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第7章
第328話 証言
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ラルフ君とロルフ君がソォーッと首を伸ばして猪魔獣を確認して、顔を見合わせ、ふぅーっと息を吐いた。
「おじさん。この宿に宿泊している人ですか?」
ラルフ君が言った。
「おう!昨日から泊まってるぜ!」
キラリと白い歯を見せて笑うゴリラな男性。ロルフ君はちらっと魔獣の方を見やり、言いにくそうに言った。
「‥‥その魔獣、解体できるか宿の人に確認した方が良いと思いますよ。」
「そうなのか?」
ラルフ君とロルフ君が頷いてちらりと宿の入り口の方を見た。宿の入り口に付近に立っていた従業員らしい人が、呼ばれていると気がついたのか、こちらに向かって静かに歩いて来た。
「ガリオン様。失礼乍らお話を聞かせていただきましたが、大変申し訳ございませんが、当宿では魔獣の解体を行う事はできません。」
ゴリラな男性の前まで来た従業員の人が一礼して申し訳なさそうに言った。
「しかし、料理長は肉を持ってくれば調理してくれると言っておったぞ。」
「解体済みのお肉をご持参いただければ調理はいたしますが、生憎解体そのものを行える設備がないのでございます。」
「解体は自分で行うのだが。それでもダメなのか‥‥」
ゴリラな男性、粘っているけど‥‥。この宿みたいに貴族の泊まる宿でなくても、でかい猪魔獣の解体は場所を取るしグロイよね。
「‥‥ふん。粗野な田舎者が。」
さっきまで猪魔獣を見て固まっていたクラウスさんが復活したみたいだ。鼻で笑って、吐き捨てるように言った。
「ああん?」
ギラッとゴリラ男性の目が光った。
「ひっ!」
縮地でもしたのか一瞬のうちにクラウスさんのすぐ前まで移動して来たゴリラ男性が、クラウスさんにめちゃめちゃ至近距離まで顔を近づけた。
「坊主。粗野な田舎者とは、俺の事を言ったのか?」
「‥‥ああ!言ったさ!その通りだろうが!ここは貴族が泊まる宿だぞ!その場所でそのような野蛮な魔獣を解体しようなどと田舎者の発想でなくなんだというんだ!」
クラウスさんがメンチ切り返している。イーサンさんもエッダさんもオロオロしている。
クラウスさんの腕に引っ付いている令嬢は、クラウスさんの後ろに引っ付いて隠れていた。
ゴリラ男性は、じぃっとクラウスさんを見てからニィッと白い歯を見せて笑って、一歩離れた。
「へぇ。よい根性しているじゃねぇか。‥‥だが、さっき聞こえて来たぞ。護衛を放棄とか言ってなかったか?」
「はぁ? 関係ないだろ!」
「冒険者であれば関係なくはない。護衛放棄なんざ冒険者の恥だからな。恥!そんな恥ずかしい真似をどんな冒険者がやったのか気になるだろ。」
「‥‥。」
「なあ。同じ冒険者として気になるんだよ。教えてくれないか?その恥知らずな真似をした冒険者って誰なのか。」
ゆらゆらとゴリラ男性が、ちょっとわざとらしく視線を彷徨わせた。クラウスさんは、唇を引き結んで少し目をそらした。
そこに、クラウスさんの後ろに隠れていた令嬢がピョコンと顔を出した。
「クラウスさまは、恥知らずなんかじゃございませんわ!わたくしを助けてくれましたの!依頼を受けていた護衛を放棄してまでわたくしを助けてくださったのですよ!」
「り、リズベット‥‥。」
「ほう‥‥。護衛依頼を放棄したんだな。そして君を助けたと。」
クラウスさんは、リズベットさんにバラされてちょっと気まずそうだ。ゴリラな男性がクラウスさんをチラリと見た。
リズベットさんが少し前に出て来て更に言った。
「そうです!クラウスさまは、『前の依頼者などたいした連中ではないから別に魔獣に襲われようが食われようがどうでもよい。』とまで言ってらっしゃいましたわ。
そこまできっぱりとした意思をもって、わたくしを助けに来てくださったのです!素晴らしい方ですわ!」
「り、リズベットぉ‥‥。」
