217 / 466
第6章
第217話 鯨魔獣
しおりを挟むユニオールの首都・リユニオンに着いたどー!
道中は魔物と遭遇する事もなく、国境超えもギルドカードのおかげで問題なくパス。平和なものだった。……揺り返しが怖いくらい平和だったんだが、これマジで大丈夫なのか?
「何をビクビクしていますの? 不審者と間違われても文句言えませんわよ」
と、言われましても……。お前はこの何も問題の無い現状に思うところは無いのか? 平和すぎるんだぞ!?
「貴方こそ何を仰っているのか……。平和ならそれに越したことはないでしょうに」
「とりあえず魔物エンカウント率が異常すぎるんだよ! 無ぇよ二週間、昼どころか夜さえ遭遇しないとか!」
普通は魔物避けの香とか焚かないと野宿とか無理って本で読んだぞ! いくらダンマスのダンジョンを宿にしてるからって襲撃が一度も無いとかおかしいだろ!
……レベル上げてぇのに獲物が来ない。待ちの姿勢がイカンのか? 攻めの姿勢で行かないと駄目なのか? 討伐依頼の時みたいに。
「絶対に何か巻き込まれるフラグだこれ……」
「単に私達に魔物が恐れをなしただけではありませんの?」
「駆け出しのくせになんでそう自信満々なんだ……このお嬢様は!」
俺らのレベルどんくらいだと思ってんだ? 少なくとも俺のレベルはまだ20にも行ってないぞ。ゴブリンの巣潰しは戦闘訓練には適してたんだが、レベル上げにはそれほど役立たなかった件ェ……。まあ、某RPGでいうところのスライムだもんな。
それにしてもエンカウント無しの原因を……原因を誰か教えてくれ――
スキル『威圧』発動中。(発動者:神山龍司)
発動者のレベルプラス5以下の害意ある魔物や獣を近寄らせない様にする。自動発動スキルのため、オフにするには『まりょく』が10以上必要。
なんか森羅さんのお陰でアッサリ解決……この二週間悶々としてた俺の気苦労って一体……?
いつの間にか新たなスキルをゲットしていたらしい。最近、ステータスのスキル欄見てなかったから気付かなかった……。それにしても俺って、気配遮断といいこの威圧といい、非戦闘スキル多くない? 戦うなって事なん?
*
冒険者ギルドは首都にあるだけあって、めっちゃ広い役所のような場所だった。
一階が総合受付カウンター。二階が図書室。三階より上は関係者以外立ち入り禁止の詳細不明スペースな四階建て。お約束の酒場はとなりに併設されていた。ほかにも訓練場とか学習塾まである。広い街なので支部とかもあるらしい。都心の冒険者ギルド、まじですごいな。
俺たちはとりあえず、受けられそうな依頼が無いか探すために総合カウンターへ向かった。
「いらっしゃいませ! 本日は依頼をお探しですか?」
にこやか営業スマイル! すげえ、某ファーストフード店もビックリなマニュアル対応だ! ファンタジー世界なのに!!
「あの……?」
驚愕のあまり俺が動かなくなったので、戸惑う受付嬢。
「彼は無視して良いですわ。何か初心者向けの依頼はあって?」
俺の代わりにシータが手続きを進めた。なんだかんだいって彼女の度胸は俺以上なのだ。
「あ、はいっ。それでしたらこちらになります」
受付嬢が取り出したのは、やたら重量感のある分厚いファイル。流石におののくシータさん。俺もちょっと引いた。|初心者向け依頼(おつかい)だけでも、こんなにあるのかよ! 軽く人が殺せるぞ、これ!?
