70 / 324
第3章
第69話 ザシュザシュ
しおりを挟む
頭に一本角が生えた黒豹が姿を現した。
カサンドラが弓を構える。
「私が足を狙って、弱らそう。」
そういってすぐ弓を引いて、角黒豹の左前足を矢で射抜いた。
「ギャオ!」
クラーラ嬢達に向かって来ていた角黒豹は足に矢が刺さって、よろけて、うなり声を上げたが、すぐにまた、三人に向かって行く。
しかし、動きは鈍くなっている。
「もう一つ!」
イリーが角黒豹の右前足を射抜く。
角黒豹の動きが止まった。
「今よ!クラーラ!」
イリーが声をかけると、クラーラ嬢がショートソードを引き抜いて、角黒豹に斬り掛かった。
ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!
魔法の時と違って、剣を振る動きはちょっとぎこちない。斬り口が浅く、すぐに止めを刺せずに何度も斬り掛かっている。
ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!
「ちょ!クラーラ!」
ザシュ!ザシュ!キィーン!
光の粒になりかけても斬りつけているクラーラ嬢にイリーが声をかけたが、クラーラ嬢は、光の粒が消えるまで剣を振り続けた。
最後に、粉々になった魔石が転がった。
ドロップした魔石まで斬ってしまったようだ。
「‥‥クラーラ、オーバーキルが過ぎる‥‥。」
「わ、わたくし、仕留めきれていないか不安で‥‥。」
イリーに言われてしゅんと項垂れるクラーラ嬢。カサンドラがポンポンと背中を叩いた。
クラーラ嬢は、じっとしているときはおしとやかな令嬢の雰囲気なんだけど、魔獣に斬り掛かっているときは、かなり迫力があった。
多分皆気がついているけど、そこには誰も触れない。
クラーラ嬢はそれから何回か剣で戦ってみたけど、どうしても過剰に斬りつけてしまうようだ。
少ししたら息が上がってしまって、安全地帯を探して休憩することになった。
ヘンリーも、大分魔獣との戦いに慣れてきたようだったけど疲労が溜まっていたらしくて、安全地帯に到着したら、ごろんと横になってしまった。
「はぁ~、ここまで猫の目魔石一個もなしかぁ~」
一度起き上がって、肩掛け鞄から外套を引っ張りだしてきて畳んで枕代わりにしてもう一度横になるヘンリー。
ジョセフィンはすぐ湯を沸かし始めた。
結界石に興味があるらしいアレクシスとフェリクスは、入り口に結界を張る作業を手伝ってくれる。
第三階層の安全地帯は入り口が広いので、念のため結界石と、魔獣避けの香を焚く。
ジョセフィンが湯を沸かしているところから、フェリクスが火を分けてもらってきて、香炉に入った魔獣避けの香に火を移した。
「手際がいいな。」
ヴィルヘルムさんは、火を湧かしているジョセフィンや、結界を張っている俺達を眺めて言った。どかっと敷物なしに壁際に座り込み、剣の状態確認を始めた。
ダンジョンでは、倒した魔獣は血も残らないので、剣が血まみれになることはないのだが、切れ味は鈍くなるらしい。それに刃が欠けていないかの確認も必要だ。
カサンドラは、敷物を敷いたところに、クラーラを座らせる。イリーは、カップに水を注いでクラーラに差し出した。
無事に結界と魔獣避けの香の設置ができたので、ジョセフィンの傍まで行って、鞄から包みを取り出した。
ドライフルーツとナッツを固めた菓子だ。魔蜂の蜂蜜入り。魔蜂の蜂蜜は魔力と体力の回復に効くと言われていてポーションの材料にもなるものだ。
ジョセフィンが木皿を差し出してくれたので、人数分の個数を並べた。
湯の沸く音がしてきたら、イリーがカップを集め始めた。
集まったカップにジョセフィンがお茶を注ぐと、各自でカップを受け取りに行き、菓子も一つずつ持って行く。
「ああ、お茶が美味しいです。ほっとします。」
お茶を一口飲みクラーラ嬢が微笑んだ。それからドライフルーツの菓子を一口食べてにっこりする。
「お菓子も美味しい!」
「それはよかった。」
ジョセフィンがニコリと笑った。
俺もお茶を飲んで一息ついた。器具とか手順とか普段よりずっと省略しているのに、ジョセフィンが煎れたお茶は美味しいんだよな。
カサンドラが弓を構える。
「私が足を狙って、弱らそう。」
そういってすぐ弓を引いて、角黒豹の左前足を矢で射抜いた。
「ギャオ!」
クラーラ嬢達に向かって来ていた角黒豹は足に矢が刺さって、よろけて、うなり声を上げたが、すぐにまた、三人に向かって行く。
しかし、動きは鈍くなっている。
「もう一つ!」
イリーが角黒豹の右前足を射抜く。
角黒豹の動きが止まった。
「今よ!クラーラ!」
イリーが声をかけると、クラーラ嬢がショートソードを引き抜いて、角黒豹に斬り掛かった。
ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!
