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第2章
第55話 悩める次男坊
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「慰謝料? あ、ちょっと待ってね。」
混み入った話になってきたので、周囲に消音魔法を展開した。
エドワードは魔力の揺れに気がついたのか、周囲を見回した。
「消音魔法。口の動きも分からないように、ちょっと周囲から見えにくくなってる。」
「‥‥騎士科ってそんな事も出来るんだ。」
騎士科で習うことでは、ないけど、曖昧に微笑んでおく。
「ちょっと思った事なんだけどさ。怒らないで聞いてくれる?」
消音魔法が無事展開されたのを確認してから、俺は、エドワードに聞いてみた。
「何?」
「慰謝料請求されたら、結構辛い状況? アインホルン侯爵家‥‥。」
「!」
エドワードが顔を上げて、眉を吊り上げた。唇がわなわなと震えている。
「ど、どうして‥‥。」
「慰謝料の事気にしてたし‥‥。それと、従者のことも‥‥。」
かあっと、エドワードの顔に血が上った。何か言いかけて口を開こうとしたところを、続けて話す。
「従者ってさ、いなくても気にしない人もいるじゃない? 君は、気にしているみたいだったから。本当は従者をつけたかったけど、費用的に付けられなかったのかと思った。
慰謝料が発生した場合、君の授業料に影響する事を心配しているんじゃないかと思ったんだ。
見当違いだったら、凄く失礼な事を言っていると思う。ごめん。」
事前にちょっとアインホルン侯爵家のことも調べてあった。昨年、魔獣の被害と寒波で農作物の収穫がかなり落ちている。国に被害の為の税の支払い猶予申請をしていた。
今年も、再び魔獣の被害が出ているようだ。
侯爵領は広いし、すぐに壊滅的にはならないだろうけど、費用に関して、エドワードが神経質に成る程には、良くない状況なんだろう。
兄の方には、従者が着いている。
そういえば、商会でニーナにネックレスを買ったりしてたんだよな。ちょっとどうなんだ、それ。
エドワードはいつの間にか涙目になっていた。
ちょっと周囲の目から隠すため、消音の壁を曇らせた。
「ぼ、僕は跡取りではないから‥‥。兄のことが原因で慰謝料が発生したとしても。その結果、授業料が払えなくなったとしたら、
僕の分が減らされると思うんだ‥‥。兄は、後半年で卒業だし。卒業した方がいいに決まっているし。
僕‥‥学園にいられなくなったら‥‥。将来どうしたらいいかわからないし‥‥。」
エドワードは、段々しゃくり上げて、涙声になっている。
「‥‥誰にも相談できなくて‥‥。」
「エドワード‥‥。」
俺がハンカチを出そうとしたら、さっとジョセフィンがハンカチを差し出した。素早い。エドワードはハンカチを受け取って目に押し当てた。
ジョセフィンは、ピッチャーからグラスに水を注いで、エドワードに差し出した。
「水飲むと少し落ち着くよ。」
そう言うと、エドワードは、コクンと素直に頷いて、グラスを手に取った。
「エドワード、まずは、授業料の件は、先生に相談してみるといいよ。災害で領の収益に影響が出る家って、結構あるからね。」
俺がそういうとエドワードはハンカチの陰から俺を見た。
「やべなぐですみゅ?」
鼻をぐずぐずさせながら言う。
俺は頷いた。奨学金制度もあるので、大丈夫なはず。
「先生に相談しな。成績よくないとダメとか言われるかもしれないけど。」
「‥‥ぞうだんずる。」
ちーんとハンカチで鼻をかんだエドワード。ジョセフィンの眉がちょっと歪んだ。ハンカチはあきらめろ。
エドワードが少し落ち着いたみたいなので、食事を食べるように促す。早く食べておかないと昼休みが終わってしまう。
食べながら続きの話をする。壁にかかった時計をちらりと見やった。
「一番心配だったのは、それだったのかな。
お兄さんの様子がおかしいって言う件もあるから、単純な話ではないけど。」
「兄上の事も‥心配だよ。僕が言っても聞いてくれないし。」
「わかった。ちょっと考えてみるから。君は、危険な事はするなよ。よくわからない紫のフードの男を追いかけるとか。」
「あれは!」
「何か事件にでもなったら、そっちの方が学園にいられなくなるかもしれないだろ。」
「‥‥うん。」