「……ぶ、分厚いんですのね」
「何しろ大きな街ですから!」
雑用が多いんですね、わかります。でもって処理速度が追いついてないのな。この街、近場にダンジョンがあるから、みんなそっちに流れるんだろうなー。雑用よりは実入りがいいっぽいし。
「とりあえず俺は荷運び系かねぇ。こんな大きな街には草刈りとか需要なさそうだ」
「いやにこだわりますわね、草刈り」
「そらまー、はじめて受けて成功させた依頼だからな。思い入れもあるさ」
あと報酬が割とオイシイんだよなー。みんなやりたくねーけど、いつかはやらなきゃいけない系だから。
「――草刈りをご所望……なんですか!?」
――ん? どうしたんだ受付嬢さんよ。なんか目がキラキラし始めてるが。え、なにその意外な反応。
「――貴方が神か!!」
カウンターから乗り出し、俺の手をガシッと掴む受付嬢。目がらんらんとしていてヤベぇ。
――というか…………………はい? いや確かに俺、神さまですけど。
0
お気に入りに追加
181
あなたにおすすめの小説
アイムキャット❕~異世界キャット驚く漫遊記~
ma-no
ファンタジー
神様のミスで森に住む猫に転生させられた元人間。猫として第二の人生を歩むがこの世界は何かがおかしい。引っ掛かりはあるものの、猫家族と楽しく過ごしていた主人公は、ミスに気付いた神様に詫びの品を受け取る。
その品とは、全世界で使われた魔法が載っている魔法書。元人間の性からか、魔法書で変身魔法を探した主人公は、立って歩く猫へと変身する。
世界でただ一匹の歩く猫は、人間の住む街に行けば騒動勃発。
そして何故かハンターになって、王様に即位!?
この物語りは、歩く猫となった主人公がやらかしながら異世界を自由気ままに生きるドタバタコメディである。
注:イラストはイメージであって、登場猫物と異なります。
R指定は念の為です。
登場人物紹介は「11、15、19章」の手前にあります。
「小説家になろう」「カクヨム」にて、同時掲載しております。
一番最後にも登場人物紹介がありますので、途中でキャラを忘れている方はそちらをお読みください。
異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか
片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生!
悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした…
アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか?
痩せっぽっちの王女様奮闘記。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
幼馴染の勇者が一般人の僕をパーティーに入れようとするんですが
空色蜻蛉
ファンタジー
羊飼いの少年リヒトは、ある事件で勇者になってしまった幼馴染みに巻き込まれ、世界を救う旅へ……ではなく世界一周観光旅行に出発する。
「君達、僕は一般人だって何度言ったら分かるんだ?!
人間外の戦闘に巻き込まないでくれ。
魔王討伐の旅じゃなくて観光旅行なら別に良いけど……え? じゃあ観光旅行で良いって本気?」
どこまでもリヒト優先の幼馴染みと共に、人助けそっちのけで愉快な珍道中が始まる。一行のマスコット家畜メリーさんは巨大化するし、リヒト自身も秘密を抱えているがそれはそれとして。
人生は楽しまないと勿体ない!!
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

世界樹を暴走させたマッドサイエンティスト、死刑だけは嫌だとごねる!
アメノヒセカイ
ファンタジー
カクヨムにも掲載しております。
これは世界樹の花粉を浴びて老いることがなくなったラメッタと、捨て子として騎士団に拾われ生きてきたクレーエンが、一国の英雄となり、ともに生きると決めるまでの物語である!
<語句>
エアデ王国:クレーエン、ラメッタが住んでいた国。
バオム国:エアデ王国の従属国。魔王軍との前線を仕切る。資源がほとんどなく、魔王軍と戦うことでエアデ王国から支援を受けている。治安が悪い。
世界樹:人々に魔法を授けている。ラメッタが研究のために魔法薬をかけてから、魔法が大幅に弱体化してしまった。
ラメッタ:見た目は子供、中身は七十八才。老いることはない。魔法薬や魔道具の開発をする。己の好奇心を満たすためだけに世界樹に魔法薬をかけたとして死刑判決が出るのだが……。なお、魔王軍と戦うことで処刑が延期される約束を国王らとしている。
クレーエン:捨て子ゆえに騎士団に拾われて育てられたものの騎士団に正式に加入できず、しかしその強さゆえに騎士団の仕事を何度も手伝っていた。自身のことを強さから騎士団で面倒を見るしかない人間と考え、厄介者であると思っているが……。
バオム国の三姫:国王である父が前線に出ているため、三人で統治しているがほぼ機能していない。
長女ディーレ、次女ベリッヒ、三女チルカ。

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです
MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。
しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。
フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。
クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。
ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。
番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。
ご感想ありがとうございます!!
誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。
小説家になろう様に掲載済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる