338 / 466
第7章
第338話 湖畔でピクニック
しおりを挟む
酒場の中からは何人かの人達がガリオンさんに向かって「頼んだぞ」なんて声をかけていた。
「こっちの村の方が冒険者が多いのに、アタムスンの方にギルドの支部を作るの?」
「まあ、そういう話になっているな。」
ガリオンさんは特に理由を応えずに、ちょっと肩を竦めた。それから僕達の顔を見回して言った。
「今日はユガーランに宿を取るつもりか? こっちの宿は冒険者向けだぞ。」
「あ、湖見ようと思って遊びに来ただけです。宿はアタムスンのままで。」
「なるほど。楽しめよ!よい一日を!」
ガリオンさんはそう言って、白い歯をキラリと光らせて笑った後、通りを歩いて行った。
ガリオンさんの後ろ姿を見送ってから、僕達はお互い相談するように顔を見合わせた。
「そろそろ湖の畔に行こうか。」
「賛成!」
冒険者ギルド窓口の前を通り過ぎた先に、湖が有る方角に抜ける小道があった。小さい案内板が出ていたんだ。
ダンジョンに行くにもその道を通って行くらしい。
小道を抜けると、湖が見渡せる場所に出た。そこから左に進むとダンジョンに向かうらしくて、右に進むと、ピクニックができそうな湖畔がある。
僕達は迷わず右に進んだ。
左に進む道は、冒険者っぽい格好をした人が何人も歩いていた。湖畔に進む右の道には誰もいない。
日の光を反射してキラキラと光る湖面を眺めて歩きながらラルフ君が言った。
「こっちは冒険者の村で、アタムスンは貴族の保養地みたいになっていて全然雰囲気違うね。
湖綺麗だから、こっちにも貴族向けの施設とか作っても良さそうなのに。」
「ダンジョンがあるからじゃない?」
「だね。魔獣溢れとかあったら、ヤバいから貴族の保養地には向かないのか。」
「それは仕方ないかもね。」
ダンジョンの魔獣溢れはもう起きないと思うけど。プニョン君が張り切ってたから、ダンジョンの規模はもうちょっと大きくなるもしれない。
そうなるとやっぱりこっちの村には冒険者が更に集まってくるかもしれないよね。
「冒険者ギルドの支部をユガーランじゃなくて、アタムスンの方に作るのはなんでなんだろうね。」
ギルベルト君が言うと、ラルフ君とロルフ君がシンクロした動作で肩を竦めた。
「アタムスンの発展に力を入れようとしてるからじゃない?」
「誰が?」
「誰がって、領主様がだよ。」
「あ、父様か。‥‥母様が希望したのかも‥‥。」
「かもね。」
ガリオンさんがギルド支部の場所の事について応えなかったのって、「領主が」とは言えなかったからなのかな。
うわぁ。僕から母様に言った方がいいのかな。
状況だけ報告したら、考えてくれるかな。
「まあ、でも領主だけで決めるんじゃなくて、冒険者ギルドの本部と話し合ったりするんだと思うよ。」
「まあ、そうか。」
冒険者が多い方にギルド支部を作った方が良さそうに思ったけど、ギルド窓口はあるんだし普段はそれで用は足りてるのかもしれない。
必要ならユガーランにもギルド支部を作る事を、冒険者ギルド本部が検討するんだろう。
まあ、あまり考えても仕方ないか。
湖の畔の、広い場所に出た。ちょっとごつごつした小石が多い。ホカペを敷いただけだと、小石のでこぼこがきになっちゃうかな。
ちょっと考えて、厚めの敷き布の上にシーサーペントのホカペを敷いた上に、クッションをいくつかだして並べた。
真ん中のは、お弁当が入ったバスケット。湯沸かしセット。水は湖から汲んで来ようかと思ったけど、水質の確認とかをする手間もあるので
ひとまずはマジック財布に入れておいた水瓶の水を使う。
カップを並べて、ポットに茶葉を入れてってやっていたら、ラルフ君達が意外そうな顔をした。
「野営っぽくするのかと思った。」
「ピクニックだから。」
「お茶淹れる手際良いね。」
「そーお?」
手順とかは結構適当なんだ。カップにお茶を注いだら、リヒャルトさんとインゴさんがカップを配ってくれた。
ヒュゥと吹いて来た風で、敷いていた布がはためいた。ちょっと風除けしておこう。
ホカペの周辺に風魔法で外からの風を遮断した。
「はぁ~。ゆったり~。温かいし。」
足下のシーサーペントのホットカーペットを手で撫でて、ギルベルト君が和やかに微笑んだ。
