自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

月野槐樹

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第6章

第285話 意外な人物が‥‥

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次の瞬間、すっと僕のお腹に腕が回ったと思ったら、視界が揺れた。叔父様に抱えられるようにしてピューッと移動して個室に戻った。

「危ない危ない。こちらに矛先が向かうところだったよ。」

叔父様が苦笑した。そうだったのか。あの令嬢に絡まれてもちょっと困るよね。

一度個室に入ったけど、キーランド君達の状況が気になる。
ダメ元で叔父様に相談してみることにした。

「ねえ、叔父様。キーランド君達のお話聞きにいっちゃだめかな。」
「そうだね‥‥。緊急依頼をだしたのはこっちだし‥‥、行ってみようか。」

意外とあっさり叔父様が賛成してくれて個室を出た。窓口前のフロアを経由しない何か別の通路があるらしい。ちょっと細い通路を通っていったら「ギルド長室」と扉に書かれた部屋に辿り着いた。

ジョスさんがノックをした。ロトヴィックさんの返事をする声が聞こえた。
ジョスさんがドアを少し開けて、ロトヴィックさんと何か話していた。ドア越しにロトヴィックさんがちらりと僕達の事をみた。
僕の事を見て、ロトヴィックさんがちょっと困った顔をした。

「子供が聞く話ではないんだが‥‥。まあ友達の事だから気になるのか‥‥。」

なにやらブツブツ言って、結局部屋に通してくれた。
ギルド長室の窓際に大きな執務机があって、その前に長椅子が向き合っておかれていた。そこにクリフォードさん達が座っていた。
バルドリック君はフォンゾさんにまだしがみついている。キーランド君は握った拳を両膝に乗せて、俯いていた。
クリフォードさんが僕達を見て会釈した。

「大勢で押し掛けて済まないね。状況が気になってね。」

叔父様が言うと、クリフォードさんが眉を下げた。

「ご心配をおかけして済みません。今、キーランド達から話を聞いていたところです。
‥‥ソーマ君からもらったストラップチャームを、奪われてテッサが追いかけていってしまったんだそうです。」
「ストラップチャームを?」

クリフォードさんの言葉に僕はビックリして聞き返してしまった。
僕があげたストラップが原因になってるの?
クリフォードさんが頷いて続けた。

「キーランドとバルドリックは、テッサを追いかけて走っていたらしいんですが、途中で転んで逸れたそうで‥‥。
丈の高い草が多い草原だったので、自分達も迷ってしまったと‥‥。」

「うわ。僕がストラップあげたせいなの。ごめんなさい。」
「いやいや。奪う方が悪いのであって、ソーマ君は何も悪くないよ。」

僕が謝ったらクリフォードさんはそういってくれた。でも、ちょっと責任感じちゃうよ。

キーランド君が顔をあげた。目が真っ赤だ。ちょっと元気がない口調で話し始めた。

「あのストラップチャーム。猫の絵がついていてテッサが気に入っていてさ。目立つ場所につけてたんだよ。肩の、紐と押すとこ。」

キーランド君が自分が着ている赤い革鎧の肩部分を指さした。肩の部分に紐を通す用の穴があいていてそこにチャームの紐を通して身に付けていたらしい。

「『お祈りすると、素早さや力がアップするんだから!』ってやたらそういいながらテッサが祈りまくってたんだ。そうしたら突然『それは私に寄越しなさい!平民にはもったいないわ!』って、奪われて‥‥。」
「平民?」

どっかで最近聞いたぞ?

「うん。あのやたら偉そうに『平民!平民!』ってうるさい女の子」

はあ~!?それって‥‥。
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