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第1章

第17話 ダンス

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三日ほどで、ジョセフィンは包帯を外した。勿論傷跡は残っていない。
騎士科の授業は、思っていたよりも、「普通」だった。座学の大半は普通科と同じで、それに剣術や馬術などの実技が多めに入る。魔法の授業もちゃんとあって良かった。
残念だったのは、淑女科と接点が少ないことだ。
騎士科と淑女科では校舎が別れていて、まさか食堂も別だとは思わなかった。
それでも、共通の授業は校舎を移動して受けるので、会う機会はあるんだ。

フローラはダンスの授業で再会したときには、ジョセフィンの怪我を心配してくれていた。優しい。
俺はダンスにはあまり熱心ではなかったけど、小さい頃から一応はダンスレッスンを受けさせられていたから、それなりに踊れるようで、ステップが華麗だと褒められた。
ちなみに、小さい頃からのダンスの相手役はジョセフィンだったので、ジョセフィンも同じくらい踊れる。女性パートも。

ダンスがある程度できると、淑女科のダンスパートナーとして人気が出るけど、身長も重要視される。
一番人気は、ディートフリード・アズール伯爵令息だ。顔立ちもクールで、背が高く、ダンスもそつなくこなす。
ヴァルター・バイオン伯爵令息は二番目に身長が高いので、最初は人気が高かったけど、ダンスがやや荒々しいのでダンスが上手な女子以外からはあまり人気がなくなってきているようだ。‥‥顔が怖めだからではないと思う。

俺とジョセフィンはそこそこ人気があるようで、ダンスの相手役に選ばれる機会が多いけど、人気は、カサンドラの方が有る気がする。
カサンドラは、騎士の格好をして男性パートを華麗にこなしていて、淑女科の女子から時々歓声があがっている。

貴族の学園なので入学前にダンスのレッスンも受けて、「それなりに踊れるようになっている事」と事前に言われていたけれど
「それなり」の個人差が結構大きい。全くダンス経験がない、というわけではないんだろうけど、「少しかじった程度」に見える人も多い。
学園側もあまり細かく条件はつけないのは、領地が王都から離れていてダンス教師を雇えないとか、貴族の中でも環境に格差がある事に理解を示しているかららしい。
実力がバラバラなのもあって、上手な人が独占されないように、同じパートナーとのダンスは1授業1回だけと言うルールになっていた。

まあ、1回でも、フローラと踊れれば俺は嬉しいけど。
その日も、フローラと踊る事ができた。踊っている最中、ダンスの自主練習というのがあると言う話になった。

自主練習と言っても全く個人の練習というわけではなく、ダンスホールが放課後の決まった時間解放されて、各自自由に練習ができるのだという。
都合が合う時は、クラヴィーアを演奏してくれる人もいるそうだ。
フローラも自主練習を考えていると言っていた。話の途中で、曲が終わったので、自主練習に誘ってみようと思った。

「ホールの開放時間っていつ? 俺時間合わせるよ?」

ちょっと勇気を出してそう言ってみたけど、フローラの視線は、別のところを見ていた。
視線の先‥、カサンドラが、淑女科の生徒にダンスをせがまれていた。

「‥‥私、カサンドラ様に自主練習をお願いしたいけど‥‥、お誘いする勇気がなくて‥‥。」

ほんのりと頬を染めて言う。
‥‥うん、カサンドラは人気だよね。

俺からカサンドラに口添えするべきか?いや、でも‥‥と葛藤をしているうちに、パートナー交代となった。

俺が誘った言葉とか、全然耳に入ってなかったなーと、ちょっと落ち込みながら踊っていたら、「きゃっ」と背後で悲鳴。

気配を感じて、さっとターンして避けると、ヘンリーが倒れんこんできた。なんとかもがいて、パートナーを転ばすに済んだけれど、結局自分は尻餅をついてしまったようだ。
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