食事が終わる頃には、エドワードの表情も柔らかくなって来た。
放課後にもう一度話しをすると約束して別れた。
混み入った話になってきたので、周囲に消音魔法を展開した。
エドワードは魔力の揺れに気がついたのか、周囲を見回した。
「消音魔法。口の動きも分からないように、ちょっと周囲から見えにくくなってる。」
「‥‥騎士科ってそんな事も出来るんだ。」
騎士科で習うことでは、ないけど、曖昧に微笑んでおく。
「ちょっと思った事なんだけどさ。怒らないで聞いてくれる?」
消音魔法が無事展開されたのを確認してから、俺は、エドワードに聞いてみた。
「何?」
「慰謝料請求されたら、結構辛い状況? アインホルン侯爵家‥‥。」
「!」
エドワードが顔を上げて、眉を吊り上げた。唇がわなわなと震えている。
「ど、どうして‥‥。」
「慰謝料の事気にしてたし‥‥。それと、従者のことも‥‥。」
かあっと、エドワードの顔に血が上った。何か言いかけて口を開こうとしたところを、続けて話す。
「従者ってさ、いなくても気にしない人もいるじゃない? 君は、気にしているみたいだったから。本当は従者をつけたかったけど、費用的に付けられなかったのかと思った。
慰謝料が発生した場合、君の授業料に影響する事を心配しているんじゃないかと思ったんだ。
見当違いだったら、凄く失礼な事を言っていると思う。ごめん。」
事前にちょっとアインホルン侯爵家のことも調べてあった。昨年、魔獣の被害と寒波で農作物の収穫がかなり落ちている。国に被害の為の税の支払い猶予申請をしていた。
今年も、再び魔獣の被害が出ているようだ。
侯爵領は広いし、すぐに壊滅的にはならないだろうけど、費用に関して、エドワードが神経質に成る程には、良くない状況なんだろう。
兄の方には、従者が着いている。
そういえば、商会でニーナにネックレスを買ったりしてたんだよな。ちょっとどうなんだ、それ。
エドワードはいつの間にか涙目になっていた。
ちょっと周囲の目から隠すため、消音の壁を曇らせた。
「ぼ、僕は跡取りではないから‥‥。兄のことが原因で慰謝料が発生したとしても。その結果、授業料が払えなくなったとしたら、
僕の分が減らされると思うんだ‥‥。兄は、後半年で卒業だし。卒業した方がいいに決まっているし。
僕‥‥学園にいられなくなったら‥‥。将来どうしたらいいかわからないし‥‥。」
エドワードは、段々しゃくり上げて、涙声になっている。
「‥‥誰にも相談できなくて‥‥。」
「エドワード‥‥。」
俺がハンカチを出そうとしたら、さっとジョセフィンがハンカチを差し出した。素早い。エドワードはハンカチを受け取って目に押し当てた。
ジョセフィンは、ピッチャーからグラスに水を注いで、エドワードに差し出した。
「水飲むと少し落ち着くよ。」
そう言うと、エドワードは、コクンと素直に頷いて、グラスを手に取った。
「エドワード、まずは、授業料の件は、先生に相談してみるといいよ。災害で領の収益に影響が出る家って、結構あるからね。」
俺がそういうとエドワードはハンカチの陰から俺を見た。
「やべなぐですみゅ?」
鼻をぐずぐずさせながら言う。
俺は頷いた。奨学金制度もあるので、大丈夫なはず。
「先生に相談しな。成績よくないとダメとか言われるかもしれないけど。」
「‥‥ぞうだんずる。」
ちーんとハンカチで鼻をかんだエドワード。ジョセフィンの眉がちょっと歪んだ。ハンカチはあきらめろ。
エドワードが少し落ち着いたみたいなので、食事を食べるように促す。早く食べておかないと昼休みが終わってしまう。
食べながら続きの話をする。壁にかかった時計をちらりと見やった。
「一番心配だったのは、それだったのかな。
お兄さんの様子がおかしいって言う件もあるから、単純な話ではないけど。」
「兄上の事も‥心配だよ。僕が言っても聞いてくれないし。」
「わかった。ちょっと考えてみるから。君は、危険な事はするなよ。よくわからない紫のフードの男を追いかけるとか。」
「あれは!」
「何か事件にでもなったら、そっちの方が学園にいられなくなるかもしれないだろ。」
「‥‥うん。」
食事が終わる頃には、エドワードの表情も柔らかくなって来た。
放課後にもう一度話しをすると約束して別れた。
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