自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

月野槐樹

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第6章

第257話 やばい機能の手帳

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振り向くと、僕達の一番後ろを歩いていたラオウル君が少し沈んだ様子立っていた。

「あの‥‥すみませんでした。俺の依頼報告につきあってもらったせいで、あんな状況に巻き込んでお時間も取らせてしまって。」

ラオウル君がぺこりと頭を下げた。えー?ラオウル君が謝る必要って全然ないよね。

「ラオウル君のせいじゃないじゃん。」
「そうだよ。そもそも他領の貴族の対応は領主家も無関係じゃないんだから、ラオウル君よりこっちの方が関係者なんだよ。」
「ほんと、よく有る事だから。全然君のせいじゃないし。」

申し訳なさそうにしているラオウル君。叔父様とジョスさんが背中をポンポンと叩いた。
僕もラオウル君に駆け寄って、ラオウル君の手を取った。

「ラオウル君、あのね。僕達、あの四人が揉めてるの見るの今日2回目なんだよ。」
「え?」
「すごくない?多分、他でも揉めてるんだと思う。だから気にするだけ損だよ。」
「あ、う、うん。」
「行こう。早く渡したいんだ。」

ラオウル君に気にしないで欲しくて、ぐいぐいと少し強引に手を引っ張ってみた。
フフっと叔父様が笑う。

「今日2回目ってすごいよな。そこまで小さい街でもないのに。」
「また会ったりして。」
「ジョス、そう言う事いうと、本当になるから。」

ワイワイいいながら商会へと向かった。

商会の商談室でラオウル君に手帳君を渡した。ちゃんとグループチャット機能がついたバージョンアップ版だ。
使い方を説明したら、ラオウル君がビックリして手帳君をテーブルの上に置いて後ずさった。

「絶対凄い値段だろうこれ!払えないよ、俺。」
「非売品だよ。ラオウル君は正規冒険者登録したでしょう。危険な事が多いと思うから、持っていてもらいたいんだよ。」
「でも‥‥。」
「持ってて。これ使って色々改良してるところだから。使ってみて感想を聞かせて欲しいよ。」

僕が手帳君をラオウル君の方に押し出したら、ラオウル君はじっと手帳君を見つめて頷いた。

「‥‥わかった‥‥。」
「良かった。早速使ってみてね。」

その場に居た全員とアドレス交換をしてグループ機能も試してもらった。ラオウル君は試しながらも落ち着かない様子だ。

「これ、絶対他の人に知られたらまずいやつだろう。」
「そうかも。でもパッと見は手帳でしょ。」
「気軽すぎるよ!」

ブツブツ言いながらも使ってみてくれる。

僕は手帳君の頁の内容が更新されていくのを横目で確認しながら、余分に買って来た細身のリボンを弄っていた。
プティちゃんグッズの新作チャームの販促品というやつを沢山貰ったので、それにリボンを結びつけてみている。
チャームは色とりどりの小さい猫型でフックがついていて紐に付ける事ができるようになっているものだ。
冒険者が冒険者証を首からぶら下げた時、紐にチャームをつけたりして使う想定なんだって。
「プティちゃんお願い」と言って魔力を通すと、一時的に少しだけ腕力があがったり、敏捷になったりするランダム効果がついている。

リボンでストラップ状にして魔力ペンの柄にくっつけてみた。
なかなか良い感じだ。
チャームに付いている魔石に位置情報を発信する効果を追加してみた。もしも魔力ペンを落としちゃっても安心だね。
ついでに残りのチャームにも同じ効果を付けておこう。
チャームをぶら下げるならリボンより刺繍糸で組紐を作った方が丈夫そうでいいかもしれない。後でつくってみようっと。
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