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第3章
第71話 猫の目魔石
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そして、第五階層。
「アイシクルランス!アイシクルランス!アイシクルランス!」
初っ端からクラーラ嬢のオーバーキル三連発で探索が始まった。
「クラーラ、落ち着いて。」
イリーとカサンドラがクラーラ嬢の背中をポンと叩いた。
「ご、ごめんなさい。怖くて。」
「牙獅子大きいけど、動きは速くないらしいわよ。仕留め損ねてもフォローするから、焦らないで。」
「ええ‥‥。」
クラーラ嬢が頷いて、新たにでて来た牙獅子に目を向けた。
「アイシクルランス!」
今度は氷の槍一つ。牙獅子の前足の付け根に刺さった。すかさず、イリーが矢で追撃し、牙獅子がふたついたところで、カサンドラが進みでて、
剣で突き刺した。光の粒が広がった後、コンという硬質な音が響く。
「あ!」
足下に転がった魔石をカサンドラが拾い上げた。拳より少し小さいくらいの大きさで、今までの魔石よりずっと大きい。
「え、もしかして猫の目?」
イリーが駆け寄り、クラーラ嬢もびっくりした顔をしながら、カサンドラの方に歩いて行った。
ドロップした魔石をカサンドラから両手で受け取ったクラーラ嬢がヴィルヘルムさんを振り返る。
「お兄様。これは、猫の目魔石でしょうか?」
ヴィルヘルムさんが持っていた剣を一度鞘に戻して、魔石を受け取る。ころりと掌で転がした後、ナイフを出して、そっと表面を軽く削った。
「ああ、猫の目魔石だ。綺麗な青い色だね。」
「ああ、良かった。」
ぱあっと笑顔を浮かべたクラーラ嬢の手に、ヴィルヘルムさんが猫の目魔石を戻した。
「これは、エルマー君の瞳の色に近いんじゃないか?」
「え?」
ビックリした顔をして掌の中の魔石を覗き込むクラーラ嬢。ヴィルヘルムさんは俺達を見回してすまなそうに言った。
「すまん。なるべく全員分ドロップできるよう努力するから、そうしたらこの魔石はクラーラに譲ってやってくれないか?」
「え、でも、ヴィルヘルムさんのご子息の誕生祝いは‥‥?」
「息子は俺と同じ灰色の瞳なんで、できれば灰色のが欲しい。まあ、それでも俺だけ魔石を貰うわけにはいかないから、全員の数分集めたい。」
そもそも皆ヴィルヘルムさんのご子息のお祝いに協力するつもりで着いて来ただけなので、ヴィルヘルムさんがそういうならそれでいいと思うけど、
少し気になる事があったので聞いてみた。
「俺はそれでいいとおもいますけど、あの‥‥エルマーさんというのは?」
「クラーラの婚約者だよ。」
「ええ?」
全員がクラーラ嬢の方を振り向いた。クラーラ嬢が頬を赤く染めて俯き恥ずかしそうにしている。
「お兄様‥‥。でも‥‥あの、私が猫の目魔石をいただくなんて他の皆様に申し訳ないですわ。」
「だから、全員分集めればいいだろう。」
「レアドロップですよ。集まらないかも‥‥。」
「それはその時考えればいいだろう。皆、それでいいだろうか?集まらない場合は、埋め合わせを考える。どうかな。」
全員賛成したので、そこから、猫の目魔石集めが始まった。
大体30頭倒して一つ位の割合で、猫の目魔石がドロップした。確率は高いのか低いのか分からないけど、8人全員で、魔獣を倒して行くと、4時間くらいで合計12個の猫の目魔石が集まった。
第五階層の安全地帯で、集まった魔石を確認する。
第五階層の安全地帯はかなり狭かったが、軽い休憩をするくらいは問題なかった。
魔石を少しだけ削って、ヴィルヘルムさんに色を選んでもらう。茶色の物が一番多いが、赤、翠、青、紫などもある。そして最後から2番目に確認した魔石が
灰色だったようだ。
ヴィルヘルムさんの口角が上がった。
「これがいい、これを貰っていいかな。」
「勿論です。じゃあ、残ったものを、皆で分けようか。一人一つ選んで、余った物は売って、売ったお金を皆で分けるのはどうかな。」
提案すると、皆が頷いた。ヴィルヘルムさんは、手を軽く上げる。
「余った魔石の買い取り金は、君たちで分配してくれ。俺はこれだけで充分だから。」
「え、でも‥‥。」
「優先的に選ばせてもらったんだ。そうだ、ここまでの通常ドロップの魔石も皆で分けてくれ。」
「ええ~?」
俺達だってダンジョン探索の指導をしてもらったし、そんなには貰えないと、魔石の入った革袋を、ヴィルヘルムさんの方に押し戻した。
結局、各自が選んだ後に残った猫の目魔石の売却金だけ俺達で分配することにして、通常ドロップの魔石は山分けすることになった。
お茶やスープ、結界石の準備をしたってことで、俺とジョセフィンだけ少し多めに魔石を分けてもらった。
