自作ゲームの世界に転生したかと思ったけど、乙女ゲームを作った覚えはありません

月野槐樹

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第6章

第220話 お魚配達

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『‥‥海魔獣だね。‥‥魚系の。ソーマ、危ない事はしていないかい?』

少し間があってから、叔父様がゆっくりした口調で言うのが聞こえた。。木の箱の中を確認したらしい。

「危なくないよ。僕、映像で見てただけだよ。」
『‥‥そうか。ならいいよ。』

納得してもらえたようだ。良かった!

「それでね、こっちでもシェフに調理してもらおうと思うんだけど、これ渡したらやっぱりビックリしちゃうと思う?」
『そうだね‥‥。先に兄上に渡すのが良いと思うよ。私からも伝えておこう。』
「わかった!叔父様ありがとう!」
『こちらこそ、新鮮なお魚をありがとう。』

叔父様が父様に連絡してくれるというので、暫く待つことにした。
通話を切ったあと、解体済みの素材の確認をすることにする。
素材の中で一番軽くて薄いのは、飛魚魔獣の胸びれだった。手帳の用紙には向かないけど、魔力含有量は高い。
粉にしたりエキスを抽出して、紙を作るなら、亀の甲羅や鯨の骨も使えるかもしれない。
一通り、試すように、ストレージ錬金ボックスに設定をしてみた。

色々な組合わせの結果、生臭い紙とかどす黒い紙とか、真っ赤な紙とか色々できた。赤いのは蟹か海老の成分らしい。
色は文字がちゃんと読めるくらいなら、白にはこだわらない。魔力含有量が多く、丈夫で水にも強いもの。‥‥でもちょっと臭いのははなぁ‥‥。

そんな条件で、出来上がった物をチェックしていると、ノックの音がしてセバシが呼びに来た。

父様が呼んでいるという。叔父様が、父様に連絡をしてくれたようだ。
父様の執務室に行くと、父様にいきなり片手で抱え上げられた。

「このわんぱく坊主め。海魔獣を獲ってきたって?見せてごらん。」

父様は僕をソファーに座らせると、ちょんっと額をつついた。


父様がローテーブルを指し示すので、僕は、マジック財布から、木箱を取り出してローテーブルの上に乗せた。
父様が、木箱の蓋を開けて、中を見た。
鮪魔獣一匹。飛魚魔獣三匹。後、蟹爪と蟹足。
あ、飛魚魔獣はお刺身もおいしそうなんだけど、出汁をとりたいから、干してみて欲しいって言っておかないと。

「ほう。なかなか大漁だね。」

父様は木箱の中のお魚を見てニコニコしている。父様が喜んでくれて僕も嬉しい。僕も一緒にニコニコする。

父様が僕の頭をぽんぽんと撫でた。父様の手は凄く大きくてゴツくて、頭がぐらんぐらん揺れる。

「‥‥ソーマ、危ない事はしていないね?」

父様の声が、少しだけ低くなった。あ、これ、何か言い方間違うと怖いやつだ。
でも、僕、悪い事してないよ? ちゃんと言っておかなきゃ。ギュッと拳を握りしめて、父様を見上げた。

「僕、危ない事していないよ。お外にも出ていないです!」

唇に力を入れて父様を見上げると、ニコニコ顔の父様の顔が見えた。なんだろう、ニコニコしているのにもの凄く迫力があるなぁ。

「そうかそうか。」

父様は僕の頭を鷲掴みにぐりぐりして、僕の隣に座った。

「ソーマは、勝手に外に出かけてはいけないという言いつけをちゃんと守ったんだね。ソーマは賢くて良い子だね。」

ぐりぐりぐりぐりと僕の頭を撫でる。

ぐりぐりぐりぐり。

僕は父様に頭を撫でられるのは嫌いじゃないんだけど、ちょっとグラグラするんだよなぁ。
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