揺れるのを見上げた。
「ねぇねぇジョスジョス。」
「なんです?急に変な呼び方やめてください。」
「もうすぐ冬だろ。エドワードの召還練習用の魔黄金虫って、集められると思う?」
「‥‥うーん‥‥。寒いからこそ魔力溜まりに集まってるかもしれないですよ?」
そう言いながらもジョセフィンは難しそうな顔をした。
「どうかな。まあ、本格的に冬になる前に行ってみないとな。」
「エドワードも誘ったら喜ぶんじゃないですかね。」
「ああ、それはいいかも。」
晩秋の虫採り計画が決まった。
放課後、日が沈みかけている中、古代の神殿の柱が建ち並ぶ公園を歩く。
もっこもこに着込んだエドワードが、興味深げに、辺りを見回しながらついてくる。
「へぇ。王都にこんなところがあるんだね。この辺に魔力溜まりがあるの?」
「柱の近くにはないよ。もう少し外れたところ。」
そういって俺は、柱が並ぶ道を抜けた先の、細い木がいくつか生えている辺りを指差した。
枯れた色の草が風に揺れている中、丸太が転がっている。
「この丸太付近を調べるんだよ。はい、虫籠持って。手袋もしたほうがいいよ。」
虫かごと布手袋を手渡す。手袋は、虫に触るのを躊躇して、取り逃がしたりするのを避けるためだ。
丸太は、俺達が以前運んで来手置いておいたものだ。
何回か魔黄金虫を採取していたんだけど、木や丸太に魔蜂の蜂蜜を塗っておいたりすると、魔黄金虫が集まりやすくなるんだ。
ここにくるのは久しぶりだから、蜂蜜はまだ塗っていないけど、今日、魔黄金虫が見つからなかったら、
蜂蜜を塗っておいて後日また来る予定だ。
「見つかったらすぐ虫かごにいれなよ。」
「こんな寒い時期に見つかるかな。」
「魔黄金虫は、一応魔獣で魔力があるからか、普通の虫よりずっと長生きなんだよ。冬を越すならどこかに身を潜めているはずだろ。」
そういって、そおっと丸太を動かしてみると、艶のある丸い姿が見えた。
「いた!」
「え、本当?」
「一匹だけ。」
ささっと虫かごに放り込むと、エドワードがうらやましそうに覗き込んだ。
「丸太の陰とか見てごらんよ。」
「うん!やってみる!」
丸太をひっくり返してみたり、小枝を拾ってそれで、土をほじってみたり、慣れない作業なのか、その都度叫び声のような声をあげながらも
エドワードは結構楽しそうに魔黄金虫を採取できた。
5匹程捕まえた頃には、日がすっかり沈んで辺りが暗くなってしまったので、虫獲りイベントは終了した。
「5匹か。練習にはちょうどいいかもね。念のため、集まってくるように木に魔蜂の蜂蜜は塗っておくけど。」
「ありがとう!練習楽しみ!」
エドワードは、虫かごを抱えて、嬉しそうに笑った。マフラーで首の周りをグルグルに巻いているけど、鼻の頭だけちょっと赤くなってる。
「寒いよな。屋台でホットレモネードでも買って飲む?」
「え、何それ美味しそう!屋台?行ってみたい!」
俺の提案に、テンションが上がった様子で応えたエドワードは、ふと、手の中の虫かごに目を落とした。
「あー‥‥。僕虫触ったよ‥‥。虫触った手だとちょっと‥‥。」
「いや、もちろん手は洗うでしょ。」
ふふふと、ジョセフィンが笑った。
「公園脇にある教会の井戸を使わせてもらえるよ。」
「そ、そうなんだ。よかった。」
「水、めちゃくちゃ冷たいけどね。」
「えー?」
教会で少し大きめの桶をかりて、桶の中の井戸水を魔法で温めた。
柄杓で各自手を洗ってから、三人で一斉に両手を桶につっこんだ。
「あったかい!気持ちいい!」
エドワードの声が響いたのか教会で働いている人達が、興味深げにこちらを見た。
暫くの間手を温めて、桶を片付けようとしたら、そのままでいいからお湯を洗い物用に使わせて欲しいと言われて、お湯の入った桶をそのまま渡した。
桶と井戸を貸して貰ったお礼に、他の人が持っていた桶の水もお湯に変えた。
魔法を何度も使ったせいか、途中で貴族だと、気がつかれて恐縮されてしまった。
「ねぇねぇジョスジョス。」
