上 下
43 / 324
第2章

第42話 備える

しおりを挟む
早朝の訓練室。獲ってきた魔黄金虫を見せると、トリー殿下は、凄く嬉しそうで、小さな子供のように興奮していた。

「うわ!手、くすぐったい!」

魔黄金虫を掌に乗せただけで、顔を上気させ、目を輝かせた。
教えた手順通りに、テイミングを試みる。

「はい、魔力美味しいよー。僕と友達になってね。」

自分の言葉で、魔黄金虫に話しかけ、魔力をおっかなびっくり注ぎ、魔力の量をあれこれ加減して、6回目でテイミングが成功した。

ぽわっと全身が白く光る魔黄金虫を見て、頭をバッとあげ、俺とジョセフィンの顔を見た。

「これ、これって‥‥!できたの?テイミングできた?」
「出来てるよ。おめでとう!」
「おめでとうございます。」

頷いてお祝いを言うと、嬉しそうに笑う。

「嬉しい!あ!名前!名前付けないと!えーと、えーと‥‥コガネ‥‥一番目だから‥‥イチコガネ!」
「いい名前だな!」

俺が言うと、ぽっと頬を染めて嬉しそうに笑った。ジョセフィンは、「なんだかセンス似てますね」なんて言っている。

その日はテイミングだけだったがサンコガネまで名付ける事ができた。
トリー殿下は自室でも続きをやりたがったが、魔黄金虫も魔獣の一種なので、テイミングしていない魔黄金虫は持たせられないから、名付けた3匹分だけを虫かごに入れて渡す事にした。
綺麗な布のカバー付き。使用人が掃除に入って来ても、目立たないようにしてある。
定期的に魔力を与え、慣らして思ったところに飛ばせるように練習をしてもらう予定だ。
渡した虫かごを大事そうにかかえて、トリー殿下は自室に戻って行った。

魔黄金虫であんなに喜んでくれるなら、何か役立たせられないかと考える。
何時でも召還ができるようにしておくとか。何か有ったときとかにも、役立つかもしれない。
熟練度がずっと上がれば、魔法陣なしでも、召還できるようになるけど、今は魔法陣が必要だ。
魔法陣を身につけられないかな。

「ジョス、召還の魔法陣、最小サイズにしたらどのくらいの大きさにできるかな。ペンダントか腕輪とか‥‥。」
「‥‥まさか、腕から魔黄金虫を出すってことですか?」
「腕じゃなくてもいいし、魔黄金虫でなくてもいいんだけどさ。何か有った時に召還獣を呼び出せるようにしておければ、安心じゃないか?」

「‥‥今、俺の頭の中では、腕輪から大量の魔黄金虫が出て来て、敵対する何かに襲い掛かるような絵面が‥‥。とても恐ろしいんですが‥‥。」
「ありでしょ。あ、魔蜂って王都で手に入れられないかな。小さいサイズの。」
「一体何に備えてるんですか?」

ジョセフィンは、また俺が何か変なことをやり始めたって、顔をしているけど、ちょっとした事でも身を守る手段になるなら、試してもいいと思うんだよね。
トリー殿下に会ったとき、部屋を抜け出して来たって言っていたけど、正直、二回目に来るときには、誰か心配して一緒に付いてくるかと思ったんだ。
ぴったり同伴してくるか、こっそり後をつけるとか。
でも、今まで何度も早朝にお茶会を開いているけど、いつもちゃんと?一人で抜け出して来ている。

それって、トリー殿下が実は抜け出すのが上手なのかもしれないけど、警備がザルってことだ。
信頼できる者が周囲にいないのかもしれない。
召還獣なら、制御さえできれば、裏切らない。魔黄金虫なんて、全然強くはないけど、何かのときに、助けを呼ぶとかくらいは出来るんじゃないかな。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

前回は断頭台で首を落とされましたが、今回はお父様と協力して貴方達を断頭台に招待します。

夢見 歩
ファンタジー
長年、義母と義弟に虐げられた末に無実の罪で断頭台に立たされたステラ。 陛下は父親に「同じ子を持つ親としての最後の温情だ」と断頭台の刃を落とす合図を出すように命令を下した。 「お父様!助けてください! 私は決してネヴィルの名に恥じるような事はしておりません! お父様ッ!!!!!」 ステラが断頭台の上でいくら泣き叫び、手を必死で伸ばしながら助けを求めても父親がステラを見ることは無かった。 ステラは断頭台の窪みに首を押さえつけられ、ステラの父親の上げた手が勢いよく振り下ろされると同時に頭上から鋭い刃によって首がはねられた。 しかし死んだはずのステラが目を開けると十歳まで時間が巻き戻っていて…? 娘と父親による人生のやり直しという名の復讐劇が今ここに始まる。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 全力で執筆中です!お気に入り登録して頂けるとやる気に繋がりますのでぜひよろしくお願いします( * ॑꒳ ॑*)

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

愛されなかった私が転生して公爵家のお父様に愛されました

上野佐栁
ファンタジー
 前世では、愛されることなく死を迎える主人公。実の父親、皇帝陛下を殺害未遂の濡れ衣を着せられ死んでしまう。死を迎え、これで人生が終わりかと思ったら公爵家に転生をしてしまった主人公。前世で愛を知らずに育ったために人を信頼する事が出来なくなってしまい。しばらくは距離を置くが、だんだんと愛を受け入れるお話。

あ、出ていって差し上げましょうか?許可してくださるなら喜んで出ていきますわ!

リーゼロッタ
ファンタジー
生まれてすぐ、国からの命令で神殿へ取られ十二年間。 聖女として真面目に働いてきたけれど、ある日婚約者でありこの国の王子は爆弾発言をする。 「お前は本当の聖女ではなかった!笑わないお前など、聖女足り得ない!本来の聖女は、このマルセリナだ。」 裏方の聖女としてそこから三年間働いたけれど、また王子はこう言う。 「この度の大火、それから天変地異は、お前がマルセリナの祈りを邪魔したせいだ!出ていけ!二度と帰ってくるな!」 あ、そうですか?許可が降りましたわ!やった! 、、、ただし責任は取っていただきますわよ? ◆◇◆◇◆◇ 誤字・脱字等のご指摘・感想・お気に入り・しおり等をくださると、作者が喜びます。 100話以内で終わらせる予定ですが、分かりません。あくまで予定です。 更新は、夕方から夜、もしくは朝七時ごろが多いと思います。割と忙しいので。 また、更新は亀ではなくカタツムリレベルのトロさですので、ご承知おきください。 更新停止なども長期の期間に渡ってあることもありますが、お許しください。

断罪される1か月前に前世の記憶が蘇りました。

みちこ
ファンタジー
両親が亡くなり、家の存続と弟を立派に育てることを決意するけど、ストレスとプレッシャーが原因で高熱が出たことが切っ掛けで、自分が前世で好きだった小説の悪役令嬢に転生したと気が付くけど、小説とは色々と違うことに混乱する。 主人公は断罪から逃れることは出来るのか?

美しい姉と痩せこけた妹

サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――

恋より友情!〜婚約者に話しかけるなと言われました〜

k
恋愛
「学園内では、俺に話しかけないで欲しい」 そう婚約者のグレイに言われたエミリア。 はじめは怒り悲しむが、だんだんどうでもよくなってしまったエミリア。 「恋より友情よね!」 そうエミリアが前を向き歩き出した頃、グレイは………。 本編完結です!その後のふたりの話を番外編として書き直してますのでしばらくお待ちください。

処理中です...