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第1章
第20話 勧誘
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「てめぇ!!」
ものすごい形相で睨まれたけど、俺、避けただけだよ?
「オスカー!!」
遠くから、槍で刺すような声。
オスカー・グリースの動きも一瞬止まった。食堂の入り口の方から、フリードリヒ先輩がずんずんとこちらに歩いてくる。
「オスカー!また問題を起こしたのか!」
「ち、違う!こいつらが!」
フリードリヒ先輩の叱責に、オスカー・グリースが、慌てて責任を俺たちに押し付けようとする。でも俺達なにもしてないよ。
「こいつ私に水をかけたのよ!!」
横から、女性の怒った声。金髪のボブヘアの女性が、怒りの形相で、オスカー・グリースを指差した。見ると、制服が濡れている。
先ほどの水しぶきを浴びてしまったようだ。
「違う!わざとじゃない!こいつらが!」
「オスカー」
フリードリヒ先輩は、強い口調でもう一度、オスカー・グリースの名前を呼んだ。それから、声のトーンを落として続ける。
「近くを通ったら、君が下級生に襲い掛かったと聞いて、駆けつけてきた。事情はここに居る人全員に聞く。」
「私に先に聞いてちょうだい。あまり時間をかけたくないの。」
金髪ボブの女性が腕組みをして、オスカー・グリースを睨みつけた。
「ダニエラ・アーレンス伯爵令嬢‥‥。わかった、そうしよう。」
ダニエラ・アーレンス嬢の父親、アーレンス伯爵は第3騎士団長だ。
王宮の騎士団に顔が利く人間を怒らせてしまったという事か。
オスカー・グリースもわかっているのか、顔色が悪くなってきている。
先日風紀室に居た人達が数人、駆けつけて来た。フリードリヒ先輩は彼らに説明した後、ダニエラ嬢を伴って、食堂を出て行った。
「事情といっても、急に横にダン!と足が来て、水しぶきが飛んで、あ、その時あのアーレンス令嬢の服にかかったと思います。
それから、オスカー・グリース‥先輩が、怒鳴って来て、近寄って来たので避けたら、勝手に転びました。それだけです。」
久しぶり、とも思えない風紀室で、状況を説明した。今回は一人ずつ話を聞くというので、ジョセフィン達には廊下で待っていてもらっている。
風紀室では、前回動揺、向かいにフリードリヒ先輩が座っていて。他の人達は、フリードリヒ先輩の周りに仁王立ちになっている。
「横に足が来た、というのは?」
「何か来る、と思ったから、ジョスの袖を引っ張ったら、ジョスが居た場所に足がきたんです。」
「ジョセフィン君を蹴ろうとしたと思う?」
「そう見えましたけど。」
サリエット家が学園に抗議をして、謹慎をくらったことについて文句を言っていた事も話した。
もう一度抗議をするだろうけど、だめ押しで、うちからも抗議文を出そうかな。
「‥‥君、この間も鞄をぶつけられそうになったのを事前に察知したと言っていなかったかい?」
「結構勘はいいほうなんです。」
「風紀委員にならないかい?」
「は?」
風紀委員に誘われた。何故?しかも何故このタイミング?
「小柄だから戦闘は厳しいかと思ったけど、それだけ勘がいいなら、大丈夫だろう。」
「いやいや、意味がわからないのですが。」
フリードリヒ先輩達風紀委員は、学園内のいざこざなどのときに、仲裁をするのが主な仕事らしい。
先日の件で、俺とジョセフインが仲間思いで真面目そうにみえたので、新規メンバーにどうかと考えていたようだ。
でも、俺もジョセフィンも、喧嘩の仲裁に入るには体格が小さすぎるのがネックだった。
それが結構勘がいいなら、と思ったようだ。
「俺、無理です。認めていただけたようですけど、すみません。」
面倒事を避けようとしているのに、面倒事に向かって行く担当になるわけにはいかない。
「そうか‥‥。残念だよ。」
赤褐色の澄んだ瞳でじっと見つめた後、フリードリヒ先輩は穏やかに微笑んだ。意外とすぐに引いてくれた。
ものすごい形相で睨まれたけど、俺、避けただけだよ?
