自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

月野槐樹

文字の大きさ
上 下
381 / 466
第7章

第381話 倉庫

しおりを挟む
僕達は何となく運営委員っぽい感じになっていた。
商会の人が中心になって運営しているのでそのお手伝い。
村の人達は試合で盛り上がっていたけど、練習して上手くなりたいって声も上がっているみたいなので、予約表を作成した。
時間単位で一組一台を予約。一日二コマまで予約できる、というようなルールを考えて行った。

この場所は、集会場なので他の用途でも使うから、テーブルボール場として利用出来る時間にだけ、予約ができるようにする。
大体は、早朝と日暮れ以降、それと週末だ。週末は練習用に解放する日と大会の日が交互に入るようにする。

「専用というか遊技場として使える所があるといいのにね。」

集会場で会議とかが行われないとはっきり判った日だけ、日中に予約が出来るとか、結構変則的になってしまうのを見て思う。

「温泉施設の所に遊戯室作るって聞いたけど。」
「それは有料になっちゃうよね。」

村の中に温泉施設の建設が始まっているのだけど、それは村の人や旅人がリーズナブルに温泉設備を利用出来るようにする為の場所で入場が有料になる。そんなに高いわけじゃないけど、村の子供が気軽に使える施設ではなくなっちゃう。

「うーん。村の予算に余裕ができてからだねぇ。」

傍で聞いていたビルさんが腕組みをしながら言った。
村の道の舗装は安全確保のために領主家が費用をだしたけど、村側も柵の補修だとかをしていているらしい。
村の費用で集会場を増設するのはまだ先になりそうだとのことだ。
天井に目をやったりしながら考えていた様子のビルさんが、ふと何か思いついたように顔を上げた。

「テーブルボール一台か二台分だったら、空き倉庫とかを使えないかな。」

ビルさんが思いついたのは、古い倉庫だそうだ。麦を保管していた場所だけど、雨漏りするようになって、別の倉庫を建てたのでそのまま使わなくなっていたらしい。
ビルさん的には、テーブルボールをやるだけなら、雨の日を避ければよいでしょうという考えのようだ。

「いやいや、雨漏り直した方が‥‥。」

雨漏りしないときに使うって言っても、置いてあるテーブルボール台がダメになっちゃっても困るよね。

「倉庫は思いつきだけどさ。空き家とか使えればそれでも良いけど‥‥。」

空き家や在ったとしても村が管理している所じゃなければ自由には使えないそうだ。直ぐに思いついたのが雨漏り倉庫だったようだ。

「ずっと雨漏りしてたんなら、中はかなり痛んでるんじゃないかな。‥‥見に行ってみようか‥‥。」

ちょうど決勝が終わったところだった。優勝は、お年寄り組の人。お年寄り組といっても白髪だけど筋肉隆々のオジサンだった。準優勝はなんとエマソン君だ。
メチャクチャ悔しそう。あ、準優勝は賞品ないんだったなぁ。

参加者にダンレモネードが配られ始めたら、皆笑顔。打ち上げみたいになった。
大会の後片付けとかは手伝わなくても大丈夫と言われたので、ビルさんと一緒に雨漏り倉庫を見に行くことにした。

「新しい倉庫を建てたんだから、壊しても良かったんだけどね。屋根を直して使おうだとか、色々意見もあってそのままになっていてね。」

一度村長宅に戻って鍵を取って来たビルさんが案内してくれることになった。
倉庫があるのは村長宅よりちょっと奥に入った所。倉庫の裏手は村の壁があってその先は森というような場所だ。

「テーブルボールやりたいっていう人達で、屋根を直すのとかどうだろう。」
「それはありだね。」

雨漏りしていてずっとほったらかされていた倉庫だから、中はカビとか生えてたりするかもしれない。
テーブルボールをする為に村の人が修繕に協力してくれたりすると良いよね。

そんな話をしながら歩いて行って、倉庫前に到着した。石造りで鍵のついた重たそうな扉がついている。

「扉がちょっと重いんですけどね。練習場として使うなら何とかした方がよいかもしれません。」

ビルさんはそう言いながら鍵を開けて、両手で扉を引っぱった。

ギギ‥‥。シュッ!

扉が少し開いたとき、扉の隙間から何かが飛び出して来た。
グイーン!リヒャルトさんが、僕を抱えて倉庫から離れた。目の端にインゴさんが,倉庫前で剣を振り下ろすのが見えた。

「早く閉めて!」

インゴさんの言葉を聞いて、ビルさんが慌てて倉庫の扉を閉めた。
倉庫の前にはあっという間に退治された数匹のオタマジャクシ魔獣が転がっていた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。  その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。  世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。  そして何故かハンターになって、王様に即位!?  この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。 注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。   R指定は念の為です。   登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。   「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。   一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。

異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか

片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生! 悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした… アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか? 痩せっぽっちの王女様奮闘記。

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分

かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。 前世の分も幸せに暮らします! 平成30年3月26日完結しました。 番外編、書くかもです。 5月9日、番外編追加しました。 小説家になろう様でも公開してます。 エブリスタ様でも公開してます。

世界樹を暴走させたマッドサイエンティスト、死刑だけは嫌だとごねる!

アメノヒセカイ
ファンタジー
カクヨムにも掲載しております。 これは世界樹の花粉を浴びて老いることがなくなったラメッタと、捨て子として騎士団に拾われ生きてきたクレーエンが、一国の英雄となり、ともに生きると決めるまでの物語である! <語句> エアデ王国:クレーエン、ラメッタが住んでいた国。 バオム国:エアデ王国の従属国。魔王軍との前線を仕切る。資源がほとんどなく、魔王軍と戦うことでエアデ王国から支援を受けている。治安が悪い。 世界樹:人々に魔法を授けている。ラメッタが研究のために魔法薬をかけてから、魔法が大幅に弱体化してしまった。 ラメッタ:見た目は子供、中身は七十八才。老いることはない。魔法薬や魔道具の開発をする。己の好奇心を満たすためだけに世界樹に魔法薬をかけたとして死刑判決が出るのだが……。なお、魔王軍と戦うことで処刑が延期される約束を国王らとしている。 クレーエン:捨て子ゆえに騎士団に拾われて育てられたものの騎士団に正式に加入できず、しかしその強さゆえに騎士団の仕事を何度も手伝っていた。自身のことを強さから騎士団で面倒を見るしかない人間と考え、厄介者であると思っているが……。 バオム国の三姫:国王である父が前線に出ているため、三人で統治しているがほぼ機能していない。 長女ディーレ、次女ベリッヒ、三女チルカ。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

世界を捨てる、5年前 〜虐げられた聖女と青年の手紙〜

ツルカ
恋愛
9歳の時に神殿に連れてこられた聖女は、家族から引き離され神に祈りを捧げて生きている。 孤独を抱えた聖女の元に、神への祈りの最中、一通の手紙が届く。不思議な男からの手紙。それは5年に渡る、彼女と彼の手紙のやり取りの始まり。 世界を超えて届く手紙は、別の世界からの手紙のようだ。 交わすやりとりの中で愛を育んでいき、そして男は言う。 必ず、助けに行くと。

処理中です...