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第5章

第175話 掘り出し物

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少し進路を逸れて毛織物類のエリアを抜けると、香辛料や染料、木の実や穀物、お酒など、食品関連の物が売られているエリアに入った。
何かスパイスっぽい匂いが立ち籠めている。
香辛料を見るのは楽しい。普段の市場であまり売られていないような香辛料はとりあえず買っておきたい。
香辛料の売り場で色々買った。普段市場で見る香辛料も状態よさそうだったら買っちゃう。
沢山買ったら、大きい布袋にまとめて入れてくれた。リヒャルトさんが背負ってくれる。サンタさんスタイル。
荷物が増えそうと思ったのか、インゴさんが手押し車を借りてくるといって、どこかに向かって行った。

香辛料に混じって、乾燥した薬草とかも売られている。
机の上に小さな壷が見本として並べられていたので、一つ一つ匂いをかいで確認していく。

ふと机の横の木の箱にも商品らしき物が入った麻袋が詰められているのを見つけた。麻袋が積み上げられていて、上に小さい壷がいくつか置いてある
見本らしいけど、どの麻袋の見本なのかよくわからないな。
しかも、麻袋の色も、机の背後に準備されている物に比べて、かなり薄汚れているように見える。

「ああ、それは、何か気に入った物が有ればお得ってやつさ。」

僕が木の箱を見ていたのに気づいたのか、店番のおばあさんが言った。

「新しい錬金釜を買った錬金術師が、代金が払えなくて、手持ちの物をまとめて置いていったらしいんだけどね。薬草以外は何だか分からないものばっかりさ。」

錬金術師の持ち物だったものか。量があるから、マジックバックとかに入れていたものを、置いて行ったのかな。
かなり年季の入った麻袋の上に置いてある、見本用の壷を一つ手にとって、見てみた。

ーーーーポイズントレントの花蜜、にゃ。ポイズントレントの呪毒を解毒するにゃ。

陶器の壷に蓋がついていて、蓋を開けると、茶色っぽいねっとりした液体が少し入っている。

「そこの棒で味見してもいいけど苦いよ。」

机の端っこの、細い木の枝が複数入った壷を指し示しておばあさんがいう。味見するときに、あの木の枝を突っ込んで、使うらしい。
味見してみても苦い蜜だから、売れないのかな。
ポイズントレントは、エルストベルク領にも時々出没する植物の魔獣だ。栗みたいなトゲトゲした実を投げつけてくるんだけど、その刺に毒があって、
刺さると、大変なんだ。
その実のトゲトゲが刺さるとそこから毒が回って、皮膚が紫色に腫れる。痛みと腫れ、しびれが酷くて、時間が経つともっと酷くなる。
一般的な解毒ポーションが全然聞かないやっかいな毒なので、呪毒って言われている。
花蜜と樹液に解毒作用があるので、うっかりさされたら、花を採って、さされたところに擦り付けたりするんだよね。


壷を一度戻して、もう一つの壷を見てみる。

ーーーーしゅわしゅわの種、にゃ。種の中の粉を水にいれると、しゅわしゅわするにゃ。お菓子に入れると膨らむそーだ。毒はないにゃ。

しゅわしゅわ? ソーダ?今一瞬駄洒落言った?重曹っぽいもの?

何か面白そうな物が色々ありそう。

「これ、いくらなんですか?」

値段が書いてなかったから、おばあさんに聞いてみた。

「どれでも一袋銀貨一枚。それ全部まとめてだったら銀貨10枚でいいよ。」

全部まとめてって、麻袋は何個あるんだろう。ちょっと、一番上の麻袋を持ち上げてみようとしたら、兄様が代わりに麻袋を持ってくれた。
僕がちょっと持ってみたら、麻袋一つでもかなり重かったのに、ひょいひょいと、何個か手にする。更に、護衛でついて来てくれたリヒャルトさんとインゴさんも
木の箱から麻袋を取り出すのを手伝ってくれる。
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