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第7章
第370話 裏通り散歩
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「気をつけたまえ。」
ジロリとラルフ君とロルフ君を睨むように見た。小道を小柄で痩せた男性が走って来て、髭面の男性に声を駆けた。。
「ガニエル様、どうなさいましたー?」
「うむ。些細な事だ。入り口はこっちか、トリオン。」
「はいぃ~。そのようですなぁ~。いやぁ、冒険者ギルドにしては貧相な建物ですなぁ。」
「こんな田舎だ。仕方あるまい。行くぞ。」
二人の男性は、そんな事を話しながらギルド窓口のある建物の中に入って行った。
その様子をちょっと警戒気味に見つめていたラルフ君とロルフ君は、二人が建物の中に消えると,軽く肩を竦めた。
「ちょい、怒られちゃった。‥‥あの人達貴族っぽいね。」
「案内してもらいに来たのかな。」
僕達が最初の日にクラウスさん達冒険者に、滝までの道を案内してもらったことを思い出した。あの人達も滝だとかユガーランへの案内の依頼にきたのかもしれない。
「‥‥そう言えば、クラウスさん見つかったのかな‥‥。」
「崖から落ちたって話でしょ。‥‥見つかったときって‥‥。」
「でも落ちた所は誰も見てないんだよね。崖の上にクラウスさんの私物が落ちてたってだけで。」
「うん‥‥。雨も止んだし、これから捜索が進むんじゃないかな。」
話題にはしてみたものの、ちょっと気持ちが沈む。もしも、クラウスさんが崖から海に落ちていたとしたらと考えると既に何日も経っていて救出されるのは難しいような気がするし、発見されたときの事を想像すると何とも言えない気分になってしまう。
でも同時に実感がわかない感じだ。
「まあ、まだ見つかってないからね。案外、どこかに逃げちゃっただけかもしれないし。」
「逃げるの?」
「広場で婚約破棄とかしたらさ、絶対家同士で揉めるじゃん。親に怒られるかもしれないし。逃げだしたとしても不思議じゃないよ。」
「そうだねぇ。」
ちょっと希望的観測を述べながら、先程髭面の男性が出て来た小道を進んでみた。
道幅は狭いけど、小道も石畳に変わっていたのだ。
曲がりくねった小道の先に、宿の看板が見えた。髭面の人達は、この宿に滞在しているのかな。
さらに道を進むと、少し広い道と交差している所に出た。
村の人の住居とかが建ち並んでいる通りのようだった。
特に変わった建物とかは見当たらなかったけど、少し先に湯気が出ている所が見えたので行って見た。
行ってみると、側溝から湯気が立ち上っていた。
側溝を辿って別の小道を進むと、開けた場所があった。
ごつごつした岩が幾つもある。その先に柵で囲まれた場所がある。
「熱いから危険って書いてあるよ。」
柵の手前までは大丈夫かな、気をつけながら近寄って行くと、高温の温泉のようだった。
凄い湯気が出ている。
「この温泉は入れないねぇ。」
「茹で上がっちゃうよ。」
「ふふふ。」
近寄るともわっとした空気。温泉卵とか作れないかなぁ、と考えながら高温の温泉を眺めていると、トントンとギルベルト君が僕の肩を叩いた。
「ソーマ君、ねぇ、あっち‥‥。」
ギルベルト君が指し示した先には、小道の先の通りを男性と並んで歩いて行くピンクサーモン髪の令嬢の姿が見えた。一緒に歩いているのはレナードさんだ。
「‥‥。」
僕達は顔を見合わせて、そっと小道を戻って彼らの様子を見た。
後ろ姿だけど、寄り添って親密な感じに見える。
「ピンクサーモン令嬢と仲良しなのはクラウスさんだと思ってたけど。」
「ピンクサーモン‥‥、レナードさんはクラウスさんと仲が良いみたいだったし、二人でクラウスさんの事を話しているのかもよ。」
「うーん‥‥。」
キャハハ!と甲高い笑い声が通りに響く。ピンクサーモン令嬢がレナードさんに身体を寄せて腕にしがみついた。
レナードさんの笑い声も響いて来た。
「‥‥楽しそうだね。」
「クラウスさんの話じゃないみたいだね。」
状況は良くわからないけど、ちょっと微妙な気持ちになった。
