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第6章
第231話 教会の中
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どう対応しようかちょっと迷っていると、ベルティーナ嬢が冷ややかな表情のまま「ふん」と顔を背けた。そしてスタスタと外に出て行った。
「あ、お姉様!」
エルシャ嬢が後を追いかけて行く。出て行く直前に、もう一度僕達をギロリと睨んだ。パタンと扉が閉まった後は教会内が静かになった。
ほっとして安堵の息を吐いたけど、その後すぐ外で小さい悲鳴が聞こえてきた。
さっとリヒャルトさんとインゴさんが動きだす。リヒャルトさんは僕を庇う様に移動し、インゴさんは外の様子を見に扉の方に向かって行った。
パタン。扉を少し開けて外の様子を見たらしいインゴさんがすぐに戻って来た。
「‥‥外の通りで先程のご令嬢が転んだ様です。まだ騒いでいるようですので巻き込まれないように暫く外に出ない方よろしいかと。」
靴紐がほどけてたのを思い出した。地面に垂れ下がった紐を踏んで転んじゃったのかもしれない。
インゴさんの言葉に頷いて教会の奥の方に向いた。。
先程は令嬢達に絡まれて場の雰囲気が変わっちゃったけど、教会内はとても綺麗で厳かな雰囲気だ。空気まで澄んでいるような気がする。
僕達が通路を歩いて行くと修道女の女性は少し申し訳なさそうな顔をして僕達を出迎えた。
「こんにちは。」
僕が挨拶をすると、修道女の女性は表情を緩めた。
「こんにちは。お祈りにいらしたのですか?」
修道女の女性はさっきの件はスルーなのか何事もなかったかのように微笑む。
「いえ。ちょっと建物の中を見に来ただけなんです。」
僕はポケットに手を入れて手に触れたコインを取り出した。手をそっと開いて掌の中の硬貨をみると銀貨だった。今日はこれでいいかな。
僕が銀貨を差し出すと、修道女の女性は布で出来た入れ物を出して少し身を屈めた。僕が銀貨を入れ物に入れるとニコリとしてお礼を言った。
「ありがとうございます。ハチャマ様のご加護があらん事を。」
リヒャルトさんとインゴさんもそれぞれ銀貨を1枚寄付した。
領都の主教会だし革袋に入った金貨を寄付するべきか一瞬考えたけど、それは父様と一緒に来た時で良いよね。
「‥‥先程は、お助け出来ず申し訳ございませんでしたわ。」
「大丈夫だったので。」
修道女の女性はウィルマさんという名前だそうだ。
貴族の令嬢には強く出れず、どうしていいか判らなかったそうだ。
「あの方達はルフラン子爵家のご令嬢方だそうです。冬の間、近くに滞在されているそうなので気をつけてくださいね。」
ウィルマさんが少し声を潜めてそう言った時、奥の扉が開いた。現れたのは背が高くてごつい男性だった。緑色の法衣を身に纏っている。
「ウィルマ。教会に祈りにいらした方々の事を、他の方に安易に話すものではないよ。」
茶色の長い髪を後ろに束ねて眼鏡をかけた男性は、ウィルマさんにそう言った後、僕達に会釈をした。ウィルマさんは少し不満顔だ。
「ガーラン様。この方達の安全の為ですわ。貴族の方とトラブルになると危険ですから。
それに、先程の方達は『豊穣の祈り』の手順で祈らせろと強引に祈りの水晶までご使用になられたのに、ハチャマ様への感謝の言葉もなくお帰りになりました。
そしてご寄付をくださったこの方達を平民は去れと怒鳴ったのです。
この方達の安全を優先するのは当然ですわ。」
「何?」
ガーラン様と呼ばれた男性が太い眉をピクリと上げた。
「あ、お姉様!」
エルシャ嬢が後を追いかけて行く。出て行く直前に、もう一度僕達をギロリと睨んだ。パタンと扉が閉まった後は教会内が静かになった。
ほっとして安堵の息を吐いたけど、その後すぐ外で小さい悲鳴が聞こえてきた。
さっとリヒャルトさんとインゴさんが動きだす。リヒャルトさんは僕を庇う様に移動し、インゴさんは外の様子を見に扉の方に向かって行った。
パタン。扉を少し開けて外の様子を見たらしいインゴさんがすぐに戻って来た。
「‥‥外の通りで先程のご令嬢が転んだ様です。まだ騒いでいるようですので巻き込まれないように暫く外に出ない方よろしいかと。」
靴紐がほどけてたのを思い出した。地面に垂れ下がった紐を踏んで転んじゃったのかもしれない。
インゴさんの言葉に頷いて教会の奥の方に向いた。。
先程は令嬢達に絡まれて場の雰囲気が変わっちゃったけど、教会内はとても綺麗で厳かな雰囲気だ。空気まで澄んでいるような気がする。
僕達が通路を歩いて行くと修道女の女性は少し申し訳なさそうな顔をして僕達を出迎えた。
「こんにちは。」
僕が挨拶をすると、修道女の女性は表情を緩めた。
「こんにちは。お祈りにいらしたのですか?」
修道女の女性はさっきの件はスルーなのか何事もなかったかのように微笑む。
「いえ。ちょっと建物の中を見に来ただけなんです。」
僕はポケットに手を入れて手に触れたコインを取り出した。手をそっと開いて掌の中の硬貨をみると銀貨だった。今日はこれでいいかな。
僕が銀貨を差し出すと、修道女の女性は布で出来た入れ物を出して少し身を屈めた。僕が銀貨を入れ物に入れるとニコリとしてお礼を言った。
「ありがとうございます。ハチャマ様のご加護があらん事を。」
リヒャルトさんとインゴさんもそれぞれ銀貨を1枚寄付した。
領都の主教会だし革袋に入った金貨を寄付するべきか一瞬考えたけど、それは父様と一緒に来た時で良いよね。
「‥‥先程は、お助け出来ず申し訳ございませんでしたわ。」
「大丈夫だったので。」
修道女の女性はウィルマさんという名前だそうだ。
貴族の令嬢には強く出れず、どうしていいか判らなかったそうだ。
「あの方達はルフラン子爵家のご令嬢方だそうです。冬の間、近くに滞在されているそうなので気をつけてくださいね。」
ウィルマさんが少し声を潜めてそう言った時、奥の扉が開いた。現れたのは背が高くてごつい男性だった。緑色の法衣を身に纏っている。
「ウィルマ。教会に祈りにいらした方々の事を、他の方に安易に話すものではないよ。」
茶色の長い髪を後ろに束ねて眼鏡をかけた男性は、ウィルマさんにそう言った後、僕達に会釈をした。ウィルマさんは少し不満顔だ。
「ガーラン様。この方達の安全の為ですわ。貴族の方とトラブルになると危険ですから。
それに、先程の方達は『豊穣の祈り』の手順で祈らせろと強引に祈りの水晶までご使用になられたのに、ハチャマ様への感謝の言葉もなくお帰りになりました。
そしてご寄付をくださったこの方達を平民は去れと怒鳴ったのです。
この方達の安全を優先するのは当然ですわ。」
「何?」
ガーラン様と呼ばれた男性が太い眉をピクリと上げた。
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