周囲のじっとりとした目がクラウスさんに向けられた。流石にクラウスさんも気まずいようだ。
「それは、本当にそう言ったのかぁ?ほんとうかなぁ?」
「おじさん。この宿に宿泊している人ですか?」
ラルフ君が言った。
「おう!昨日から泊まってるぜ!」
キラリと白い歯を見せて笑うゴリラな男性。ロルフ君はちらっと魔獣の方を見やり、言いにくそうに言った。
「‥‥その魔獣、解体できるか宿の人に確認した方が良いと思いますよ。」
「そうなのか?」
ラルフ君とロルフ君が頷いてちらりと宿の入り口の方を見た。宿の入り口に付近に立っていた従業員らしい人が、呼ばれていると気がついたのか、こちらに向かって静かに歩いて来た。
「ガリオン様。失礼乍らお話を聞かせていただきましたが、大変申し訳ございませんが、当宿では魔獣の解体を行う事はできません。」
ゴリラな男性の前まで来た従業員の人が一礼して申し訳なさそうに言った。
「しかし、料理長は肉を持ってくれば調理してくれると言っておったぞ。」
「解体済みのお肉をご持参いただければ調理はいたしますが、生憎解体そのものを行える設備がないのでございます。」
「解体は自分で行うのだが。それでもダメなのか‥‥」
ゴリラな男性、粘っているけど‥‥。この宿みたいに貴族の泊まる宿でなくても、でかい猪魔獣の解体は場所を取るしグロイよね。
「‥‥ふん。粗野な田舎者が。」
さっきまで猪魔獣を見て固まっていたクラウスさんが復活したみたいだ。鼻で笑って、吐き捨てるように言った。
「ああん?」
ギラッとゴリラ男性の目が光った。
「ひっ!」
縮地でもしたのか一瞬のうちにクラウスさんのすぐ前まで移動して来たゴリラ男性が、クラウスさんにめちゃめちゃ至近距離まで顔を近づけた。
「坊主。粗野な田舎者とは、俺の事を言ったのか?」
「‥‥ああ!言ったさ!その通りだろうが!ここは貴族が泊まる宿だぞ!その場所でそのような野蛮な魔獣を解体しようなどと田舎者の発想でなくなんだというんだ!」
クラウスさんがメンチ切り返している。イーサンさんもエッダさんもオロオロしている。
クラウスさんの腕に引っ付いている令嬢は、クラウスさんの後ろに引っ付いて隠れていた。
ゴリラ男性は、じぃっとクラウスさんを見てからニィッと白い歯を見せて笑って、一歩離れた。
「へぇ。よい根性しているじゃねぇか。‥‥だが、さっき聞こえて来たぞ。護衛を放棄とか言ってなかったか?」
「はぁ? 関係ないだろ!」
「冒険者であれば関係なくはない。護衛放棄なんざ冒険者の恥だからな。恥!そんな恥ずかしい真似をどんな冒険者がやったのか気になるだろ。」
「‥‥。」
「なあ。同じ冒険者として気になるんだよ。教えてくれないか?その恥知らずな真似をした冒険者って誰なのか。」
ゆらゆらとゴリラ男性が、ちょっとわざとらしく視線を彷徨わせた。クラウスさんは、唇を引き結んで少し目をそらした。
そこに、クラウスさんの後ろに隠れていた令嬢がピョコンと顔を出した。
「クラウスさまは、恥知らずなんかじゃございませんわ!わたくしを助けてくれましたの!依頼を受けていた護衛を放棄してまでわたくしを助けてくださったのですよ!」
「り、リズベット‥‥。」
「ほう‥‥。護衛依頼を放棄したんだな。そして君を助けたと。」
クラウスさんは、リズベットさんにバラされてちょっと気まずそうだ。ゴリラな男性がクラウスさんをチラリと見た。
リズベットさんが少し前に出て来て更に言った。
「そうです!クラウスさまは、『前の依頼者などたいした連中ではないから別に魔獣に襲われようが食われようがどうでもよい。』とまで言ってらっしゃいましたわ。
そこまできっぱりとした意思をもって、わたくしを助けに来てくださったのです!素晴らしい方ですわ!」
「り、リズベットぉ‥‥。」
周囲のじっとりとした目がクラウスさんに向けられた。流石にクラウスさんも気まずいようだ。
「それは、本当にそう言ったのかぁ?ほんとうかなぁ?」
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