彼らはクラウスさんの事心配しているのかな、と思っていたのにちょっと違うのかも。。
ジロリとラルフ君とロルフ君を睨むように見た。小道を小柄で痩せた男性が走って来て、髭面の男性に声を駆けた。。
「ガニエル様、どうなさいましたー?」
「うむ。些細な事だ。入り口はこっちか、トリオン。」
「はいぃ~。そのようですなぁ~。いやぁ、冒険者ギルドにしては貧相な建物ですなぁ。」
「こんな田舎だ。仕方あるまい。行くぞ。」
二人の男性は、そんな事を話しながらギルド窓口のある建物の中に入って行った。
その様子をちょっと警戒気味に見つめていたラルフ君とロルフ君は、二人が建物の中に消えると,軽く肩を竦めた。
「ちょい、怒られちゃった。‥‥あの人達貴族っぽいね。」
「案内してもらいに来たのかな。」
僕達が最初の日にクラウスさん達冒険者に、滝までの道を案内してもらったことを思い出した。あの人達も滝だとかユガーランへの案内の依頼にきたのかもしれない。
「‥‥そう言えば、クラウスさん見つかったのかな‥‥。」
「崖から落ちたって話でしょ。‥‥見つかったときって‥‥。」
「でも落ちた所は誰も見てないんだよね。崖の上にクラウスさんの私物が落ちてたってだけで。」
「うん‥‥。雨も止んだし、これから捜索が進むんじゃないかな。」
話題にはしてみたものの、ちょっと気持ちが沈む。もしも、クラウスさんが崖から海に落ちていたとしたらと考えると既に何日も経っていて救出されるのは難しいような気がするし、発見されたときの事を想像すると何とも言えない気分になってしまう。
でも同時に実感がわかない感じだ。
「まあ、まだ見つかってないからね。案外、どこかに逃げちゃっただけかもしれないし。」
「逃げるの?」
「広場で婚約破棄とかしたらさ、絶対家同士で揉めるじゃん。親に怒られるかもしれないし。逃げだしたとしても不思議じゃないよ。」
「そうだねぇ。」
ちょっと希望的観測を述べながら、先程髭面の男性が出て来た小道を進んでみた。
道幅は狭いけど、小道も石畳に変わっていたのだ。
曲がりくねった小道の先に、宿の看板が見えた。髭面の人達は、この宿に滞在しているのかな。
さらに道を進むと、少し広い道と交差している所に出た。
村の人の住居とかが建ち並んでいる通りのようだった。
特に変わった建物とかは見当たらなかったけど、少し先に湯気が出ている所が見えたので行って見た。
行ってみると、側溝から湯気が立ち上っていた。
側溝を辿って別の小道を進むと、開けた場所があった。
ごつごつした岩が幾つもある。その先に柵で囲まれた場所がある。
「熱いから危険って書いてあるよ。」
柵の手前までは大丈夫かな、気をつけながら近寄って行くと、高温の温泉のようだった。
凄い湯気が出ている。
「この温泉は入れないねぇ。」
「茹で上がっちゃうよ。」
「ふふふ。」
近寄るともわっとした空気。温泉卵とか作れないかなぁ、と考えながら高温の温泉を眺めていると、トントンとギルベルト君が僕の肩を叩いた。
「ソーマ君、ねぇ、あっち‥‥。」
ギルベルト君が指し示した先には、小道の先の通りを男性と並んで歩いて行くピンクサーモン髪の令嬢の姿が見えた。一緒に歩いているのはレナードさんだ。
「‥‥。」
僕達は顔を見合わせて、そっと小道を戻って彼らの様子を見た。
後ろ姿だけど、寄り添って親密な感じに見える。
「ピンクサーモン令嬢と仲良しなのはクラウスさんだと思ってたけど。」
「ピンクサーモン‥‥、レナードさんはクラウスさんと仲が良いみたいだったし、二人でクラウスさんの事を話しているのかもよ。」
「うーん‥‥。」
キャハハ!と甲高い笑い声が通りに響く。ピンクサーモン令嬢がレナードさんに身体を寄せて腕にしがみついた。
レナードさんの笑い声も響いて来た。
「‥‥楽しそうだね。」
「クラウスさんの話じゃないみたいだね。」
状況は良くわからないけど、ちょっと微妙な気持ちになった。
彼らはクラウスさんの事心配しているのかな、と思っていたのにちょっと違うのかも。。
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