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第6章
第241話 魔力ペンと消しゴム
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ソファーに案内されて叔父様と並んで座った。リヒャルトさんとインゴさんもソファーに座るように勧められている。
「お茶入れるから座ってね。」
座るのを遠慮しようとするリヒャルトさんとインゴさんにそう言うとジョスさんはお茶の準備を始めた。
「座ってなよ。ジョスのお茶は美味いから。」
叔父様にも座るように勧められて、リヒャルトさんとインゴさんはソファに浅く腰を下ろした。
「魔獣溢れが落ち着いたからですかね。こっちも客足が増えていますよ。」
「冬越の客も増える頃だよな。」
「そうですねぇ。最近ぐっと貴族と貴族家の使用人のお客様の割合が増えましたね。」
「トラブルはないか?」
「まあ、大きいものはないのは報告済みですけど‥‥。」
叔父様と話しながら、テキパキとお茶を淹れて行くジョスさん。トレーにお茶のセットとお菓子を乗せてきてテーブルに並べた。
チョコレートがかかった小さいパウンドケーキとミルクティーだ。
全員分の紅茶を注ぎ終わると、一人用のソファーに腰を降ろした。
少し濃いめに淹れた紅茶に温めたミルク。一口飲むとじんわりお腹の中が温まる。
少しビターなチョコレートとしっとりしたバター風味の生地のケーキととっても合う。
「美味しい!」
「それは良かった!」
ケーキをひとかけら食べた後にミルクティを一口飲んで思わずそう言うと、ジョスさんがニコリと微笑んでカップを手にした。
ジョスさんは叔父様の従者をしていて、通常は叔父様と一緒に行動をするらしいんだけど、叔父様が王都の店舗に行っている間は領都のお店を任されているんだそうだ。
「最初2~3ヶ月って話だったのに、もう一年以上ですよ。王都の店舗、ヘンリーに任せたらいいんじゃないですか?」
「いや、ヘンリーには無理だろ‥‥。王都はユリアに頼んだよ。」
「じゃあ、こっちに戻ってくるんですか?」
「ああ、暫くは。」
「暫くって‥‥。次はちゃんと連れて行ってくださいよ。」
「わかった、わかった。」
叔父様は、エルストベルクに戻ってくる予定らしい。それなら沢山会えるようになるかな。でも暫くの間って行った?どこかに行っちゃうの?
叔父様とジョスさんの会話に耳を傾けながら、じっと叔父様を見つめた。
叔父様が僕の視線に気がついたのか、僕の方を見て微笑んだ。
「ソーマ、どうしたの?」
「叔父様‥‥暫くの後、どこかに行っちゃうの?」
「ああ‥‥、支店を回ったり、次の支店候補地を見に行ったりするんだよ。」
魔獣の溢れがあって行っていなかった商会の支店の状況を確認に行く予定なんだそうだ。
移動って馬車だと何日もかかるよね。移動して何日も滞在して、別の支店に何日かかけて行って‥‥ってしていたら長い間会えなくなっちゃう?
「‥‥叔父様、どこに行く予定か教えて。」
マジック財布から地図を取り出す。ダンジョンの位置とかは描いていないけど,王国全体の地図だ。
「うわ!この地図、凄く細かいですね。」
地図を覗き込んだジョスさんが感心した声を上げる。あ、さりげなくお茶のポットとお菓子のお皿を移動してくれていた。ごめんなさい。
地図には王国内の各領地の名前、領境、大きい街の名前、山、河川までは表示しているんだ。これで大体の位置は判るはず。
「商会の支店の位置は、ここと、ここと‥‥。」
叔父様が地図を指で指し示してくれた。僕はマジック財布からペンを取り出して差し出した。手帳君に使っているペンだ。
「これで描いて。」
「え、描き込んでしまっていいのかい?」
「消せるし大丈夫。」
ペンに名前をつけてなかったけど、魔力に反応して魔力インクが出るようになっているから、魔力ペン君でいいかな。
魔力インクは魔力消しゴムで消せるんだ。
「ちょ、これ何?新商品ですか?」
ジョスさんが叔父様の手の中にあるペンを覗き込んでいる。もう一本出して、紙と一緒にジョスさんに差し出した。
「試し書きして。」
ジョスさんは僕からペンと紙を受け取ると、丸を一つ描いた。
「うわ。良い書き味ですね!サラサラ。この紙もやけにすべすべしてますね。」
紙まで褒められちゃった。魔力消しゴムも試してもらおう。
「何?何?擦るの?え?消えた!」
「魔力消しゴムは、魔力インクを吸収するんだよ。だから普通のインクは消せないんだ。」
僕が説明をすると、ジョスさんは僕にニコリと笑いかけた後、叔父様に目を向けた。
「マーカス様。これ本店に届いてないですよね。」
「ないな。まだ売るとも決まってない。ペンは最近見たばかりだし、魔力消しゴムは今初めてみた。」
「はあ?また、ソーマ君の発明なんですか?もう~天才!絶対売れますよこれ。売り出し検討しましょうよ。」
「それは後でな。今は支店の位置だろう?」
叔父様は念の為なのか地図の一番端に魔力ペン君で小さい点を描いて、その点の上を魔力消しゴムでなぞった。すっと地図の上に描いた点が消える。
