自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

第7章

第423話 次に遭う場所

アタムスン村に来た理由は、温泉のある保養地として発展できるかの開発と見極めの為だったから、母様がもう目処が立ったって思ったら、帰ると思う。
雪が多くて寒い地元を避けて「冬越し」でくる貴族達が来ることを想定しているから、滞在する貴族達と同じように春まではここで過ごしてみようって感じもあるのだけど
逆に春が来て、特に問題もなさそうだったら帰るんだよね。

ラルフ君とロルフ君は領地に帰っちゃうのかな。
あれ？そういえばギルベルト君も、「冬越し」でエルストベルクに来てたんだっけ。

「‥‥春になったら皆地元に帰っちゃうのかな。」

僕がそう口にすると、皆が僕の方を見た。
ラルフ君とロルフ君はチラチラとお互い目線を合わせた。ラルフ君が口を開いた。

「春頃なのかはわからないけどね。ソーマ君もそのうち地元に帰るでしょ。」
「そうだけど‥‥。皆バラバラになっちゃうかなって‥‥。」
僕がそう言うと、ラルフ君とロルフ君が交互に僕の頭をポンポンと撫でた。
「会おうと思えばいつでも会えるじゃん。」
「そうだよ。次は王都でだって良いし。」

ラルフ君とロルフ君に言われて、王都で彼らと会った頃を思い出した。あの頃は、ラルフ君達は見習い冒険者で活動していて、僕と会って遊ぶのは、王都の屋敷に遊びに来たときくらいだったっけ。

「王都かぁ。」
「こっちの地元でも良いけどさ。‥‥ギルベルト君は、王都に戻るの？」

話を振られてギルベルト君が目をぱちくりと瞬かせた。
ギルベルト君は、エルストベルクに冬越しに来る前は、王都に住んでたんだよね。
王都に屋敷もあるし、春になったら王都に戻るのかなと思っていたら、ギルベルト君はちょっと困ったように首を傾げた。

「王都はねぇ‥‥。僕は学園に入学する前までに冒険者修業っぽい事したいんだけど、王都の冒険者ギルドはそういうのに向いてない気がしたんだ。」
「あ、わかるぅ！見習い冒険者向きじゃないよね。」

ギルベルト君の言葉に、ラルフ君とロルフ君が同意する。ラオウル君も頷いている。

僕は冒険者活動をしていないけど、王都の冒険者ギルドは、エルストベルクの領都みたいに講習会を開催とかもしていなかったし、
見習い冒険者が活動をするのを応援っていう雰囲気はあまりなかったかもしれない。
それにラオウル君やラオウル君のお父さんもちょっと嫌な目に遭ってたよね。

「王都は学園に入学したら住むわけだし、無理に行かなくても良いかなって気はするよね。お茶会もちょっと面倒だったし‥‥。あ、これは内緒ね。」

ラルフ君はお茶会の事を口にして、ちょっと肩を竦めた。あまり、お茶会は好きじゃないみたいだ。

「王都でお茶会に行くより、こういうところの方が他の貴族家の子達とも交流が持てている気がするよね。」
「ああ、それはあるのかも！　母上も他の家と交流を持つのにここは良いって言ってたよ。」
ロルフ君の言葉に，ギルベルト君がハッとして頷いた。

ラルフ君とロルフ君もうんうんと首を縦に振った。
「だよね。ちょっと色々事件あったけどさ。」
「色々事件はねぇ。」

事件は温泉地にはつきもの‥‥ってことはないよね。

ダメダメ、崖の上の光景を妄想しそうになっちゃう。
ザバーンって岩に波が打ち付けたり。
あ、ゾンビダンサーが顔を出して来た。