自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

月野槐樹

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第7章

第326話 宿屋前での遭遇

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「他に足湯が出来る所を探そうか。」

今回の場所だって、偶々腰掛けるのにちょうど良さそうな足場もあったからお試しでやってみただけだし、足湯自体が好評なら専用の場所を作ってもらってもいいんだよね。
僕がそう言うと、ニコラちゃんがニッコリした。

「他の場所ならやってみたい!」
「わたしも!」
「あ、僕も!」
ニコラちゃんに続いて、ミリーちゃんとサミュエル君も参加表明をした。皆乗り気みたいだ。

よい足湯の場所があったら連絡するね、って話になった。
そうして彼らが泊まっている宿まで送って行った。泊まっている宿が判れば連絡できるからね。

アタムスン村は大きい村ではないけれど、貴族が泊まれるような宿があった。こじんまりとはしているけれどね。高原のペンションみたいな雰囲気のところだ。
その場所にニコラちゃん達を皆で送って行った。後から考えると結構大人数でぞろぞろと付いて行った感じだったかな。

僕達も滞在先に帰る途中だったから普通に歩いて行っただけだったんだけど、宿の前に立っていた令嬢が僕達を見てもの凄く警戒した様子だった。

「サミュエル‥‥?何?貴方達!? 何があったの?」
「エッダ嬢。彼らは送ってくれただけだよ。」

イーサンさんが前に出て来たら、エッダ嬢と呼ばれた令嬢の表情が安堵した顔に変わった。
「あら、イーサン様。‥‥ええと、一体何があったのかしら。」

考えてみたら僕達の格好って鎧をつけていない冒険者みたいなラフな格好だったんだよね。
貴族っぽい格好じゃない集団がぞろぞろと来たから何事って思ったみたいだ。

イーサンさんが蛙魔獣の一件を説明した。蛙魔獣が襲い掛かって来たと聞いたとき、エッダさんは小さく悲鳴を上げていた。

「そんな。何て事‥‥。それで、クラウスはその事を知っているのかしら?」
「カイルが先にマイルズとヤンティスを宿に連れて帰ってたから、宿にいれば伝わっていると思うけど。」
「そう‥‥。まあ、どうしましょう‥‥。わたくしの婚約者の弟がご迷惑をおかけしましたわ。ニコラちゃん、ミリーちゃんも怖かったでしょう。」

エッダさんが謝ると、サミュエル君がエッダさんの謝罪を遮るように近寄って行った。

「姉上は悪くないよ!マイルズとヤンティスが悪いんだよ。あいつらすぐ調子に乗るから!」
「でも‥‥。‥‥あ‥‥。」

眉を下げて困った顔をしていたエッダさんは、誰かが近付いてくるのに気がついて、顔を上げた。
そして、表情を強ばらせた。

「あれー?」
クラウスさんが立っていた。その隣で令嬢がクラウスさんの腕に手をかけて寄り添っていた。冒険者ギルドで見かけた令嬢だった。

「クラウス!貴方‥‥、その女性は一体どなたですの?」
「エッダ、君こそ大勢の男性と一緒にいるじゃないか。」
クラウスさんがニヤニヤして答えた。

「何ですって?」
エッダさんが眉を吊り上げた。顔を真っ赤にしている。

イーサンさんが、溜め息をついた。呆れた様子で言う。

「クラウス、サミュエルやニコラ達も一緒なんだ。それを判ってて言っているだろう。屁理屈言って巻き込むなよ。」
「ははは。」
クラウスさんが軽く笑うと,クラウスさんの隣に居た令嬢がクラウスさんの腕にぎゅーっと絡み付いた。

「クラウスさまぁ~。この方達はお友達ですの?」
「ああ、友達と‥‥知り合い‥‥?」

クラウスさんはそう言って僕達の方を見回して、急に眉をひそめた。令嬢を腕にくっつけたまま、僕達の方に近付いてくる。
スッと、インゴさんが僕達を庇う様に前に歩み出た。
クラウスさんと対峙する。
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