自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

月野槐樹

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第7章

第349話 思い出した一件

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その後はロープのついた槍をシーサーペントの身体に突き立てて、陸地から騎士達と冒険者達が引っぱり上げる作業をしていた。
途中血の匂いに引きつけられたのか角サーモンが飛び出して来た。
スパッ!って感じで、父様の剣であっさり真っ二つになった。

「あ、角サーモン!」
「うん?」

僕はつい,映像を覗き込んでしまった。

「角サーモンって美味しいらしいんだ。」
「はは。持って帰って来てもらう様に伝えようか。」
「うーん。レイクサーペントを引っぱり上げるのだけでも大変そうだから、いいよ。」
「いいのかい?」
「レイクサーペントが居なくなったら、普通に獲れるようになるでしょ。」

僕がそう言うと叔父様はニコッと笑って僕の頭をポンポンと撫でた。

レイクサーペントが討伐された事を母様に報告したら、ほっとした様子だった。
アリサ姉様とマーリエも母様の部屋で待機していた。
マーリエが、不安そうにアリサ姉様に抱きついている。
アリサ姉様がマーリエの背中をトントンと叩いて言った。

「ほら、もう大丈夫ですってよ。だから言ったでしょう?父様はレイクサーペントなんて一発で真っ二つなんだから。」
「アリサったら。いくらなんでも一発で真っ二つなんてことはないわよ。」
アリサ姉様の言葉を母様が訂正する。

「うん。魔法付与した弩砲とかも使ってたよ。でも、最後は父様がスパッとやったよ。」
僕は、剣を振る動作をしてみせた。

「流石父様だわ。ねぇ。マーリエ。」
アリサ姉様がマーリエの顔を覗き込んだ。

「父様さすが?」
「そうよ。父様は強いんだから。」
アリサ姉様はニコニコしてマーリエの髪を撫でた。

母様とアリサ姉様には後で映像を見せる約束をしている。マーリエが怖がるから、僕達と一緒に映像を見ずに待機していたんだ。
大きい魔獣でしかも蛇と聞いてマーリエが怖がっていたんだ。マーリエは蛇が苦手なんだよね。
小さい蛇でもキャーキャー逃げ回っちゃうんだ。

でもちゃんと討伐が完了したと聞いて安心したらしい。
夕食のときには、少し久しぶりに父様と一緒に食事ができてすっかりリラックスして笑顔一杯だった。

父様達は、一晩泊まった後にすぐ領都に戻って行った。仕事が忙しいというのもあるけど、緊急で騎士達を引き連れて来たのでアタムスン村の宿とか充分に用意できていないし、更に領都がお留守になっちゃうからだって。

もしかしたら、ダンジョン鉄道で何時でもすぐ来れるからっていうのもあるのかもしれない。
叔父様とジョスさんは、アタムスン村にまだ滞在するって言ってくれた。
レイクサーペントを討伐した後の後始末や、母様の視察の手助けとかをするんだって。

*********

「へえ。足湯ね。足をお湯につけたまま、お茶をするの?面白いね。」
カフェの裏の洗濯場で足湯をした話を叔父様にしたら興味を持ってくれたみたいだった。
「うん。お洒落なカフェとかの雰囲気じゃなくてもっと気軽な感じで。‥‥ドレスを着た令嬢とかだと難しいかなって思うけど。」
「そうだね。貴族の婦人や令嬢は足を出すのは『はしたない』って考えがあるから、好まれないかもしれないね。」
「でもニコラちゃんとミリーちゃんは足湯やってみたいって言ってたよ。」
「ニコラちゃんとミリーちゃんは貴族令嬢?何歳くらい?」
「うん。マーリエと同じくらいかなぁ。」
「ああ、マーリエ位の年齢の令嬢達なら、ありかもね。友達になったの?」
「うーん‥‥。ちょっとお話ししたくらいだよ。蛙魔獣で大騒ぎになっちゃって。」
「蛙魔獣?」

叔父様に蛙魔獣の一件の話をしたら急に難しそうな顔になった。

「‥‥その子達は、何処から冬眠した蛙魔獣を見つけてきたのかな‥‥。」
「聞いてないけど‥‥。聞いた方が良い?」
「そうだね‥‥。それと、蛙魔獣の卵はどうなった?」
「え?」
「温水の用水路に流したんだよね。回収されてた?」
「え?」

蛙魔獣の卵の事考えてなかったよ。温泉で茹だってる? それとも温かくなって元気になっちゃったりする?
僕の表情を見ていたらしい叔父様が、スッと立ち上がった。

「ちょっと行ってみようか。」
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