「ね。景色良いところで、暖まりながらお茶とお弁当。いいよねぇ。」
紅茶を一口飲み、ロルフ君が湖の方を見やってホゥッと息を吐いた。
「こっちの村の方が冒険者が多いのに、アタムスンの方にギルドの支部を作るの?」
「まあ、そういう話になっているな。」
ガリオンさんは特に理由を応えずに、ちょっと肩を竦めた。それから僕達の顔を見回して言った。
「今日はユガーランに宿を取るつもりか? こっちの宿は冒険者向けだぞ。」
「あ、湖見ようと思って遊びに来ただけです。宿はアタムスンのままで。」
「なるほど。楽しめよ!よい一日を!」
ガリオンさんはそう言って、白い歯をキラリと光らせて笑った後、通りを歩いて行った。
ガリオンさんの後ろ姿を見送ってから、僕達はお互い相談するように顔を見合わせた。
「そろそろ湖の畔に行こうか。」
「賛成!」
冒険者ギルド窓口の前を通り過ぎた先に、湖が有る方角に抜ける小道があった。小さい案内板が出ていたんだ。
ダンジョンに行くにもその道を通って行くらしい。
小道を抜けると、湖が見渡せる場所に出た。そこから左に進むとダンジョンに向かうらしくて、右に進むと、ピクニックができそうな湖畔がある。
僕達は迷わず右に進んだ。
左に進む道は、冒険者っぽい格好をした人が何人も歩いていた。湖畔に進む右の道には誰もいない。
日の光を反射してキラキラと光る湖面を眺めて歩きながらラルフ君が言った。
「こっちは冒険者の村で、アタムスンは貴族の保養地みたいになっていて全然雰囲気違うね。
湖綺麗だから、こっちにも貴族向けの施設とか作っても良さそうなのに。」
「ダンジョンがあるからじゃない?」
「だね。魔獣溢れとかあったら、ヤバいから貴族の保養地には向かないのか。」
「それは仕方ないかもね。」
ダンジョンの魔獣溢れはもう起きないと思うけど。プニョン君が張り切ってたから、ダンジョンの規模はもうちょっと大きくなるもしれない。
そうなるとやっぱりこっちの村には冒険者が更に集まってくるかもしれないよね。
「冒険者ギルドの支部をユガーランじゃなくて、アタムスンの方に作るのはなんでなんだろうね。」
ギルベルト君が言うと、ラルフ君とロルフ君がシンクロした動作で肩を竦めた。
「アタムスンの発展に力を入れようとしてるからじゃない?」
「誰が?」
「誰がって、領主様がだよ。」
「あ、父様か。‥‥母様が希望したのかも‥‥。」
「かもね。」
ガリオンさんがギルド支部の場所の事について応えなかったのって、「領主が」とは言えなかったからなのかな。
うわぁ。僕から母様に言った方がいいのかな。
状況だけ報告したら、考えてくれるかな。
「まあ、でも領主だけで決めるんじゃなくて、冒険者ギルドの本部と話し合ったりするんだと思うよ。」
「まあ、そうか。」
冒険者が多い方にギルド支部を作った方が良さそうに思ったけど、ギルド窓口はあるんだし普段はそれで用は足りてるのかもしれない。
必要ならユガーランにもギルド支部を作る事を、冒険者ギルド本部が検討するんだろう。
まあ、あまり考えても仕方ないか。
湖の畔の、広い場所に出た。ちょっとごつごつした小石が多い。ホカペを敷いただけだと、小石のでこぼこがきになっちゃうかな。
ちょっと考えて、厚めの敷き布の上にシーサーペントのホカペを敷いた上に、クッションをいくつかだして並べた。
真ん中のは、お弁当が入ったバスケット。湯沸かしセット。水は湖から汲んで来ようかと思ったけど、水質の確認とかをする手間もあるので
ひとまずはマジック財布に入れておいた水瓶の水を使う。
カップを並べて、ポットに茶葉を入れてってやっていたら、ラルフ君達が意外そうな顔をした。
「野営っぽくするのかと思った。」
「ピクニックだから。」
「お茶淹れる手際良いね。」
「そーお?」
手順とかは結構適当なんだ。カップにお茶を注いだら、リヒャルトさんとインゴさんがカップを配ってくれた。
ヒュゥと吹いて来た風で、敷いていた布がはためいた。ちょっと風除けしておこう。
ホカペの周辺に風魔法で外からの風を遮断した。
「はぁ~。ゆったり~。温かいし。」
足下のシーサーペントのホットカーペットを手で撫でて、ギルベルト君が和やかに微笑んだ。
「ね。景色良いところで、暖まりながらお茶とお弁当。いいよねぇ。」
