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第7章
第392話 新たな疑惑に
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「サミュエル君達はどこかに行く途中?」
ラルフ君がサミュエル君に訪ねた。サミュエル君はチラリとニコラちゃん達に目線を動かしてから、首を横に振った。
「散歩?ちょっと出歩いて来なさいって‥‥。」
サミュエル君がそう答えた。何故かちょっと言いにくそうに言う。どうしたんだろうと思ったら、ニコラちゃんがキッと顔を上げた。
「今度はレナード様なの!」
「っ‥‥!ニコラ、だめだよ!」
ニコラちゃんが言うとサミュエル君が慌ててニコラちゃんを止めようとした。しかし今度はミリーちゃんが口を開いた。
「レナード様は、お祭りの夜にクラウス様と出かけてたのよ!それを今まで黙ってたの!きっとレナード様が‥‥!」
「ミリーまで!言っちゃだめだって!」
「だって!エッダお姉様も、カイル兄様もイーサン兄様も疑われて!」
「そうよ!レナード様だったなんて!ひどい!」
「だからー!」
サミュエル君はアワアワとして、両手をプラプラとさせた。
どうしたんだろうと思ったら、今日の午後にレナードさんの所に騎士が事情聴取に来たのだそうだ。
その内容が、祭りの日の夜にレナードさんがクラウスさんと一緒に山に薬草を摘みに入ったということだったらしい。レナードさんが祭りの日の翌日に薬草を冒険者ギルドに持ち込んでいたんだって。
「あ、薬草‥‥。」
「知ってるの!?」
僕が呟くとニコラちゃんがバッと目を見開いて、僕の方を見た。ニコラちゃんが詰め寄ろうとするところをラオウルが遮るように少しだけ前にでて言った。
「夜に光る薬草があるって聞いたんだよ。それで‥‥、どうなったの?」
「騎士の方達が帰った後に、お母様達がその話をしていて‥‥、カイル兄様とイーサン兄様がそれを聞いて、レナード様を怒って、喧嘩になってまた騎士の方達が来て‥‥。
私達はちょっと出かけてなさいって言われちゃったの。」
どうやら、あのヒカリネジマナ草を採取して冒険者ギルドに買い取りに出したのはレナードさんだったみたいだ。それが祭りの日の翌日だったから、騎士の人が事情を訊きにきて、その話が漏れて、レナードさんとカイルさん達が揉めてるってことなのかな。
「レナードさんは祭りの日の夜にクラウスさんと山に行ったのを黙ってたってこと?」
「疑われるからじゃない?」
「疑われるっていうか、クラウスさんが行方不明になったのを知ってたってことじゃないの?‥‥もしかして‥‥!」
「‥‥。」
僕達はボソボソと話をしていて、途中で黙り込んだ。安易な結論に至りそうな気がしたからだ。
そこに、ニコラちゃんがキッと怒ったような顔をして言った。
「黙ってたんなら、怪しいのよ!」
「ニコラ!言わないの!」
サミュエル君がニコラちゃんを諌める。ニコラちゃんは涙目になった。
「サミュエルは悔しくないの?エッダお姉様は、サミュエルのお姉様じゃない!エッダお姉様が疑われて嫌な思いをしたのに!」
「だからだよ! エッダ姉上が疑われて嫌だったのに、同じ事をレナード様にしちゃ駄目だろ!
マイルズだってお兄上の事で傷つくよ!」
「‥‥。」
サミュエル君の言葉で、ニコラちゃんは唇を尖らせたまま黙った。
ギルベルト君が僕の耳元で囁いた。
「ねえ。ヤンティス君がクラウスさんの弟で、マイルズ君がレナードさんの弟だったよね。二人、仲良しだったみたいだけど大丈夫なのかな。」
「どうだろう‥‥。」
実際の所は良くわからないけれど、お兄さん同士が被害者と加害者みたいに周囲から言われたら傷つくし、嫌な気持ちになるよね。
「良くわからないけど‥‥。はっきりしているのはレナードさんがお祭りの翌日にヒカリネジマナ草を冒険者ギルドに売ったってことくらいなんじゃないの?
