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第7章
第319話 白熱する審査会議
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「今インゴさんが御者をやっているのは、彼らが勝手に違う道に逸れたからだよね。案内としてダメだったからってことじゃないの?」
開きっぱなしにしていたシーサーペントの革のマップを見ながら、ロルフ君が言う。
「そもそも、なんで道を逸れたのかねぇ?」
ギルベルト君がむうぅと口を尖らせた。
確かに。インゴさんが真直ぐの道を言ってって頼んだのに、そのちょっと後に道を逸れたんだよね。頼んでからそんなに時間が経ってなかったから忘れちゃったってことはないと思うんだけど。
「‥‥道を逸れた理由はとりあえず置いておこう。行動の結果で判断するんだから。」
ラオウル君が言う。ちょっと声が低くなっている。怒ってるのかな。
あの時、道を逸れたって気がついた後、インゴさんが道を違うってクラウスさんに言ったのに聞き入れてくれなかったんだよね。「近道なんですよ」って。
あれ?近道?
今通っている道は村までの直線ルートだから最短じゃない?あっちの道にワープゾーンでもあったのかな。
「行動の結果となると、御者席に居た二人‥‥あの時はレナードさんとクラウスさんだっけ。
違う道に行くし途中でいなくなっちゃうしで、完全に未達成だと思うけどさ。‥‥カイルさんとイーサンさんはどうなるのかな。」
「パーティだから連帯責任?」
「でも、もし個別に依頼を達成か未達成か判断するとしたらどうなの? カイルさんとイーサンさんは道を逸れたりもしていないよね。」
「そういうなら、二人は御者席にいなかったから道案内自体をしていないということにならない?」
「案内自体は冒険者パーティ全体で行っている、というわけだよね。だから、実際は御者席にいなくても同行しているメンバーも依頼を遂行しているということだ。
だったら、御者席にいたパーティメンバーが案内を放棄したら同行しているメンバーも同じってことにではないかな?」
「御者役を任せていた分、責任があるということかなぁ。」
道を逸れた時の事を考えているうちに、議論が進んでいた。
ちらっと御者席の方で人影が動いた。あ、イーサンさんが僕らの様子をみて気まずそうな顔をしている。
最初はヒソヒソ話し合っていたけど、段々議論が白熱してきて声が大きくなってきちゃったよね。
なんだろう。試験を受けに行って、審査官が合否について議論しているところを聞いちゃっているみたいな感じかな。
「‥‥そうすると復路の案内は依頼未達成と考えてよいんじゃないか。じゃあ、護衛についてはどうだろう。」
「‥‥守ってもらってないよねぇ。」
ギルベルト君が腕組みをして厳しい口調で言った。あ、カイルさんもこっちを覗いている。青ざめた顔をしていた。
「実際、角狼を直接撃退してくれたのはリヒャルトさんだよね。角狼から引き離す為に馬車を動かしてくれたのはインゴさんだ。
でも、勝手に何処かに行っちゃった二人はともかく、カイルさんとイーサンさんが馬車の外でどうしていたのかは見てないからなぁ。」
「角狼から逃げたりはしていなかったと思うけど、それだけでいいの?」
「僕達無傷でしょう? 護衛対象に怪我させたわけでもないよね。」
「でも、リヒャルトさんとインゴさんも護衛対象だよね。護衛対象を戦わせていいの?」
「助けてって頼んだりもしていないと思う。護衛対象が勝手に戦ったってことになるのかな。」
「それは、そうしないと危なかったからじゃない? そもそもインゴさんが御者席に行ったのは馬車が危険な方の道に進んでたからだよね。」
「では、道を逸れて危険に晒したという行為が、護衛任務を阻害する要因となっていると考えられるのでは。
そうなると先程の議論で、パーティメンバーに御者を任せた責任というところに戻ってくる。」
「護衛任務を放棄したわけではないけど、自分達では戦いきれないような状況に至らせた責任はあるってことかな。」
議論を続けていたら、御者席の方から「わーっ」っと泣くような声が聞こえた。見ると、インゴさんが片手で御者席の窓を閉めるところだった。
窓が閉まる直前、カイルさんの泣き顔がちらりと見えた。あ、インゴさんは目元だけちょっと笑ってた気がする。パッと見無表情っぽくしてたけど、普段一緒にいると判る感じ。
開きっぱなしにしていたシーサーペントの革のマップを見ながら、ロルフ君が言う。
「そもそも、なんで道を逸れたのかねぇ?」
ギルベルト君がむうぅと口を尖らせた。
確かに。インゴさんが真直ぐの道を言ってって頼んだのに、そのちょっと後に道を逸れたんだよね。頼んでからそんなに時間が経ってなかったから忘れちゃったってことはないと思うんだけど。
「‥‥道を逸れた理由はとりあえず置いておこう。行動の結果で判断するんだから。」
ラオウル君が言う。ちょっと声が低くなっている。怒ってるのかな。
あの時、道を逸れたって気がついた後、インゴさんが道を違うってクラウスさんに言ったのに聞き入れてくれなかったんだよね。「近道なんですよ」って。
あれ?近道?
