自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

月野槐樹

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第7章

第411話 兄弟の対話

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『僕が兄上から聞いたのは、クラウスさんがひょっこり帰ってくるだろうって言ってた言葉だけだよ!‥‥母上だって聞いていたじゃないか!』

マイルズ君の言葉を聞いて髭もじゃの人はマイルズ君のお母さんの方を訝しげに見た。

『ほう‥‥。貴女も聞いていたんですかな。』

マイルズ君のお母さんは、ピクリと肩を震わせた。

『‥‥それは‥‥聞いたわ。だけど、レナードが私達を安心させる為に言った言葉だとしか思っていなかったわ。』
『ふむ‥‥。何にも疑問に思わず、追求もせず‥‥ですかな。』

髭もじゃの人は右手の指先でもじゃもじゃの髭を、指に絡めたり引っぱったりしながら、頭を斜めにして、マイルズ君のお母さんの顔を覗き込んだ。
『なんですの?そもそも、私達じゃなくて、ヴァルガー家の人達にお聞きになったら?婚約解消を優位にしようとしたのでしょう?』
『それは‥‥貴殿のご子息が言っているだけですからなぁ‥‥。』
くるくる、びよん。くるくる、びよん。髭もじゃの人が指先で髭を弄る。ちょっと気になるなと思っていたら、ソファーでゴロンと横になっていたプティが立ち上がって画面をじっと見てた。そしてくるくる、ぴょんと動く髭の動きを目で追っている。前足で突きたいらしい。
プティ、髭もじゃの髭はやめておこうよ。

マイルズ君のお母さんがムッとした様子で、髭もじゃの人を睨んだ。

『いいかげんにしてくださいませ!貴方はヴァルガー家から依頼を受けてここに来たから、ヴァルガー家の不利になるようなことはしないだけではありませんか。
王都の元衛兵隊長とのことですけど、依頼人に都合が良いように犯人を仕立てるのがオシゴトだったのかしら。』
『な、なんだと!』

髭もじゃの人が髭から指を離して、マイルズ君のお母さんに向き直った。

『このジュエロ・ガニエルを侮辱するつもりか!』
『そちらこそ、メイソン家に対して失礼ではありませんこと?』

髭もじゃの人とマイルズ君のお母さんが言い争いを始めた。
ベッドの上で毛布を被って蹲っていたマイルズ君は、目の前の二人の意識が自分から逸れているのを見たからなのか、部屋から抜け出した。
宿の廊下を通って他の部屋の前で立ち止まり、ノックをした。

出て来たのはレナードさんだった。
レナードさんは,少し面倒臭そうな顔をしながらマイルズ君を部屋に入れた。

『兄上!クラウスさんの行方を知ってるならちゃんと証言してよ!犯人にされちゃうよ!』
『なんだよ‥‥。俺が知ってる事は話したさ。』
『嘘だ!まだ見つかってないじゃないか!僕‥‥、知ってるんだぞ。』
『‥‥知ってるって‥‥、何をだよ。』
『あの、リズベットって人と仲良くなりたいから、クラウスさんが帰ってくるのが遅い方が良いって思ってるんだろ!』
『‥‥。』

マイルズ君の言葉に、レナードさんが一瞬黙り込んだ。え、本当なの?
レナードさんはその後、首を横に振った。

『俺がクラウスの行方で知ってる事はもう話してある。見つからないなら、どこか他に隠れたんだろ。』
『バカ!兄上の馬鹿! 変な事に協力するから、疑われるんだぞ!何の得にもならないのに!』
『‥‥得とか損とか‥‥。』
『友達なら、婚約破棄のことはちゃんとごめんなさいして、迷惑かけるなって言えばよかったじゃないか!そもそもあの令嬢はクラウスさんが戻って来たら婚約するって話にもうなってるのに!』
『‥‥は?』

泣きじゃくりながら話をするマイルズ君の言葉を、半分聞き流しているみたいに顔を背けていたレナードさんは、マイルズ君の最後の言葉に反応して振り向いた。
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