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第2章
第43話 護衛実習
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昼休みに学園内の図書館に行ったとき、偶然青い髪の男の姿を見かけた。カシュー・ランバードさんだ。
見ていると、向こうもこちらに気がついたようで、話しかけて来た。
読書室なので、小声だ。
「やあ。先日はありがとう。おかげて文官スワンの羽根ペン買えたよ。ペン軸が持ちやすくて気に入ってるよ」
そう行って、カシューさんは手にしていたペンを持ち上げてみせた。
カシューさんが手にしていた羽根ペンは、ペン軸部分が、カシューさんの髪色と同じ青で、グリップ部分にスライムの素材を利用していて、滑りにくく、疲れにくいように工夫してある。
「よかった。ニーナさんも喜ばれましたか?」
ジョセフィンが言うと、カシューさんの表情が微かに曇った。
「うん‥‥喜んでくれたよ‥‥。」
「そう見えないのですけど‥‥。」
「プレゼントしたときはとても喜んでくれたんだ。でも、もしかしたらペン軸タイプじゃない方が良かったのかもしれない‥‥。
使ってくれていないみたいで‥‥。ごめんね。せっかくお店を教えてくれたのに。」
しゅーんと肩を落とすカシューさん。
「そうでしたか。高価な物ですから、学園内で使わないだけかもしれないですよ。」
「うん‥‥。そうだね‥‥。」
ジョセフィンが慰めても、カシューさんはしょんぼりとしたままだった。
それ以上かける言葉が思いつかなかったので、その場を後にした。
教室に戻る途中に、ジョセフィンが物憂げな様子で言った。
「やはり、お店を教えるべきではなかったかもしれません。」
「遅かれ早かれ羽根ペンは買ってただろう。あの店にも素材を卸したし。」
「まあ、そうなんですけどね。」
「俺も、商会で買ったものが喜ばれてないとかって聞くのは、残念だけどね。」
「でしょう?」
窓から差し込む午後の日差しが明るいのに、秋の空色が切なげに感じた。
教室に戻ると、なんだかざわざわしていた。
聞いてみると、課外授業が有るらしい。
特進科や淑女科の人達が街歩きをする護衛実習だそうだ。
昼休みの内に先生が、班決めをした紙が貼っていったようで、その話題で持ち切りだった。
「あ、マーカス、ジョス。一緒の班だよ!3班だって!」
ヘンリーが手を振って来た。傍にイリーが腕組みをしている。
手を振返してから、張り紙を見に行った。
俺とジョセフィンとイリー、ヘンリーと、後、アレクシス、ヴァルターが同じ班だった。
「大丈夫かよ。この班。」
ヴァルターが、班メンバーをみて、片眉を吊り上げた。
「なんだよ、文句あるっていうのか?」
アレクシスが、ずいっと詰め寄る。
「ランゲはともかく、だ。他が頼りねぇだろ。」
ヴァルターに比べると、俺達の身長は頭一つくらい低い。アレクシスはその中間という感じだ。
イリーから魔力がじわじわにじみ出ているのを感じる。あ、キレかけてるな。
「班同士で集まっているか?」
教室に、担任のヴォルフガング・ヴェルデ先生が入って来た。あいかわらず緑髪でひげ面、腕も緑の毛がわさわさしていて、緑の熊みたいだ。
「護衛対象の選別はくじ引きだ。班の誰か、くじを引きにこい。」
ヴォルフガング先生がそういうと、誰が代表としてくじを引きにいくか、という話をヴァルターとアレクシスが中心になって話し出す。
そこに、ささっとくじを引いて戻って来たジョセフィンが、番号札を見せた。
「二番だってー。」
「おい!いつの間に!」
「ジョス、流石!」
ヘンリーが笑う。
くじ引きくらいで争うの無駄だよな。
見ていると、向こうもこちらに気がついたようで、話しかけて来た。
読書室なので、小声だ。
「やあ。先日はありがとう。おかげて文官スワンの羽根ペン買えたよ。ペン軸が持ちやすくて気に入ってるよ」
そう行って、カシューさんは手にしていたペンを持ち上げてみせた。
カシューさんが手にしていた羽根ペンは、ペン軸部分が、カシューさんの髪色と同じ青で、グリップ部分にスライムの素材を利用していて、滑りにくく、疲れにくいように工夫してある。
「よかった。ニーナさんも喜ばれましたか?」
ジョセフィンが言うと、カシューさんの表情が微かに曇った。
「うん‥‥喜んでくれたよ‥‥。」
「そう見えないのですけど‥‥。」
「プレゼントしたときはとても喜んでくれたんだ。でも、もしかしたらペン軸タイプじゃない方が良かったのかもしれない‥‥。
使ってくれていないみたいで‥‥。ごめんね。せっかくお店を教えてくれたのに。」
しゅーんと肩を落とすカシューさん。
「そうでしたか。高価な物ですから、学園内で使わないだけかもしれないですよ。」
「うん‥‥。そうだね‥‥。」
ジョセフィンが慰めても、カシューさんはしょんぼりとしたままだった。
それ以上かける言葉が思いつかなかったので、その場を後にした。
教室に戻る途中に、ジョセフィンが物憂げな様子で言った。
「やはり、お店を教えるべきではなかったかもしれません。」
「遅かれ早かれ羽根ペンは買ってただろう。あの店にも素材を卸したし。」
「まあ、そうなんですけどね。」
「俺も、商会で買ったものが喜ばれてないとかって聞くのは、残念だけどね。」
「でしょう?」
窓から差し込む午後の日差しが明るいのに、秋の空色が切なげに感じた。
教室に戻ると、なんだかざわざわしていた。
聞いてみると、課外授業が有るらしい。
特進科や淑女科の人達が街歩きをする護衛実習だそうだ。
昼休みの内に先生が、班決めをした紙が貼っていったようで、その話題で持ち切りだった。
「あ、マーカス、ジョス。一緒の班だよ!3班だって!」
ヘンリーが手を振って来た。傍にイリーが腕組みをしている。
手を振返してから、張り紙を見に行った。
俺とジョセフィンとイリー、ヘンリーと、後、アレクシス、ヴァルターが同じ班だった。
「大丈夫かよ。この班。」
ヴァルターが、班メンバーをみて、片眉を吊り上げた。
「なんだよ、文句あるっていうのか?」
アレクシスが、ずいっと詰め寄る。
「ランゲはともかく、だ。他が頼りねぇだろ。」
ヴァルターに比べると、俺達の身長は頭一つくらい低い。アレクシスはその中間という感じだ。
イリーから魔力がじわじわにじみ出ているのを感じる。あ、キレかけてるな。
「班同士で集まっているか?」
教室に、担任のヴォルフガング・ヴェルデ先生が入って来た。あいかわらず緑髪でひげ面、腕も緑の毛がわさわさしていて、緑の熊みたいだ。
「護衛対象の選別はくじ引きだ。班の誰か、くじを引きにこい。」
ヴォルフガング先生がそういうと、誰が代表としてくじを引きにいくか、という話をヴァルターとアレクシスが中心になって話し出す。
そこに、ささっとくじを引いて戻って来たジョセフィンが、番号札を見せた。
「二番だってー。」
「おい!いつの間に!」
「ジョス、流石!」
ヘンリーが笑う。
くじ引きくらいで争うの無駄だよな。
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