それを確認してから、地図上の街のいくつかに丸い印をつけた。
「お茶入れるから座ってね。」
座るのを遠慮しようとするリヒャルトさんとインゴさんにそう言うとジョスさんはお茶の準備を始めた。
「座ってなよ。ジョスのお茶は美味いから。」
叔父様にも座るように勧められて、リヒャルトさんとインゴさんはソファに浅く腰を下ろした。
「魔獣溢れが落ち着いたからですかね。こっちも客足が増えていますよ。」
「冬越の客も増える頃だよな。」
「そうですねぇ。最近ぐっと貴族と貴族家の使用人のお客様の割合が増えましたね。」
「トラブルはないか?」
「まあ、大きいものはないのは報告済みですけど‥‥。」
叔父様と話しながら、テキパキとお茶を淹れて行くジョスさん。トレーにお茶のセットとお菓子を乗せてきてテーブルに並べた。
チョコレートがかかった小さいパウンドケーキとミルクティーだ。
全員分の紅茶を注ぎ終わると、一人用のソファーに腰を降ろした。
少し濃いめに淹れた紅茶に温めたミルク。一口飲むとじんわりお腹の中が温まる。
少しビターなチョコレートとしっとりしたバター風味の生地のケーキととっても合う。
「美味しい!」
「それは良かった!」
ケーキをひとかけら食べた後にミルクティを一口飲んで思わずそう言うと、ジョスさんがニコリと微笑んでカップを手にした。
ジョスさんは叔父様の従者をしていて、通常は叔父様と一緒に行動をするらしいんだけど、叔父様が王都の店舗に行っている間は領都のお店を任されているんだそうだ。
「最初2~3ヶ月って話だったのに、もう一年以上ですよ。王都の店舗、ヘンリーに任せたらいいんじゃないですか?」
「いや、ヘンリーには無理だろ‥‥。王都はユリアに頼んだよ。」
「じゃあ、こっちに戻ってくるんですか?」
「ああ、暫くは。」
「暫くって‥‥。次はちゃんと連れて行ってくださいよ。」
「わかった、わかった。」
叔父様は、エルストベルクに戻ってくる予定らしい。それなら沢山会えるようになるかな。でも暫くの間って行った?どこかに行っちゃうの?
叔父様とジョスさんの会話に耳を傾けながら、じっと叔父様を見つめた。
叔父様が僕の視線に気がついたのか、僕の方を見て微笑んだ。
「ソーマ、どうしたの?」
「叔父様‥‥暫くの後、どこかに行っちゃうの?」
「ああ‥‥、支店を回ったり、次の支店候補地を見に行ったりするんだよ。」
魔獣の溢れがあって行っていなかった商会の支店の状況を確認に行く予定なんだそうだ。
移動って馬車だと何日もかかるよね。移動して何日も滞在して、別の支店に何日かかけて行って‥‥ってしていたら長い間会えなくなっちゃう?
「‥‥叔父様、どこに行く予定か教えて。」
マジック財布から地図を取り出す。ダンジョンの位置とかは描いていないけど,王国全体の地図だ。
「うわ!この地図、凄く細かいですね。」
地図を覗き込んだジョスさんが感心した声を上げる。あ、さりげなくお茶のポットとお菓子のお皿を移動してくれていた。ごめんなさい。
地図には王国内の各領地の名前、領境、大きい街の名前、山、河川までは表示しているんだ。これで大体の位置は判るはず。
「商会の支店の位置は、ここと、ここと‥‥。」
叔父様が地図を指で指し示してくれた。僕はマジック財布からペンを取り出して差し出した。手帳君に使っているペンだ。
「これで描いて。」
「え、描き込んでしまっていいのかい?」
「消せるし大丈夫。」
ペンに名前をつけてなかったけど、魔力に反応して魔力インクが出るようになっているから、魔力ペン君でいいかな。
魔力インクは魔力消しゴムで消せるんだ。
「ちょ、これ何?新商品ですか?」
ジョスさんが叔父様の手の中にあるペンを覗き込んでいる。もう一本出して、紙と一緒にジョスさんに差し出した。
「試し書きして。」
ジョスさんは僕からペンと紙を受け取ると、丸を一つ描いた。
「うわ。良い書き味ですね!サラサラ。この紙もやけにすべすべしてますね。」
紙まで褒められちゃった。魔力消しゴムも試してもらおう。
「何?何?擦るの?え?消えた!」
「魔力消しゴムは、魔力インクを吸収するんだよ。だから普通のインクは消せないんだ。」
僕が説明をすると、ジョスさんは僕にニコリと笑いかけた後、叔父様に目を向けた。
「マーカス様。これ本店に届いてないですよね。」
「ないな。まだ売るとも決まってない。ペンは最近見たばかりだし、魔力消しゴムは今初めてみた。」
「はあ?また、ソーマ君の発明なんですか?もう~天才!絶対売れますよこれ。売り出し検討しましょうよ。」
「それは後でな。今は支店の位置だろう?」
叔父様は念の為なのか地図の一番端に魔力ペン君で小さい点を描いて、その点の上を魔力消しゴムでなぞった。すっと地図の上に描いた点が消える。
それを確認してから、地図上の街のいくつかに丸い印をつけた。
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