「なんです?急に変な呼び方やめてください。」
「もうすぐ冬だろ。エドワードの召還練習用の魔黄金虫って、集められると思う?」
「‥‥うーん‥‥。寒いからこそ魔力溜まりに集まってるかもしれないですよ?」
そう言いながらもジョセフィンは難しそうな顔をした。
「どうかな。まあ、本格的に冬になる前に行ってみないとな。」
「エドワードも誘ったら喜ぶんじゃないですかね。」
「ああ、それはいいかも。」
晩秋の虫採り計画が決まった。
放課後、日が沈みかけている中、古代の神殿の柱が建ち並ぶ公園を歩く。
もっこもこに着込んだエドワードが、興味深げに、辺りを見回しながらついてくる。
「へぇ。王都にこんなところがあるんだね。この辺に魔力溜まりがあるの?」
「柱の近くにはないよ。もう少し外れたところ。」
そういって俺は、柱が並ぶ道を抜けた先の、細い木がいくつか生えている辺りを指差した。
枯れた色の草が風に揺れている中、丸太が転がっている。
「この丸太付近を調べるんだよ。はい、虫籠持って。手袋もしたほうがいいよ。」
虫かごと布手袋を手渡す。手袋は、虫に触るのを躊躇して、取り逃がしたりするのを避けるためだ。
丸太は、俺達が以前運んで来手置いておいたものだ。
何回か魔黄金虫を採取していたんだけど、木や丸太に魔蜂の蜂蜜を塗っておいたりすると、魔黄金虫が集まりやすくなるんだ。
ここにくるのは久しぶりだから、蜂蜜はまだ塗っていないけど、今日、魔黄金虫が見つからなかったら、
蜂蜜を塗っておいて後日また来る予定だ。
「見つかったらすぐ虫かごにいれなよ。」
「こんな寒い時期に見つかるかな。」
「魔黄金虫は、一応魔獣で魔力があるからか、普通の虫よりずっと長生きなんだよ。冬を越すならどこかに身を潜めているはずだろ。」
そういって、そおっと丸太を動かしてみると、艶のある丸い姿が見えた。
「いた!」
「え、本当?」
「一匹だけ。」
ささっと虫かごに放り込むと、エドワードがうらやましそうに覗き込んだ。
「丸太の陰とか見てごらんよ。」
「うん!やってみる!」
丸太をひっくり返してみたり、小枝を拾ってそれで、土をほじってみたり、慣れない作業なのか、その都度叫び声のような声をあげながらも
エドワードは結構楽しそうに魔黄金虫を採取できた。
5匹程捕まえた頃には、日がすっかり沈んで辺りが暗くなってしまったので、虫獲りイベントは終了した。
「5匹か。練習にはちょうどいいかもね。念のため、集まってくるように木に魔蜂の蜂蜜は塗っておくけど。」
「ありがとう!練習楽しみ!」
エドワードは、虫かごを抱えて、嬉しそうに笑った。マフラーで首の周りをグルグルに巻いているけど、鼻の頭だけちょっと赤くなってる。
「寒いよな。屋台でホットレモネードでも買って飲む?」
「え、何それ美味しそう!屋台?行ってみたい!」
俺の提案に、テンションが上がった様子で応えたエドワードは、ふと、手の中の虫かごに目を落とした。
「あー‥‥。僕虫触ったよ‥‥。虫触った手だとちょっと‥‥。」
「いや、もちろん手は洗うでしょ。」
ふふふと、ジョセフィンが笑った。
「公園脇にある教会の井戸を使わせてもらえるよ。」
「そ、そうなんだ。よかった。」
「水、めちゃくちゃ冷たいけどね。」
「えー?」
教会で少し大きめの桶をかりて、桶の中の井戸水を魔法で温めた。
柄杓で各自手を洗ってから、三人で一斉に両手を桶につっこんだ。
「あったかい!気持ちいい!」
エドワードの声が響いたのか教会で働いている人達が、興味深げにこちらを見た。
暫くの間手を温めて、桶を片付けようとしたら、そのままでいいからお湯を洗い物用に使わせて欲しいと言われて、お湯の入った桶をそのまま渡した。
桶と井戸を貸して貰ったお礼に、他の人が持っていた桶の水もお湯に変えた。
魔法を何度も使ったせいか、途中で貴族だと、気がつかれて恐縮されてしまった。
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