魔法の時と違って、剣を振る動きはちょっとぎこちない。斬り口が浅く、すぐに止めを刺せずに何度も斬り掛かっている。
ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!ザシュ!
「ちょ!クラーラ!」
ザシュ!ザシュ!キィーン!
光の粒になりかけても斬りつけているクラーラ嬢にイリーが声をかけたが、クラーラ嬢は、光の粒が消えるまで剣を振り続けた。
最後に、粉々になった魔石が転がった。
ドロップした魔石まで斬ってしまったようだ。
「‥‥クラーラ、オーバーキルが過ぎる‥‥。」
「わ、わたくし、仕留めきれていないか不安で‥‥。」
イリーに言われてしゅんと項垂れるクラーラ嬢。カサンドラがポンポンと背中を叩いた。
クラーラ嬢は、じっとしているときはおしとやかな令嬢の雰囲気なんだけど、魔獣に斬り掛かっているときは、かなり迫力があった。
多分皆気がついているけど、そこには誰も触れない。
クラーラ嬢はそれから何回か剣で戦ってみたけど、どうしても過剰に斬りつけてしまうようだ。
少ししたら息が上がってしまって、安全地帯を探して休憩することになった。
ヘンリーも、大分魔獣との戦いに慣れてきたようだったけど疲労が溜まっていたらしくて、安全地帯に到着したら、ごろんと横になってしまった。
「はぁ~、ここまで猫の目魔石一個もなしかぁ~」
一度起き上がって、肩掛け鞄から外套を引っ張りだしてきて畳んで枕代わりにしてもう一度横になるヘンリー。
ジョセフィンはすぐ湯を沸かし始めた。
結界石に興味があるらしいアレクシスとフェリクスは、入り口に結界を張る作業を手伝ってくれる。
第三階層の安全地帯は入り口が広いので、念のため結界石と、魔獣避けの香を焚く。
ジョセフィンが湯を沸かしているところから、フェリクスが火を分けてもらってきて、香炉に入った魔獣避けの香に火を移した。
「手際がいいな。」
ヴィルヘルムさんは、火を湧かしているジョセフィンや、結界を張っている俺達を眺めて言った。どかっと敷物なしに壁際に座り込み、剣の状態確認を始めた。
ダンジョンでは、倒した魔獣は血も残らないので、剣が血まみれになることはないのだが、切れ味は鈍くなるらしい。それに刃が欠けていないかの確認も必要だ。
カサンドラは、敷物を敷いたところに、クラーラを座らせる。イリーは、カップに水を注いでクラーラに差し出した。
無事に結界と魔獣避けの香の設置ができたので、ジョセフィンの傍まで行って、鞄から包みを取り出した。
ドライフルーツとナッツを固めた菓子だ。魔蜂の蜂蜜入り。魔蜂の蜂蜜は魔力と体力の回復に効くと言われていてポーションの材料にもなるものだ。
ジョセフィンが木皿を差し出してくれたので、人数分の個数を並べた。
湯の沸く音がしてきたら、イリーがカップを集め始めた。
集まったカップにジョセフィンがお茶を注ぐと、各自でカップを受け取りに行き、菓子も一つずつ持って行く。
「ああ、お茶が美味しいです。ほっとします。」
お茶を一口飲みクラーラ嬢が微笑んだ。それからドライフルーツの菓子を一口食べてにっこりする。
「お菓子も美味しい!」
「それはよかった。」
ジョセフィンがニコリと笑った。
俺もお茶を飲んで一息ついた。器具とか手順とか普段よりずっと省略しているのに、ジョセフィンが煎れたお茶は美味しいんだよな。
0
お気に入りに追加
93
あなたにおすすめの小説
前回は断頭台で首を落とされましたが、今回はお父様と協力して貴方達を断頭台に招待します。
夢見 歩
ファンタジー
長年、義母と義弟に虐げられた末に無実の罪で断頭台に立たされたステラ。
陛下は父親に「同じ子を持つ親としての最後の温情だ」と断頭台の刃を落とす合図を出すように命令を下した。
「お父様!助けてください!