紅茶を一口飲み、ロルフ君が湖の方を見やってホゥッと息を吐いた。
2
お気に入りに追加
181
あなたにおすすめの小説
アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~
ma-no
ファンタジー
神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。
その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。
世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。
そして何故かハンターになって、王様に即位!?
この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。
注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。
R指定は念の為です。
登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。
「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。
一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。
異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか
片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生!
悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした…
アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか?
痩せっぽっちの王女様奮闘記。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

世界樹を暴走させたマッドサイエンティスト、死刑だけは嫌だとごねる!
アメノヒセカイ
ファンタジー
カクヨムにも掲載しております。
これは世界樹の花粉を浴びて老いることがなくなったラメッタと、捨て子として騎士団に拾われ生きてきたクレーエンが、一国の英雄となり、ともに生きると決めるまでの物語である!
<語句>
エアデ王国:クレーエン、ラメッタが住んでいた国。
バオム国:エアデ王国の従属国。魔王軍との前線を仕切る。資源がほとんどなく、魔王軍と戦うことでエアデ王国から支援を受けている。治安が悪い。
世界樹:人々に魔法を授けている。ラメッタが研究のために魔法薬をかけてから、魔法が大幅に弱体化してしまった。
ラメッタ:見た目は子供、中身は七十八才。老いることはない。魔法薬や魔道具の開発をする。己の好奇心を満たすためだけに世界樹に魔法薬をかけたとして死刑判決が出るのだが……。なお、魔王軍と戦うことで処刑が延期される約束を国王らとしている。
クレーエン:捨て子ゆえに騎士団に拾われて育てられたものの騎士団に正式に加入できず、しかしその強さゆえに騎士団の仕事を何度も手伝っていた。自身のことを強さから騎士団で面倒を見るしかない人間と考え、厄介者であると思っているが……。
バオム国の三姫:国王である父が前線に出ているため、三人で統治しているがほぼ機能していない。
長女ディーレ、次女ベリッヒ、三女チルカ。

世界を捨てる、5年前 〜虐げられた聖女と青年の手紙〜
ツルカ
恋愛
9歳の時に神殿に連れてこられた聖女は、家族から引き離され神に祈りを捧げて生きている。
孤独を抱えた聖女の元に、神への祈りの最中、一通の手紙が届く。不思議な男からの手紙。それは5年に渡る、彼女と彼の手紙のやり取りの始まり。
世界を超えて届く手紙は、別の世界からの手紙のようだ。
交わすやりとりの中で愛を育んでいき、そして男は言う。
必ず、助けに行くと。

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる