自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

第6章

第256話 ギルマスの威圧

ケン様達と令嬢達に冒険者証が渡された。
彼らは冒険者証を受け取ったまだ何か言って揉めている。二つの窓口が彼らの対応で埋まっている状態だ。
彼らの事を避ける目的か、他の冒険者達への対応は彼らから一番遠い窓口だけでやっているようだった。ラオウル君もようやく番号を呼ばれて窓口に向かって行った。

ラオウル君が依頼達成報告の手続きを終えて僕達の方に戻って来た時、ギルドのドアが開いた。見た事のある人物が入って来た。

「あ、ロトヴィックさんだ。」

僕の声が聞こえたのかロトヴィックさんがこちらを振り向いた。
ロトヴィックさんは目を見開いた後に手を上げた。こちらに向かって歩いてくる。

「やあ。ケニーの弟君は講習会か？」
「こんにちは。ソーマです。講習会は明日です。今日はラオウル君について来ただけ。」

僕がそう言うとロトヴィックさんはラオウル君の方をちらりと見た。ラオウル君がちょっと緊張した様子でロトヴィックさんにお辞儀をした。
ロトヴィックさんは目を細めて笑みを浮かべた後、叔父様に目を向けた。

「マーカスは久しぶりだな。何時こっちに戻って来たんだ？」
「昨日だよ。ご無沙汰だったね。」
「昨日か。ずっとこっちに？」
「いや、少ししたら、あちこち行く予定だよ。‥‥それよりあっち‥‥、まだ揉めているけどいいの？その為に呼び戻されたんでしょ。」

叔父様とロトヴィックさんは結構親しいみたいだ。軽い感じで言葉を交わしている。

「何があった？貴族のご子息ご令嬢が来て騒いでるとしか聞いてないんだが。」
「窓口の仕組みやらランクの件で揉めた後、さっき登録が完了したようだよ。まだ揉めている理由は何かわからない。ああ、姉妹の令嬢はルフラン子爵令嬢。
男の方はエルスラント子爵令息。赤いコートのはズーデンの男爵令嬢らしい。」
「詳しいな。もしかして知り合いか？」
「会話が聞こえただけだよ。」
「そうか。情報ありがとうな。」

ロトヴィックさんはそう言うとフロアにいるギルド職員に近づいて行った。職員と少し会話をした後、窓口前で揉めている令息令嬢達と話に行ったようだ。
あれ？さっきケン様の家名って言ってたっけ？　調査済みってこと？
ロトヴィックさんが彼らに話しかけたら途端に彼らが大人しくなった。
少し会話をした後、彼らは静かにギルドを出て行った。

パタン、とドアが閉まった後ふぅっとあちこちから溜め息が漏れた。
皆、貴族との揉め事を警戒して緊張していたらしい。

「お騒がせだったな。窓口処理が滞って済まない。今から窓口対応職員増やすからな。」

ギルドマスターの言葉で、ギルド内に活気が戻っていった。


「すごいね。ロトヴィックさんって。あっという間にあの人達を帰らせちゃった。」

冒険者ギルドから出て通りを歩きながら僕は感心して言った。

「威圧つかってたね。戦闘経験がない子達にはきついだろうな。」

叔父様は微笑みながら言う。
へえ、威圧ってどんなだろう。睨みつけたりとかかな。ロトヴィックさん怒ったら怖そうだよね。

「あ、あの！」

ロトヴィックさんの怒り顔を想像しながら歩いていたら後ろから声がかかった。