私は決してネヴィルの名に恥じるような事はしておりません!
お父様ッ!!!!!」
ステラが断頭台の上でいくら泣き叫び、手を必死で伸ばしながら助けを求めても父親がステラを見ることは無かった。
ステラは断頭台の窪みに首を押さえつけられ、ステラの父親の上げた手が勢いよく振り下ろされると同時に頭上から鋭い刃によって首がはねられた。
しかし死んだはずのステラが目を開けると十歳まで時間が巻き戻っていて…?
娘と父親による人生のやり直しという名の復讐劇が今ここに始まる。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
全力で執筆中です!お気に入り登録して頂けるとやる気に繋がりますのでぜひよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
愛されなかった私が転生して公爵家のお父様に愛されました
上野佐栁
ファンタジー
前世では、愛されることなく死を迎える主人公。実の父親、皇帝陛下を殺害未遂の濡れ衣を着せられ死んでしまう。死を迎え、これで人生が終わりかと思ったら公爵家に転生をしてしまった主人公。前世で愛を知らずに育ったために人を信頼する事が出来なくなってしまい。しばらくは距離を置くが、だんだんと愛を受け入れるお話。
あ、出ていって差し上げましょうか?許可してくださるなら喜んで出ていきますわ!
リーゼロッタ
ファンタジー
生まれてすぐ、国からの命令で神殿へ取られ十二年間。
聖女として真面目に働いてきたけれど、ある日婚約者でありこの国の王子は爆弾発言をする。
「お前は本当の聖女ではなかった!笑わないお前など、聖女足り得ない!本来の聖女は、このマルセリナだ。」
裏方の聖女としてそこから三年間働いたけれど、また王子はこう言う。
「この度の大火、それから天変地異は、お前がマルセリナの祈りを邪魔したせいだ!出ていけ!二度と帰ってくるな!」
あ、そうですか?許可が降りましたわ!やった!
、、、ただし責任は取っていただきますわよ?
◆◇◆◇◆◇
誤字・脱字等のご指摘・感想・お気に入り・しおり等をくださると、作者が喜びます。
100話以内で終わらせる予定ですが、分かりません。あくまで予定です。
更新は、夕方から夜、もしくは朝七時ごろが多いと思います。割と忙しいので。
また、更新は亀ではなくカタツムリレベルのトロさですので、ご承知おきください。
更新停止なども長期の期間に渡ってあることもありますが、お許しください。
断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。
みちこ
ファンタジー
両親が亡くなり、家の存続と弟を立派に育てることを決意するけど、ストレスとプレッシャーが原因で高熱が出たことが切っ掛けで、自分が前世で好きだった小説の悪役令嬢に転生したと気が付くけど、小説とは色々と違うことに混乱する。
主人公は断罪から逃れることは出来るのか?
恋より友情!〜婚約者に話しかけるなと言われました〜
k
恋愛
「学園内では、俺に話しかけないで欲しい」
そう婚約者のグレイに言われたエミリア。
はじめは怒り悲しむが、だんだんどうでもよくなってしまったエミリア。
「恋より友情よね!」
そうエミリアが前を向き歩き出した頃、グレイは………。
本編完結です!その後のふたりの話を番外編として書き直してますのでしばらくお待ちください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる