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第7章

第393話 モヤる

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日が暮れかけてきていたので、サミュエル君達を宿まで送って行く事にした。僕達はリヒャルトさんとインゴさんという大人の人が同行しているからね。

サミュエル君達は宿に戻りたくなさそうな雰囲気だったけど、日が沈んで暗くなってから、まだ戻って来ない!行方不明!って騒ぎになったら大変だよと言ったら
三人は一度宿に戻る事に同意した。僕達の泊まっている宿に遊びに来たら良いのにな、と思うけど。それは一度宿まで行って、サミュエル君のお母さんとかに伝えてからが良いよね。

「村の集会所でもテーブルボール?へえ~。テーブルボール、面白いよね。ダンスルームに台が置かれていたので僕もちょっとやてみたよ。」

サミュエル君達が泊まっている宿に向かう途中、違う話題をってことで、集会場でテーブルボール大会が開かれた話をした。
サミュエル君達が泊まっている宿にも、テーブルボール台が用意されているそうで、評判は良いみたいだ。

「じゃあ、今度試合しようよ。」
「良いね!」

サミュエル君とテーブルボールの試合の約束をした。ニコラちゃん達もやる気になっているみたいだ。ニコラちゃん達はマーリエと身長が同じ位だから
マーリエと試合するとかも良いかもしれない。‥‥マーリエはちょっと人見知りだから、勝手に約束しちゃだめだな。うん。話に出すのはマーリエに聞いてからにしよう。

テーブルボールの話とかをしていたら、段々サミュエル君達の表情も明るくなってきた。
よかった。ちょっとホッとした。
サミュエル君が宿泊している宿に近付いて来た所で、夕闇の中、誰かがこちらに走ってくるのが見えた。
インゴさんがちょっと警戒して僕達の前に出た。

「君達!」

段々と近付いて来たその人影から聞き覚えのある声がした。

「あ、イーサン兄様!」
「え、あ、ほんとうだわ。」
ニコラちゃんとミリーちゃんが駆け出した。走って来た人物はイーサンさんだった。

「ああ、ニコラとミリー。‥‥サミュエルも帰って来たね!良かった!」

抱きついてきたニコラちゃんとミリーちゃんを抱きとめると、イーサンさんは顔を上げてこちらの方を見た。

「送ってくれたのか。ありがとう。」

イーサンさんが僕達にお礼を言った。宿内がバタついていたから、サミュエル君達は争いを見ない方が良いと思って出かけさせていたものの、
日が暮れても帰って来ないので心配していたそうだ。

「俺達が揉めたからなんですけどね‥‥。」

イーサンさんがばつが悪そうに言った。
クラウスさんの事で、レナードさんへ騎士達が事情聴取に来た後、宿内の他の宿泊客にその内容を漏らしたのは実はレナードさんのお母さんらしい。
レナードさんのお母さんは騎士達の事情聴取に同席した後、「うちのレナードは何も悪くない!」って泣きながら他の宿泊客の御婦人達に愚痴ったらしい。結果、逆に疑惑として噂が広がってしまったそうだ。

その話を聞いて、イーサンさんとカイルさんはレナードさんに詰め寄ったんだそうだ。
祭りの日の夜にクラウスさんと一緒にでかけたのかって。出かけたのだったら、クラウスさんが行方不明になっているのにその情報を言わなかったのは何故かって。

「レナードに話を訊きに言ったら、あいつ、のらりくらりしていて‥‥。苛立って怒鳴ってしまって‥‥。」
「レナードさんはなんて言っていたんですか?」

ラルフ君が、突っ込んで聞いた。イーサンさんは少し眉間に皺を寄せて、軽く首を振った。

「一緒に薬草を採りに山に入ったけど、自分は先に戻った、と。疑われそうだから言わなかったと。」
「ええ‥モヤる‥‥。」
「何か隠してるんじゃ‥‥。」

イーサンさんの言葉に、ラルフ君とロルフ君は納得していない様子で言った。
イーサンさんはちょっと眉を上げ、頷いた。

「俺も、‥‥そう思う。レナードは何か知っているんじゃないかって‥‥。クラウスを害してはいないと信じたいが‥‥。」

サミュエル君達の宿泊先の宿に向かって歩きながらそんな話をしていた。
宿に着くと、サミュエル君達のお母さん達が宿のロビーでサミュエル君達を出迎えた。ほっとした様子だ。
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