自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

月野槐樹

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第7章

第433話 八つ当たり

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角サーモンパン売りのおじさんに、試食させてもらったお礼を言った。その後はダンジョンの入り口に近付いて良いって言われているギリギリの位置まで行ってみた。

目安の位置の地面にロープで線が引かれていた。その線に沿って並んでダンジョンの入り口の穴を観察した。
ダンジョンの入り口はぽっかりと穴が空いていて、中は真っ暗に見えた。でも、じっと見ているうちに急に入り口付近がちょっとキラキラと光った。
そして、冒険者が3人、急に姿を現した。

彼らは一瞬、ポカンとその場に立ち尽くしていて、それからハッとして周囲を見回して、頭を抱えて叫び出した。

「うわぁ~!トラップかよ!」
「もうちょっと!もうちょっとだったのにぃ~!」

ダンジョンの中でトラップにあって、入り口まで戻って来ちゃった人達みたいだ。ああ、残念だったんだねと気の毒に思ってみていたら、ふとそのうちの一人と目が合った。
浅黒い肌をした細マッチョな男性が、急にグワッと鬼のような形相になった。

「そこのガキ!何見てやがる!俺達を笑ってんのか!ああ?バカにしてんのか?」
「ああん?見てたんならさぁ~。見学料払ってもらえば良いじゃん。」

細マッチョの男性の隣のちょっと小柄なヒョロ眼鏡な男性が、僕達の方に目をやってニヤリと笑った。

「‥‥入場料、もらう‥‥。」

もう一人の一番身体が大きいスキンヘッドの男性は表情も変えずに低い野太い声でボソリと言って、僕達の方に一歩踏み出した。

リヒャルトさんとインゴさんがさっと身構えて、僕の前に立った。

「おい、見学者に絡むな。出禁にするぞ。」

冒険者ギルド職員の人が出て来て止めてくれた。

「すぐにダンジョンに戻るなら再入場料金で良いが、再入場審査からやり直しだ。」
「ちょ、ちょ‥っ。チッ!分かったよ!」

冒険者の三人組は、苛ついた様子のまま、ギルド職員の人にお金を払ってダンジョン内に戻って行った。あれ? 入り口の天井?付近に一瞬プニョン君が見えたよ。

『出禁ポヨン。罠ポヨン。』

プニョン君の念話が聞こえて来た。やっぱりチラリと見えたのはプニョン君だったみたいだ。
え、出禁?今再入場したのに?何かトラップをしかけるの?大丈夫?

ちょっと気になってダンジョン入り口を凝視していたら、ポンポンとラルフ君とロルフ君に肩を叩かれた。

「もう行こうか。今の冒険者は、トラップに引っかかったから機嫌が悪かったみたいだね。」
「またトラップで出て来ちゃったりしたら、面倒そうだよ。」

ギルベルト君も見学終了に賛成みたいだ。絡まれるとやだって言ってたもんね。

プニョン君は「出禁」って言ってたから、もしかして本当にすぐにトラップで出て来ちゃうかもしれない。
また絡まれても皆が嫌な思いをしそうだし、帰ることにした。

『ポヨンポヨン、罠ポヨン』

ダンジョンの入り口を囲んでいるところの門から出た頃に、プニョン君がちょっと機嫌よさそうな念話が来た。
何か「やってやったぜ」って雰囲気なんだけど、すぐに外に追い出しちゃったりしたのかもしれない。
彼らとまた遭っちゃってもややこしそうなので、さっさと元来た道を戻る事にした。
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