前日の夜にクラウスさんと一緒に採りに行ったって、レナードさんが証言しているのかな。」
どこまではっきりしているのか、確認してみたら、サミュエル君達は少し唸りながら首を傾げた。
「わかんないよ。宿で噂になっているのを聞いただけだから‥‥。もう、僕嫌だよ‥‥。こんな事ばっかり‥‥。」
サミュエル君が俯いた。声が震えている。
「サミュエル‥‥。」
ニコラちゃんが涙目になりながらサミュエル君の背中をそっと擦った。
僕達は何て言ってあげたらいいか良くわからなかった。
ラルフ君がサミュエル君に訪ねた。サミュエル君はチラリとニコラちゃん達に目線を動かしてから、首を横に振った。
「散歩?ちょっと出歩いて来なさいって‥‥。」
サミュエル君がそう答えた。何故かちょっと言いにくそうに言う。どうしたんだろうと思ったら、ニコラちゃんがキッと顔を上げた。
「今度はレナード様なの!」
「っ‥‥!ニコラ、だめだよ!」
ニコラちゃんが言うとサミュエル君が慌ててニコラちゃんを止めようとした。しかし今度はミリーちゃんが口を開いた。
「レナード様は、お祭りの夜にクラウス様と出かけてたのよ!それを今まで黙ってたの!きっとレナード様が‥‥!」
「ミリーまで!言っちゃだめだって!」
「だって!エッダお姉様も、カイル兄様もイーサン兄様も疑われて!」
「そうよ!レナード様だったなんて!ひどい!」
「だからー!」
サミュエル君はアワアワとして、両手をプラプラとさせた。
どうしたんだろうと思ったら、今日の午後にレナードさんの所に騎士が事情聴取に来たのだそうだ。
その内容が、祭りの日の夜にレナードさんがクラウスさんと一緒に山に薬草を摘みに入ったということだったらしい。レナードさんが祭りの日の翌日に薬草を冒険者ギルドに持ち込んでいたんだって。
「あ、薬草‥‥。」
「知ってるの!?」
僕が呟くとニコラちゃんがバッと目を見開いて、僕の方を見た。ニコラちゃんが詰め寄ろうとするところをラオウルが遮るように少しだけ前にでて言った。
「夜に光る薬草があるって聞いたんだよ。それで‥‥、どうなったの?」
「騎士の方達が帰った後に、お母様達がその話をしていて‥‥、カイル兄様とイーサン兄様がそれを聞いて、レナード様を怒って、喧嘩になってまた騎士の方達が来て‥‥。
私達はちょっと出かけてなさいって言われちゃったの。」
どうやら、あのヒカリネジマナ草を採取して冒険者ギルドに買い取りに出したのはレナードさんだったみたいだ。それが祭りの日の翌日だったから、騎士の人が事情を訊きにきて、その話が漏れて、レナードさんとカイルさん達が揉めてるってことなのかな。
「レナードさんは祭りの日の夜にクラウスさんと山に行ったのを黙ってたってこと?」
「疑われるからじゃない?」
「疑われるっていうか、クラウスさんが行方不明になったのを知ってたってことじゃないの?‥‥もしかして‥‥!」
「‥‥。」
僕達はボソボソと話をしていて、途中で黙り込んだ。安易な結論に至りそうな気がしたからだ。
そこに、ニコラちゃんがキッと怒ったような顔をして言った。
「黙ってたんなら、怪しいのよ!」
「ニコラ!言わないの!」
サミュエル君がニコラちゃんを諌める。ニコラちゃんは涙目になった。
「サミュエルは悔しくないの?エッダお姉様は、サミュエルのお姉様じゃない!エッダお姉様が疑われて嫌な思いをしたのに!」
「だからだよ! エッダ姉上が疑われて嫌だったのに、同じ事をレナード様にしちゃ駄目だろ!
マイルズだってお兄上の事で傷つくよ!」
「‥‥。」
サミュエル君の言葉で、ニコラちゃんは唇を尖らせたまま黙った。
ギルベルト君が僕の耳元で囁いた。
「ねえ。ヤンティス君がクラウスさんの弟で、マイルズ君がレナードさんの弟だったよね。二人、仲良しだったみたいだけど大丈夫なのかな。」
「どうだろう‥‥。」
実際の所は良くわからないけれど、お兄さん同士が被害者と加害者みたいに周囲から言われたら傷つくし、嫌な気持ちになるよね。
「良くわからないけど‥‥。はっきりしているのはレナードさんがお祭りの翌日にヒカリネジマナ草を冒険者ギルドに売ったってことくらいなんじゃないの?
前日の夜にクラウスさんと一緒に採りに行ったって、レナードさんが証言しているのかな。」
どこまではっきりしているのか、確認してみたら、サミュエル君達は少し唸りながら首を傾げた。
「わかんないよ。宿で噂になっているのを聞いただけだから‥‥。もう、僕嫌だよ‥‥。こんな事ばっかり‥‥。」
サミュエル君が俯いた。声が震えている。
「サミュエル‥‥。」
ニコラちゃんが涙目になりながらサミュエル君の背中をそっと擦った。
僕達は何て言ってあげたらいいか良くわからなかった。
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