自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

月野槐樹

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第6章

第255話 真似しちゃだめなやつ

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「番号札をお持ちでない方はご案内はできません。」

番号札窓口の職員の表情はさっきから固まったままに見える。

「ケン様ぁ~。私達だけで依頼をうけましょうよ。」
「そうだね。ルイーサ。」

ケン様とルイーサ嬢は依頼票の掲示板の前に並んで立っていて、仲良く依頼を吟味始めたようだ。二人の声を聞いて、キィッとベルティーナ嬢が振り向いた。
そしてグググと不自然な動きで腕を伸ばし、親指と人差し指の指の先で番号札をつまみ上げた。凄く嫌そう。

「順番にご案内しますのでお待ち下さい。」

窓口の職員の笑顔が深くなった。


「はあ?依頼が受けられないとはどういうことなんだ。」

彼らの番号札の番号はすぐに呼ばれた。ラオウル君より先だった。
早く対応を終わらせたかったのかもしれない。
番号を呼ばれてケン様とルイーサ嬢が窓口に向かった。ルイーサ嬢はまだ番号が呼ばれていない姉妹を振り返って、得意げに笑みを浮かべていた。
そしてケン様が窓口に依頼票らしき紙を出した。しかし依頼を受ける事ができなかったようだ。

「冒険者ギルドのご登録がないということでしたので、ご登録からのお手続きとなります。
新規のご登録ですのでランクは石級からです。お持ちになったご依頼票のランクは鉄ランクのものですので、お受けになられることはできません。」
「ではランクを上げてくれないか?」

クスッと誰かが笑う声が漏れた。ギルド内で彼らに注目が集まっていた。
別の窓口では淡々と他の冒険者の対応が勧められていたけど。

「実績がなければランクを上げることはできません。」
「俺は強いはずだ。この春、王都の貴族学園に入学するんだぞ。」
「そうよ。ケン様はお強いのよ!」

貴族学園に入学するというから貴族なのだとはわかるけど、それと強いのは関係ないんじゃないかな。
僕は叔父様と一緒に離れた位置のベンチに腰を下ろして様子を見ていた。
ラオウル君も困った様子で番号札を握ったまま立っている。
リヒャルトさんがどこかに行っていたと思ったら戻って来て、小声で叔父様に言った。

「ギルド長は外出中のようです。今魔鷹を飛ばして連絡したそうです。」
「そう。タイミング悪いね。」

叔父様は僕の方を見て僕の頭をポンポンと撫でた。

「ソーマ、ごめんね。しばらくここに居よう。」
「うん?僕は平気だけど? ラオウル君のお手続きもまだだし待っているよ。ラオウル君のお手続きが終わってもここに居ないといけないことがあるの?」
「ギルド長が戻ってくるまではね。それまでに収まれば問題ないんだけど。ここは領内だから‥‥。」

領内で他領の貴族が問題を起こしそうなので様子をみることにしたらしい。

「最近、ああいうの多いみたいです。ギルド職員も動じてないみたいですから大丈夫でしょう。」

ジョスさんはそう言うとちょっと悪戯っぽい顔をして、しゃがんで僕に話しかけた。

「ソーマ君はあーいうお兄さん達のことを真似しちゃだめだよ。」
「真似しないよー。」
「だよねー。あ、登録始めたね。」

ジョスさんに言われて窓口の方を見ると、ルフラン姉妹も窓口に呼ばれて手続きをしていた。令嬢達は何か色々文句を言っているみたいに見えるけど、
ギルド職員は淡々と書類を出したり、ペンを差し出してサインを促したりしていた。
令嬢達はぶつぶつ言いながら書類にサインをしていた。
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