自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

月野槐樹

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第6章

第242話 支店直通便計画

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エルスト商会の支店は他の領の大きな街以外に、エルストベルク領の西側と北側にもあるようだ。エルストベルクの地形は逆L字型なので中央の角が本店で西と北に伸びた両端の位置に支店がある形だ。
他の領にも支店が5カ所ある。一つはツヴァイトベック領。ラルフ君達の家のあるところだ。

「結構沢山あるんだね。」

僕が感心して言うと、ジョスさんがフフフと笑った。

「おかげさまで大忙しです。」

支店に運ぶ商品は元々本店の工房で作って配送していたらしい。でも支店が増えたことと本店からの輸送距離が長いということで、王都にも工房を作って王都の方が近い支店へは王都から送るようにしたんだって。それで王都の支店や工房を整える為に叔父様は王都に行っていたんだって。

僕はじっと地図を見つめた。ペンをもう一本取り出してエルストベルクと王都を結ぶ曲線を描く。そして線の上に丸を描いた。
ダンジョン鉄道の駅の位置だ。あ、駅って言っても地上に出るところ考えてなかった。
3箇所くらい支店に近い位置に駅がある。

「ソーマ、この線は‥‥もしかして?」

叔父様は何の線かすぐ気がついたみたいだ。昨日乗って来たものね。

「ここがドニーニャ駅、こっちがタッソ駅。あとアルディ駅も近いんだけど‥‥。出口ないんだ。ねえ、商会に繋げても大丈夫?」

僕がそう言うと叔父様はじっと地図を覗き込んだ。ジョスさんはよく判らないという様子で首を傾げた。

「何の話?」
「あのね。この線の上は早く通れるんだ。でも出口がないの。」
「出口?」

ジョスさんにはダンジョン鉄道の事話してないのかな。どうやって説明しようかと考えながら僕は叔父様を見た。

「セキュリティを考えるなら倉庫を準備して繋げるのが無難かな。現地に行って倉庫を準備しないと行けないけど。いや、領門を通らずに入るのはまずいか‥‥?」

叔父様がぶつぶつと呟いている。

「ソーマ、出口は場所さえ有れば簡単に作れるの?」
「作れる場所と作れない場所があるよ。この駅の辺りは大体大丈夫。」
「簡単ってどのくらい?」
「穴と階段くらいなら四半刻くらいかな。綺麗にするにはちょっと時間がかかるけど。」
「そんなに早くできるのか。ちょっと見てみたいな。」
「今から行く?」
「いや、今日は街歩きの予定だよね。」

僕と叔父様がしゃべっていると、ジョスさんは黙って聞いていてくれたけど少し眉が下がってきていた。判らない話しちゃってごめんなさい。

「叔父様、ジョスさんに説明したいよ。見てもらった方が早いよね。」

ね?とジョスさんを見ると、ジョスさんがフフフと微笑んだ。

「ソーマ君、気を遣ってくれてありがとう。でも予定を変更までしなくて大丈夫だよ。」
「ジョスさん優しい。ねえ、叔父様、行って戻るだけなら午前中だけで行けるよ。」

僕はジョスさんと叔父様を交互に見た。
叔父様は腕を組んで「ふむ」と考えて、ジョスさんの方を見た。

「ジョス、ソーマに懐かれてるなぁ。」
「ソーマ君とは仲良しですよ。ねえ、ソーマ君。」

ね!とジョスさんと僕で頷き合う。あ、ジョスさんにも手帳君を渡したいな。
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