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第5章

第186話 エルストベルクへ

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「でも、僕が兄様離れしないと、姉様が‥‥。」
「ソーマ。」

兄様がハンカチで僕の顔を拭いた。なんか顔が濡れているみたい。

「ソーマ。兄様はソーマと一緒にいたいよ。ソーマは、兄様と一緒は嫌?」
「嫌じゃないよ!‥‥兄様とご一緒がいいよ!でも‥‥。」

何か色々こみ上げてきて、止まらない。
兄様は僕と一緒にいたいの?兄様離れしなくていいの?
‥‥でも、そうしたら姉様は?

ハンカチの隙間から姉様の方を見たら、姉様が急に向かいのソファーから立ち上がって、僕の前に立った。正確には叔父様の前だ。

「‥‥ごめんね。ソーマ。ちょっと意地悪言っちゃった。」

兄様の手からハンカチを取って、僕の顔を拭いた。

「‥‥いじわる‥‥?」
「ソーマは、まだ小さいんだから兄様と一緒に居ていいのよ。」
「‥‥姉様は?」
「姉様の事は気にしなくていいのよ。どうしても王都にいなきゃいけない理由があるわけじゃないんだから。」
「‥‥でも‥‥。」

気にしなくていいの?姉様は王都にいたいんじゃないの?

困惑していると母様が口を開いた。

「アリサ、王都に残ってもいいわよ。」
「え?

母様、本当?いいの?」
姉様の声が弾む。

「暫く王都の屋敷に一人になっていいなら、残りなさい。」
「いいわ。王都に残るわ!やったわ~!」

姉様は嬉しそうに僕を抱きしめてゆらゆら揺れた。

「マーカス。なるべく頻繁に屋敷に様子を見に来てくれる?」
「了解。」

母様が頼むと、叔父様が了承した。
あれ、叔父様は王都に住んでるってことは、叔父様とまた、離れてしまうんだなぁ。

大市が終わる頃、僕たちは、姉様を王都に残して、エルストベルクに帰る事になった。冬の間姉様は王都の屋敷に一人になるんだって。寂しくないのかな。
僕はちょっと寂しいよ。

ラオウル君とご両親は、ポイズントレントの花蜜と樹液から作られた薬で、回復した。
ラオウル君のお父さんの足は解毒が完全に済んだ後に、怪我の治療をするので少し時間がかかるらしいのだけど、ラオウル君の左手は、数日で、すっかり普通の肌の色になった。痺れが残っているけど、それも時間が経てばよくなるらしい。

ラオウル君のお父さん、ルドルフさんは,怪我をする前は、銀級の冒険者で、結構活躍していたらしい。それが、怪我をして王都で、鉄級にランクを下げられてしまったのだって。
怪我をして、依頼が受けられなくなっても、銀級だったら通常は5年は、ランクが下がる事はないんだって。
何年も掛かる依頼もあるから、猶予期間は長めに設定してあるんだって。
でも、王都の冒険者ギルドは、ルドルフさんが大怪我をして、杖が無いと歩けない状態なのを見たら、すぐに銅級に下げてしまい、
文句を言ったら、更にもう1ランク下の鉄級まで下げられてしまったそうだ。
ラオウル君が、実技試験も受けさせてもらえなかった事もあって、王都の冒険者ギルドには、不信感が一杯だよ。

それで、僕達がエルストベルクに戻る時に、ラオウル君一家も一緒にエルストベルクに行く事になったんだ。
エルストベルクで冒険者活動をして、治療費を返すって言っているんだ。
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