「オスカー!!」
遠くから、槍で刺すような声。
オスカー・グリースの動きも一瞬止まった。食堂の入り口の方から、フリードリヒ先輩がずんずんとこちらに歩いてくる。
「オスカー!また問題を起こしたのか!」
「ち、違う!こいつらが!」
フリードリヒ先輩の叱責に、オスカー・グリースが、慌てて責任を俺たちに押し付けようとする。でも俺達なにもしてないよ。
「こいつ私に水をかけたのよ!!」
横から、女性の怒った声。金髪のボブヘアの女性が、怒りの形相で、オスカー・グリースを指差した。見ると、制服が濡れている。
先ほどの水しぶきを浴びてしまったようだ。
「違う!わざとじゃない!こいつらが!」
「オスカー」
フリードリヒ先輩は、強い口調でもう一度、オスカー・グリースの名前を呼んだ。それから、声のトーンを落として続ける。
「近くを通ったら、君が下級生に襲い掛かったと聞いて、駆けつけてきた。事情はここに居る人全員に聞く。」
「私に先に聞いてちょうだい。あまり時間をかけたくないの。」
金髪ボブの女性が腕組みをして、オスカー・グリースを睨みつけた。
「ダニエラ・アーレンス伯爵令嬢‥‥。わかった、そうしよう。」
ダニエラ・アーレンス嬢の父親、アーレンス伯爵は第3騎士団長だ。
王宮の騎士団に顔が利く人間を怒らせてしまったという事か。
オスカー・グリースもわかっているのか、顔色が悪くなってきている。
先日風紀室に居た人達が数人、駆けつけて来た。フリードリヒ先輩は彼らに説明した後、ダニエラ嬢を伴って、食堂を出て行った。
「事情といっても、急に横にダン!と足が来て、水しぶきが飛んで、あ、その時あのアーレンス令嬢の服にかかったと思います。
それから、オスカー・グリース‥先輩が、怒鳴って来て、近寄って来たので避けたら、勝手に転びました。それだけです。」
久しぶり、とも思えない風紀室で、状況を説明した。今回は一人ずつ話を聞くというので、ジョセフィン達には廊下で待っていてもらっている。
風紀室では、前回動揺、向かいにフリードリヒ先輩が座っていて。他の人達は、フリードリヒ先輩の周りに仁王立ちになっている。
「横に足が来た、というのは?」
「何か来る、と思ったから、ジョスの袖を引っ張ったら、ジョスが居た場所に足がきたんです。」
「ジョセフィン君を蹴ろうとしたと思う?」
「そう見えましたけど。」
サリエット家が学園に抗議をして、謹慎をくらったことについて文句を言っていた事も話した。
もう一度抗議をするだろうけど、だめ押しで、うちからも抗議文を出そうかな。
「‥‥君、この間も鞄をぶつけられそうになったのを事前に察知したと言っていなかったかい?」
「結構勘はいいほうなんです。」
「風紀委員にならないかい?」
「は?」
風紀委員に誘われた。何故?しかも何故このタイミング?
「小柄だから戦闘は厳しいかと思ったけど、それだけ勘がいいなら、大丈夫だろう。」
「いやいや、意味がわからないのですが。」
フリードリヒ先輩達風紀委員は、学園内のいざこざなどのときに、仲裁をするのが主な仕事らしい。
先日の件で、俺とジョセフインが仲間思いで真面目そうにみえたので、新規メンバーにどうかと考えていたようだ。
でも、俺もジョセフィンも、喧嘩の仲裁に入るには体格が小さすぎるのがネックだった。
それが結構勘がいいなら、と思ったようだ。
「俺、無理です。認めていただけたようですけど、すみません。」
面倒事を避けようとしているのに、面倒事に向かって行く担当になるわけにはいかない。
「そうか‥‥。残念だよ。」
赤褐色の澄んだ瞳でじっと見つめた後、フリードリヒ先輩は穏やかに微笑んだ。意外とすぐに引いてくれた。
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