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第1章

第11話 こうして俺は商人に?

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辺境の地、エルストベルクで育った俺は、冒険者登録が出来る12歳になって、早速、冒険者登録をして活動を開始した。
それまでも、父の魔獣討伐に連れて行ってもらって、魔獣を狩ったり、野営をしたりを経験してはいた。。
だが、冒険者として活動するのは大分勝手が違うのだと、活動を初めてから初めて気がついた。
まず、魔獣を狩る依頼。依頼料が高い魔獣の生息エリアは、遠く、狩ってから持ち帰るまでが時間がかかる。そして重い。

それでもランクが低いうちは、そんなに遠く迄は行かないし、朝方出て、狩った後、すぐにしっかり血抜きをして、気温が高くならないうちに戻ってくれば
肉だって特に問題はなかった。でも、ある日解体所に行ったとき、卒倒しそうな匂いが充満していた。
数日かかる依頼をこなした冒険者が、狩った大量の獲物を解体所に運んだらしい。肉が腐敗していることは見なくても分かる。
現地で解体してくれば、と思ったけど、解体したものだって、皮にこびりついた肉が腐敗して、凄まじい匂いを放っている状態だった。

冒険者が悪いという訳じゃない。そもそもが往復だけで何日もかかる依頼だ。討伐証明の角だけ持ち帰れば、そんな事には成らないとは言っても、骨だって毛皮だって持ち帰って買い取りに出せば多少に痛みなら金にはなるのだから、当然持ち帰る。

俺も、ランクが上がって、遠い場所の依頼を受けるようになったらこうなるのか、と思ったら、愕然とした。
それから最初にやったのは、氷魔法を覚えることだった。
凍らせて持ち帰れば、肉が腐ったりしない。途中自分で魔法を駆け直す事ができれば、安心だ。

なんとか魔獣を丸ごと冷凍できるようになって、冒険者ギルドの買い取りにだしたら、ギルドから、他の冒険者の獲物も現地で凍らせてもらえないかと頼まれた。
冒険者ギルドでも、討伐した魔獣の素材の腐敗は問題となっているようだ。

依頼先で出会った冒険者の獲物を1~2頭程度なら、なんとかなるだろうけど、限度がある。それに必要以上に魔力を消費して帰路につくのは避けたい。
一人、二人が獲物を凍らせて持ち帰って来たって、ギルドの解体所の問題は解決しない。

自分の家の領地の冒険者ギルドでのことだし、なんとか解決策がないか考えた。依頼先の近くの村で凍らせる事を提案した。

人一人が使う魔法だと、やはり限度があるので、凍らせる魔道具を準備して村で人を雇って、魔道具を使って魔獣を凍らせてもらう。

12歳で、冒険者ランクも低い子供が、人を雇うのは難しいので、結局父に相談をして、ジョセフィンの父親のルドルフに手伝ってもらうことになった。
凍結だけでなく、解体も皮鞣しも現地でやってしまおうということになり、寒村にちょっとした冒険者御用達の店ができた。

解体を待つ間に利用する食堂やら宿も出来て、村に活気がでてきた。
そのうち、冒険者ギルドと提携してギルドの簡易窓口が設置されて、冒険者は、現地で納品ができるようになった。

領地内にそういう場所をいくつか作っていったら、商会を立ち上げることになった。
商会を立ち上げた当時は、俺は13歳だったのでトラブル防止の為もあって商会長は父の名義にした。どっちみち、家の力も借りているし、手伝ってもらっているからその方がよかった。
解体や凍結だけでなく、魔獣の素材を加工して売るようになった。

魔獣の皮でつくった鞄や、角や魔石で作ったアクセサリーを売り出したら好評で、王都にも商会の支店を出した。
王都での主な住まいとしようとしているのが、この商会、エルスト商会の王都支店の店舗兼住宅だ。

将来的に俺は商人になって、このまま商会を続けていくつもりだし、家族も周囲もそう思っていると思う。
だから、騎士になるなんて言ったら、呆れられるのはまあ、当然だな。

そもそも、冒険者活動をしていても、剣はあまり使っていなかった。
小柄な俺が、剣で接近戦をするのは不利だったので、攻撃は魔法か弓が中心でだった。剣自体が重いから、短剣しか持ち歩いていなかったし。
剣術の稽古は、小さい頃からやってはいたけど、実戦経験はほぼない。

騎士科の実技は剣が中心だと思うと、このままではまずいのは確かだ。

「‥‥よし、剣術の実戦経験を積もう。」

色換えの腕輪を採りに行く機会を利用して、剣で実戦経験を積めばいいかと、普段使っていない剣をひっぱりだしていたら、ジョセフィンが盛大に溜め息をついていた。

「なんかずれてる‥‥。いや、いざとなれば魔法でどうにか出来る方だとは、わかってますけどね。」
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