自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

月野槐樹

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第7章

第353話 角サーモン大量発生

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「おう、なんだ。そこだけ優雅じゃないか。」

急に声がかけられて一瞬だけ緊張が走った。相手がガリオンさんだと判って、緊張を解く。

「ガリオンさん。こんにちは!討伐おつかれさまでした。」
「おう!」

皆で挨拶をすると、ガリオンさんが気さくな感じで手を上げて挨拶を返してくれた。
ジョスさんが簡易ベンチの席をガリオンさんに勧めた。

「おお、ありがとうよ。」
ガリオンさんがどかっとベンチに腰を下ろした。

「いやぁ。思ったより早く解決して助かったよ。村人を避難させる間もなく、領主様と騎士団が来てくれたからな。」
「村の人の避難は冒険者ギルドの仕事なんですか?」

ラルフ君が、岸辺に沢山居る冒険者と、村の住人らしき人達を見回した。

「魔獣が襲ってくるような事態になったときには、その地域のギルドは率先して行動することになっているのさ。
『依頼を受けていないから』って、昼寝しているわけにはいかんだろ。」

ジョスさんが、テーブルの上に置かれていたポットから、ホットダンレモネードをカップに注いでガリオンさんに勧めた。
ガリオンさんは小さく礼を言ってから、ホットダンレモネードを口にした。

「まあ、だから魔獣溢れ並みの事態を覚悟していたんだが、あっさり終わって今は拍子抜けしているところさ。」
髭面の顔でガリオンさんがニヤリと笑った。

「あのレイクサーペントの頭はどうなるの?」

ずっと、岸辺に飾っておくと腐っちゃうんじゃないかと、ちょっと気になって訊いて見た。

「うん?日暮れまで、あんなでかい魔獣が居たんだぞって村の人と冒険者連中に見せた後は素材にするぞ。領主様が寄贈してくれたんでな。」
「寄贈?ガリオンさんも討伐に参加したんだったら、分け前分じゃないの?」
「ガハハ、分け前だったら貰い過ぎだ。」

ガリオンさんが豪快に笑った。

ガリオンさんの話では、レイクサーペントの頭部は素材としてもかなり価値があるものなんだって。
それを父様が置いていったのは、レイクサーペントの出現で不安になっている村の人に、既に討伐済みであることと、
冒険者ギルドとエルストベルク領の騎士団にかかれば、レイクサーペントなど心配は要らないということのアピールだという。

「ダンジョンが近いから、近隣の住民はどうしても魔獣溢れの不安を抱えちまっているんでな。安心させようってわけさ。」

プニョン君ダンジョンの魔獣溢れは、多分もう起きないと思うけど。でも、プニョン君は転送池がお気に入りだから、たまーに何か転送しちゃうかもしれないね。
人が多いところは避けてねってプニョン君に言っておいたほうがいいかな。

「ギルマスー!ご相談が~!」

ガリオンさんとお茶をしながら話しをしていたら、村の冒険者ギルド窓口がある方向から誰かがガリオンさんを呼びながらかけて来た。

「おお、なんだ~?」

ガリオンさんは返事をして立ち上がった。そして僕達の方を見て、ゴリライケメンスマイル。

「お茶ごっそさん。祭りを楽しんでてくれ。」

白い歯を見せて笑って言った後、ガリオンさんを呼んでいた人の方に歩いて行った。

ガリオンさんが去って行く姿を見送った後も、僕達はお祭りを楽しんだ。角サーモン漁という小さいイベントが開催されたので参加させてもらった。

と言っても、僕達が担当するのは、角サーモンをおびき寄せるための餌を投げ入れる役だ。
ソフトボールくらいの大きさの肉の塊を、湖に投げ入れる。投げ入れた後はさっと、水際から離れる。角サーモンが肉に食いついて姿を現したら、仕留める担当の人が角サーモンにロープ付きの槍を突き立てるんだ。

チームでやると、角サーモンはそのままゲットできるので、プティのお土産の為に頑張ったよ。
リヒャルトさんとインゴさんが、交代で仕留める係をやってくれた。二人とも一発で仕留めていて歓声が上がってた。
叔父様とジョスさんは、弓矢で仕留めてた。このときも凄い盛り上がりだった。
ラルフ君とロルフ君が同時に肉の固まりを湖に投げ込んで、角サーモンが2頭出現したんだけど、叔父様は一度に2本の矢を射って、同時に仕留めてたんだ。

「何だか角サーモン、入れ食いすぎない?大量発生してないよね。」

沢山角サーモンが獲れて、嬉しかったんだけど、ギルベルト君が湖を見つめて複雑そうに呟いているのを訊いてちょっとハッとした。
まさか魔獣溢れ?プニョン君がいるし、そんなことないはずだよね。
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