今通っている道は村までの直線ルートだから最短じゃない?あっちの道にワープゾーンでもあったのかな。
「行動の結果となると、御者席に居た二人‥‥あの時はレナードさんとクラウスさんだっけ。
違う道に行くし途中でいなくなっちゃうしで、完全に未達成だと思うけどさ。‥‥カイルさんとイーサンさんはどうなるのかな。」
「パーティだから連帯責任?」
「でも、もし個別に依頼を達成か未達成か判断するとしたらどうなの? カイルさんとイーサンさんは道を逸れたりもしていないよね。」
「そういうなら、二人は御者席にいなかったから道案内自体をしていないということにならない?」
「案内自体は冒険者パーティ全体で行っている、というわけだよね。だから、実際は御者席にいなくても同行しているメンバーも依頼を遂行しているということだ。
だったら、御者席にいたパーティメンバーが案内を放棄したら同行しているメンバーも同じってことにではないかな?」
「御者役を任せていた分、責任があるということかなぁ。」
道を逸れた時の事を考えているうちに、議論が進んでいた。
ちらっと御者席の方で人影が動いた。あ、イーサンさんが僕らの様子をみて気まずそうな顔をしている。
最初はヒソヒソ話し合っていたけど、段々議論が白熱してきて声が大きくなってきちゃったよね。
なんだろう。試験を受けに行って、審査官が合否について議論しているところを聞いちゃっているみたいな感じかな。
「‥‥そうすると復路の案内は依頼未達成と考えてよいんじゃないか。じゃあ、護衛についてはどうだろう。」
「‥‥守ってもらってないよねぇ。」
ギルベルト君が腕組みをして厳しい口調で言った。あ、カイルさんもこっちを覗いている。青ざめた顔をしていた。
「実際、角狼を直接撃退してくれたのはリヒャルトさんだよね。角狼から引き離す為に馬車を動かしてくれたのはインゴさんだ。
でも、勝手に何処かに行っちゃった二人はともかく、カイルさんとイーサンさんが馬車の外でどうしていたのかは見てないからなぁ。」
「角狼から逃げたりはしていなかったと思うけど、それだけでいいの?」
「僕達無傷でしょう? 護衛対象に怪我させたわけでもないよね。」
「でも、リヒャルトさんとインゴさんも護衛対象だよね。護衛対象を戦わせていいの?」
「助けてって頼んだりもしていないと思う。護衛対象が勝手に戦ったってことになるのかな。」
「それは、そうしないと危なかったからじゃない? そもそもインゴさんが御者席に行ったのは馬車が危険な方の道に進んでたからだよね。」
「では、道を逸れて危険に晒したという行為が、護衛任務を阻害する要因となっていると考えられるのでは。
そうなると先程の議論で、パーティメンバーに御者を任せた責任というところに戻ってくる。」
「護衛任務を放棄したわけではないけど、自分達では戦いきれないような状況に至らせた責任はあるってことかな。」
議論を続けていたら、御者席の方から「わーっ」っと泣くような声が聞こえた。見ると、インゴさんが片手で御者席の窓を閉めるところだった。
窓が閉まる直前、カイルさんの泣き顔がちらりと見えた。あ、インゴさんは目元だけちょっと笑ってた気がする。パッと見無表情っぽくしてたけど、普段一緒にいると判る感じ。
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