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第7章
第409話 悪の‥‥
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温泉蒸し料理の店予定地の前で、サミュエル君達を見送った僕達は、皆何となくホッとした様子だった。
婚約破棄の話題とかちょっと重たかったもんね。
サミュエル君達が去っていた通りもいくつか工事をしている建物があって、以前と雰囲気が変わりつつあった。
「他にも工事しているところがあるね。」
エルスト商会が関連するところなのかなと思って叔父様に訊いて見たら、商会とは関係しないところもあるらしい。
「少し前から貴族家の保養地になってきていたからね。王都でも有名な他の商会の店も入って来つつあるんだよ。、
あのレンガ造りの店も出来たばかりだけど、貴族の御婦人の帽子の店だね。あっちは、靴屋だ。どっちも王都でも人気がある店だよ。」
叔父様が指し示してくれた方を見ると、レンガ造りの建物に、幅広の帽子の絵が書かれた看板が見えた。靴屋の方はダークブラウンを基調にした落ち着いた佇まい。
よく見ると、お店のロゴが書かれた看板部分に踵が高い靴のモチーフが見えた。どちらも貴族向けのお店らしい。でも王都よりはカジュアルな雰囲気なんだって。
リゾート地っぽいよね。
店を眺めていたら靴屋の方からピンクサーモンの色彩が見えた。見覚えがある令嬢が、男性と一緒に店から出てくるところだった。
「あ。」
思わず声を出しちゃった。
だって、ピンクサーモン令嬢と一緒にいる黒い外套を着た恰幅が良い男性は、悪の総帥っぽいって思った人だった。
僕の様子で皆が彼らの方を見た。
「お、ピンクサーモン。」
「あれってこの間の悪の総帥おじさん?」
ラルフ君とロルフ君が口々に言った。僕と同じように考えたみたいだ。
「悪の総帥?」
ロルフ君の言葉に、叔父様が首を傾げて訊きかえした。ロルフ君はちょっと、失言したという感じで肩をすくめた。
「あ、雰囲気的に。前に見かけたときにイメージでそんな話になって。」
ラルフ君が、ちょんっとロルフ君の脇を小突いた。
「やばいよ。知らない人だし。勝手に『悪』とか言ってるってもし聞かれちゃったら‥‥。」
ラルフ君に突かれてロルフ君はちょっと身を縮こませた。確かに知らない人を勝手に「悪」って呼んでるのって失礼だったかも。
叔父様はもう一度、悪の総帥って呼んじゃった男性とピンクサーモン令嬢の姿を見た。何やら通りの先の方を指差したりしながら、立ち止まって二人で話をしているようだ。
「マカロ男爵と令嬢だね。」
叔父様の言葉にびっくりした。叔父様がその人の事を知っているのにもちょっとビックリしたけど、令嬢ってことは、ピンクサーモン令嬢は悪の総帥(って呼んじゃった人)と親子ってことだ。
「え、親子なの?」
「そうだよ。マカロ男爵は一度、姉上に挨拶するために宿に来てたよ。」
「あ、宿で見た時かも。」
もう一度見ようとしたら、こちらに背を向けて通りの奥に歩いていくところだった。
「男爵家の当主の人だったんだ。温泉施設とかの建設予定地を熱心に見てたから、貴族系の商人さんかと思ってた。」
ギルベルト君がそう言うと叔父様が興味深そうにギルベルト君を見た。
「マカロ男爵が温泉施設の建設予定地を熱心に見ていたの?」
「うん。ねぇ?そうだったよね。」
ギルベルト君が僕達に同意を求めたので、皆頷いた。
「へえ‥‥。」
叔父様は、マカロ男爵が歩いて行った方角に目線を動かした。
婚約破棄の話題とかちょっと重たかったもんね。
サミュエル君達が去っていた通りもいくつか工事をしている建物があって、以前と雰囲気が変わりつつあった。
「他にも工事しているところがあるね。」
エルスト商会が関連するところなのかなと思って叔父様に訊いて見たら、商会とは関係しないところもあるらしい。
「少し前から貴族家の保養地になってきていたからね。王都でも有名な他の商会の店も入って来つつあるんだよ。、
あのレンガ造りの店も出来たばかりだけど、貴族の御婦人の帽子の店だね。あっちは、靴屋だ。どっちも王都でも人気がある店だよ。」
叔父様が指し示してくれた方を見ると、レンガ造りの建物に、幅広の帽子の絵が書かれた看板が見えた。靴屋の方はダークブラウンを基調にした落ち着いた佇まい。
よく見ると、お店のロゴが書かれた看板部分に踵が高い靴のモチーフが見えた。どちらも貴族向けのお店らしい。でも王都よりはカジュアルな雰囲気なんだって。
リゾート地っぽいよね。
店を眺めていたら靴屋の方からピンクサーモンの色彩が見えた。見覚えがある令嬢が、男性と一緒に店から出てくるところだった。
「あ。」
思わず声を出しちゃった。
だって、ピンクサーモン令嬢と一緒にいる黒い外套を着た恰幅が良い男性は、悪の総帥っぽいって思った人だった。
僕の様子で皆が彼らの方を見た。
「お、ピンクサーモン。」
「あれってこの間の悪の総帥おじさん?」
ラルフ君とロルフ君が口々に言った。僕と同じように考えたみたいだ。
「悪の総帥?」
ロルフ君の言葉に、叔父様が首を傾げて訊きかえした。ロルフ君はちょっと、失言したという感じで肩をすくめた。
「あ、雰囲気的に。前に見かけたときにイメージでそんな話になって。」
ラルフ君が、ちょんっとロルフ君の脇を小突いた。
「やばいよ。知らない人だし。勝手に『悪』とか言ってるってもし聞かれちゃったら‥‥。」
ラルフ君に突かれてロルフ君はちょっと身を縮こませた。確かに知らない人を勝手に「悪」って呼んでるのって失礼だったかも。
叔父様はもう一度、悪の総帥って呼んじゃった男性とピンクサーモン令嬢の姿を見た。何やら通りの先の方を指差したりしながら、立ち止まって二人で話をしているようだ。
「マカロ男爵と令嬢だね。」
叔父様の言葉にびっくりした。叔父様がその人の事を知っているのにもちょっとビックリしたけど、令嬢ってことは、ピンクサーモン令嬢は悪の総帥(って呼んじゃった人)と親子ってことだ。
「え、親子なの?」
「そうだよ。マカロ男爵は一度、姉上に挨拶するために宿に来てたよ。」
「あ、宿で見た時かも。」
もう一度見ようとしたら、こちらに背を向けて通りの奥に歩いていくところだった。
「男爵家の当主の人だったんだ。温泉施設とかの建設予定地を熱心に見てたから、貴族系の商人さんかと思ってた。」
ギルベルト君がそう言うと叔父様が興味深そうにギルベルト君を見た。
「マカロ男爵が温泉施設の建設予定地を熱心に見ていたの?」
「うん。ねぇ?そうだったよね。」
ギルベルト君が僕達に同意を求めたので、皆頷いた。
「へえ‥‥。」
叔父様は、マカロ男爵が歩いて行った方角に目線を動かした。
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