そうして大きな怪我などもなく、無事に猫ダンジョンの探索を終えることができた。
「アイシクルランス!アイシクルランス!アイシクルランス!」
初っ端からクラーラ嬢のオーバーキル三連発で探索が始まった。
「クラーラ、落ち着いて。」
イリーとカサンドラがクラーラ嬢の背中をポンと叩いた。
「ご、ごめんなさい。怖くて。」
「牙獅子大きいけど、動きは速くないらしいわよ。仕留め損ねてもフォローするから、焦らないで。」
「ええ‥‥。」
クラーラ嬢が頷いて、新たにでて来た牙獅子に目を向けた。
「アイシクルランス!」
今度は氷の槍一つ。牙獅子の前足の付け根に刺さった。すかさず、イリーが矢で追撃し、牙獅子がふたついたところで、カサンドラが進みでて、
剣で突き刺した。光の粒が広がった後、コンという硬質な音が響く。
「あ!」
足下に転がった魔石をカサンドラが拾い上げた。拳より少し小さいくらいの大きさで、今までの魔石よりずっと大きい。
「え、もしかして猫の目?」
イリーが駆け寄り、クラーラ嬢もびっくりした顔をしながら、カサンドラの方に歩いて行った。
ドロップした魔石をカサンドラから両手で受け取ったクラーラ嬢がヴィルヘルムさんを振り返る。
「お兄様。これは、猫の目魔石でしょうか?」
ヴィルヘルムさんが持っていた剣を一度鞘に戻して、魔石を受け取る。ころりと掌で転がした後、ナイフを出して、そっと表面を軽く削った。
「ああ、猫の目魔石だ。綺麗な青い色だね。」
「ああ、良かった。」
ぱあっと笑顔を浮かべたクラーラ嬢の手に、ヴィルヘルムさんが猫の目魔石を戻した。
「これは、エルマー君の瞳の色に近いんじゃないか?」
「え?」
ビックリした顔をして掌の中の魔石を覗き込むクラーラ嬢。ヴィルヘルムさんは俺達を見回してすまなそうに言った。
「すまん。なるべく全員分ドロップできるよう努力するから、そうしたらこの魔石はクラーラに譲ってやってくれないか?」
「え、でも、ヴィルヘルムさんのご子息の誕生祝いは‥‥?」
「息子は俺と同じ灰色の瞳なんで、できれば灰色のが欲しい。まあ、それでも俺だけ魔石を貰うわけにはいかないから、全員の数分集めたい。」
そもそも皆ヴィルヘルムさんのご子息のお祝いに協力するつもりで着いて来ただけなので、ヴィルヘルムさんがそういうならそれでいいと思うけど、
少し気になる事があったので聞いてみた。
「俺はそれでいいとおもいますけど、あの‥‥エルマーさんというのは?」
「クラーラの婚約者だよ。」
「ええ?」
全員がクラーラ嬢の方を振り向いた。クラーラ嬢が頬を赤く染めて俯き恥ずかしそうにしている。
「お兄様‥‥。でも‥‥あの、私が猫の目魔石をいただくなんて他の皆様に申し訳ないですわ。」
「だから、全員分集めればいいだろう。」
「レアドロップですよ。集まらないかも‥‥。」
「それはその時考えればいいだろう。皆、それでいいだろうか?集まらない場合は、埋め合わせを考える。どうかな。」
全員賛成したので、そこから、猫の目魔石集めが始まった。
大体30頭倒して一つ位の割合で、猫の目魔石がドロップした。確率は高いのか低いのか分からないけど、8人全員で、魔獣を倒して行くと、4時間くらいで合計12個の猫の目魔石が集まった。
第五階層の安全地帯で、集まった魔石を確認する。
第五階層の安全地帯はかなり狭かったが、軽い休憩をするくらいは問題なかった。
魔石を少しだけ削って、ヴィルヘルムさんに色を選んでもらう。茶色の物が一番多いが、赤、翠、青、紫などもある。そして最後から2番目に確認した魔石が
灰色だったようだ。
ヴィルヘルムさんの口角が上がった。
「これがいい、これを貰っていいかな。」
「勿論です。じゃあ、残ったものを、皆で分けようか。一人一つ選んで、余った物は売って、売ったお金を皆で分けるのはどうかな。」
提案すると、皆が頷いた。ヴィルヘルムさんは、手を軽く上げる。
「余った魔石の買い取り金は、君たちで分配してくれ。俺はこれだけで充分だから。」
「え、でも‥‥。」
「優先的に選ばせてもらったんだ。そうだ、ここまでの通常ドロップの魔石も皆で分けてくれ。」
「ええ~?」
俺達だってダンジョン探索の指導をしてもらったし、そんなには貰えないと、魔石の入った革袋を、ヴィルヘルムさんの方に押し戻した。
結局、各自が選んだ後に残った猫の目魔石の売却金だけ俺達で分配することにして、通常ドロップの魔石は山分けすることになった。
お茶やスープ、結界石の準備をしたってことで、俺とジョセフィンだけ少し多めに魔石を分けてもらった。
そうして大きな怪我などもなく、無事に猫ダンジョンの探索を終えることができた。
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