自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

第7章

第360話 知り合いらしい

ニコラちゃんのお母さん達が、ガリオンさんと叔父様の方に近付いて来た。

「あの‥‥。ありがとうございました。助かりましたわ。」
「いや、これが仕事だからな！ガハハ！」

ガリオンさんが笑うと胸の筋肉とか腕の筋肉がピクピク揺れる。声の大きさにびっくりしたのかビクッと肩を撥ねさせた後、きりっと顔を引き締めてニコラちゃんのお母さんが挨拶をした。

「私、ナディア・ルフトと申します。こちらは、義姉のリシェル・マローネ。友人でリシェルの従姉妹のゼリルダ・クリューガーですわ。」
三人の夫人が膝を少し曲げて挨拶をした。

「俺はエヴァンス・ガリオンだ。冒険者ギルドのギルドマスターをしている。」
「まあ、ガリオン伯爵家の方でしたの？」
「俺は三男だけどな。」
そういって白い歯を見せて笑うガリオンさん。僕はガリオンさんの言葉を聞いて、ちょっとだけビックリした。三男ってことは、もっとゴリラなお兄さんが二人居るのかもしれない。脳内に、ゴリライケメンが三人並んで仁王立ちして豪快に笑っている映像が浮かんだ。

ガリオンさんと御婦人達との挨拶が落ち着いた頃に、叔父様が軽くお辞儀をした。

「エルスト商会のマーカスです。ナディア嬢‥‥、いやルフト子爵夫人。お久しぶり。」
「え？‥‥もしかして‥‥、マーカス様とジョス様？」
ニコラちゃんのお母さんのナディアさんがビックリして目を見開いた。叔父様やジョスさんの知り合いらしい。

叔父様は、ニッコリと微笑んだ。

「何年ぶりだろうね。」
「学園卒業以来ですわね。髪の色も違うし、すぐには判りませんでしたわ。あ、リシェルお義姉様は兄のフーゴと同級ですのよ。」
「やっぱりフーゴ先輩の奥方ですか？　フーゴ・マローネ先輩には学園でお世話になったんです。」
「まあ。主人と同じ騎士科だったのかしら。」

ニコラちゃんのお母さんは叔父様の同級生だったらしい。急に学園の話になって、御婦人達の顔が華やいだ雰囲気になった。

「なんだ知り合いだったのか。」
ガリオンさんが、叔父様達を見回して言った。叔父様が頷いた。

「ええ。昔の知り合いに会って、つい盛り上がってしまい失礼しました。」
「良いってことよ。学園っていうと俺の方がだいぶ前に卒業してそうだな。騎士科だと‥‥ヴィルヘルム・アイヴリンガーは卒業後も学園に顔を出していたらしいから
知らないか？そいつの同級なんだが。」
ガリオンさんの言葉で、ギルベルト君が「あ！」と声を出した。

「父上を知ってる人？」
ギルベルト君がそう言うとガリオンさんが大きな身体を屈めてギルベルト君の顔を覗き込んだ。

「お、もしかしてヴィルの息子か？そういや良く似てるなぁ。ガハハ。」
ガリオンさんがギルベルト君の頭の上に手を置いた。グラングランとギルベルト君の頭が揺れた。
うわー、ギルベルト君の頭が取れちゃいそうだよ。
叔父様はその様子を見てクスリと笑って、ガリオンさんに言った。

「ヴィルヘルム先輩にはお世話になりましたよ。」
「そうかそうか。」
ガリオンさんが機嫌良さそうに笑った。

カフェ裏に続くドアが開いて、冒険者が顔を覗かせた。
「ギルマス。片付け終わりましたが、オタマジャクシ魔獣は全部ギルドに運んでいいんですか？」
「ああ、頼む。」
「了解～。」

カフェの中は通らず、裏の通路から荷台に乗せてオタマジャクシ魔獣を冒険者ギルドに運んで行くらしい。
オタマジャクシ魔獣は素材にはほぼ使えないらしくて、討伐数を数えたら焼却するらしい。ぬめぬめしていて臭いらしいので、仕方ないのかな。

ガリオンさんは、討伐の後始末が終わると冒険者達と一緒にギルドに戻って行った。
僕達は、雨が小降りになるまでちょっとカフェで過ごす事にした。