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第2章

第53話 相談事

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ジョセフィンの父、ルドルフの話だと、ファシスの媚石を使われると、一時的に催淫作用が働いているときに、恋愛感情と思い込む。それを繰り返されるうちに、媚石なしでも、効果が持続しているような状況になっている可能性があるということだった。

媚石の効果が切れても、気持ちが思い込んでいる状態だから、解毒剤のようなものは通用しない。
それって、かなり危険なものじゃないの?
もっとちゃんと規制して欲しいよ。


朝になったら、父から返事が来ていた。
規制を強化するように動くと書いてあった。
アインホルン侯爵にも手紙を書いてくれるという。
それと、バーデン男爵家について調査をしてくれるそうだ。

早朝の訓練室で、トリー殿下と、召還の練習をする。
トリー殿下は、魔黄金虫の召還時に使用する魔力量が安定して来て、ほぼ失敗なく召還と送還ができるようになった。

「マーカス見てみて、イチコガネとニコガネ、同時に召還できたよ!」

手に、魔黄金虫を乗せてニコニコしているトリー殿下。

あー、癒される。
頭なでなでしたくなるよ!

「トリー殿下、次、魔蜂を獲ってくるね。魔ネズミと魔鳥はもう少し待ってて。」
「うん! ありがとう!」

ぱあぁと、花開くように笑うトリー殿下。
無邪気な笑顔は護りたいと思う。

魔鳥は、王都内でも卵を入手できた。それを、魔力溜まりで孵せば、魔鳥の小鳥が生まれるはず。
魔ネズミは、普通のハツカネズミを魔力溜まりで、飼って、子ネズミが魔ネズミとして生まれないか実験中だ。

俺がテイムしている魔ネズミは、トリー殿下の周囲をうろつかせて、警備させている。
学園内の警備騎士も、父経由で増やしてもらっている。いずれ、トリー殿下の護衛騎士を父が手配した騎士に入れ替える計画だ。

何かね、ちょっと心配なんだよね。


早朝のお茶会を終えた後、風紀委員の先輩達が槍の訓練をしていたので参加させてもらった。

騎士科の別のクラスの1年が何人か訓練に参加していた。風紀委員に勧誘されているようだ。俺達も未だに軽く勧誘はされているけど、しつこくはない。

訓練の後、水浴びをしてから、教室に向かうと、教室の手前に見覚えがある姿があった。

「エドワード? なんでここに?」
「呼び捨てか!」

カッと素早く反応するエドワード。

「ああ、ごめん、心の中でそう呼んでいたから。どうしてここに? アインホルン侯爵令息。」
「エ、エドワードでいい。」
「いいのかい。」

特進科のエドワードが、騎士科の教室の前にいるのは、かなり目立つ。そもそも特進科とは建物も違うのだ。

「で、誰かに用事ですか?」
「君達だ!」
「はぁ?」

仲良くなった覚えは無いんだけど。俺はジョセフィンと顔を見合わせた。

「君達、風紀委員と親しいみたいだったから。何か‥‥。何か‥‥。」

エドワードは落ち着き無さげに口をパクパクと動かした。

予鈴の鐘が鳴る。特進科の教室にはもう向かわないと遅刻だろう。

「授業だろ。行かないの?」
「で、でも‥‥。」

エドワードは何か不安げで、すがるような目で見てくる。何なんだ、一体?

ジョセフィンがすっと前に出た。

「僕達これから授業だから。話なら後にしてくれないですか?‥‥昼休みとか‥‥。」

きっぱり追い返す口調だったけど、エドワードが泣きそうな顔をしたので最後少し妥協したようだ。
俺もちょっと妥協案を出しておこう。

「昼、カフェテリアでどう?」

ぱっと目を見開いたエドワードは、うんうんと頷いた。納得したみたいなので、トンと背中を押して特進科の教室に向かわせた。
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