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第4章
第155話 撃退後
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僕は、風の壁を木の周りに広げた。
風の壁にぶつかると、角狼が弾き飛ばされて行く。
リヒャルトさんが風の槍を放って追撃している。
インゴさんは、ぴったり僕の傍に守るように立っている。
緊迫した時間が続いた。短剣を持って身構えていたラルフ君達は、風の壁の阻まれて角狼が入って来れない事がわかって、ギュンター君達の怪我の治療を始めた。
あちこち切り傷が有るが、大きな怪我はないようだ。ギルベルト君は怪我はないようだけど、ぜえぜえと肩で息をして座り込んでいた。
風の壁に吹き飛ばされる度に段々弱って行く角狼に、ヘルマンさんとリヒャルトさんが魔法で、攻撃していって、段々と角狼は数を減らして行った。
最後の数匹が、飛ばされて動きが鈍くなってきたところで、イーチ王子が、「俺がとどめをさす!」と、短剣を掲げた。
「俺も行きます!」
アルベルトさんも一緒に風の壁の外に飛び出して行って、剣でとどめを刺していった。
周辺に、生きている角狼がいなくなったのを確認してから風の壁を消した。
ふぅっと一斉に安堵の息を吐いた。
その場に座り込む者、緊張の糸が切れて泣き崩れるもの、色々だ。
周辺の状況を確認していたリヒャルトさんが、静かな声で言った。
「馬が‥‥。」
馬がつながれていた木の辺りをみると、蹲ったような影が見えた。血のような色も見える。
「え、木に繋がれたまま逃げられなかったから?」
僕が走り出そうとすると、インゴさんが、がっつりと僕の肩を抱いた。
「一人で行動しないでください。一緒にいきましょう。」
馬がつながれていた木のところに行くと、半分くらい角狼に食べられた馬の死体が散乱していた。
「可哀想に‥‥。」
埋めて上げたほうがいいんだろうか。インゴさんを見上げた。馬が身に付けていた登録証があったら持って帰った方がいいというので、探すことにした。水魔法で、血を洗い流して、見つけた登録証を拾って、更に洗って、袋にしまう。
三つ登録証が見つかった。
「‥‥もう一頭は、逃げたか? そういえば御者は‥‥」
インゴさんが周囲を見回した。
ここに来た時、木に馬をつないで、一頭ずつ水辺に連れて行っていた御者の姿を思い出した。
一頭連れて歩いている時に魔獣が来たのだったら、馬と一緒に逃げたのかもしれない。
「‥‥助けを呼びに行ってくれているといいんですけどね。」
「御者も馬もいないんじゃ、帰るのが大変そうだよね。‥‥ここどの辺だろう。王都の周りって結界があって魔獣は入れないんじゃなかったっけ。
‥‥ねえ、ここって‥‥。」
インゴさんは、腰につけていた鞄から小さい望見鏡をとりだして、周囲を見回した。
そして息を呑む音がした。
「‥‥ソーマ様。大変申し訳有りません。油断しておりました。ここは結界域の外です。」
「だから魔獣がでたのか。」
「暢気に言っている場合ではありませんよ。あちらに戻りましょう。」
インゴさんが険しい顔になって、皆が集まっている方に行くように促す。
「あ、待って。馬車の状態もちょっとみていい?御者の人が逃げ込んでいるかもしれないし」
遠くから見ても、馬車が横倒しになっているのはわかった。
御者が逃げていなかったとしたら、馬車の中に隠れていた可能性がある。一応見ておかないと。
馬車は倒れた時の衝撃か、車輪が一つはずれて、遠くの迄転がっていた。
近くまでくれば、人の気配がないことはわかるけれど、一応馬車の扉をあけてみる。
横倒しで、片側は地面についてしまっていて、もう片側はよじ上らないと開けられないが、御者席側から、窓を開ければ、中を覗き込めるし、身体をねじ込んで中に入る事もできる。
「御者サーン、いませんかー?」
一応声をかけてみるが、返事はない。
御者席の窓を開けて中を覗く。真っ暗だ。
風魔法で上側になっていた扉を吹き飛ばした。ドアから日の光が入り、馬車の中を照らす。誰もいない。
死体を見る事も、考慮に入れていたので、ちょっとホッとする。
「御者さんは逃げたのかな。」
「近くで、角狼にやられている可能性もありますけど、探し回るほど余裕はありませんね。」
インゴさんは、再度、皆が居るところに戻りましょうと僕を促した。
風の壁にぶつかると、角狼が弾き飛ばされて行く。
リヒャルトさんが風の槍を放って追撃している。
インゴさんは、ぴったり僕の傍に守るように立っている。
緊迫した時間が続いた。短剣を持って身構えていたラルフ君達は、風の壁の阻まれて角狼が入って来れない事がわかって、ギュンター君達の怪我の治療を始めた。
あちこち切り傷が有るが、大きな怪我はないようだ。ギルベルト君は怪我はないようだけど、ぜえぜえと肩で息をして座り込んでいた。
風の壁に吹き飛ばされる度に段々弱って行く角狼に、ヘルマンさんとリヒャルトさんが魔法で、攻撃していって、段々と角狼は数を減らして行った。
最後の数匹が、飛ばされて動きが鈍くなってきたところで、イーチ王子が、「俺がとどめをさす!」と、短剣を掲げた。
「俺も行きます!」
アルベルトさんも一緒に風の壁の外に飛び出して行って、剣でとどめを刺していった。
周辺に、生きている角狼がいなくなったのを確認してから風の壁を消した。
ふぅっと一斉に安堵の息を吐いた。
その場に座り込む者、緊張の糸が切れて泣き崩れるもの、色々だ。
周辺の状況を確認していたリヒャルトさんが、静かな声で言った。
「馬が‥‥。」
馬がつながれていた木の辺りをみると、蹲ったような影が見えた。血のような色も見える。
「え、木に繋がれたまま逃げられなかったから?」
僕が走り出そうとすると、インゴさんが、がっつりと僕の肩を抱いた。
「一人で行動しないでください。一緒にいきましょう。」
馬がつながれていた木のところに行くと、半分くらい角狼に食べられた馬の死体が散乱していた。
「可哀想に‥‥。」
埋めて上げたほうがいいんだろうか。インゴさんを見上げた。馬が身に付けていた登録証があったら持って帰った方がいいというので、探すことにした。水魔法で、血を洗い流して、見つけた登録証を拾って、更に洗って、袋にしまう。
三つ登録証が見つかった。
「‥‥もう一頭は、逃げたか? そういえば御者は‥‥」
インゴさんが周囲を見回した。
ここに来た時、木に馬をつないで、一頭ずつ水辺に連れて行っていた御者の姿を思い出した。
一頭連れて歩いている時に魔獣が来たのだったら、馬と一緒に逃げたのかもしれない。
「‥‥助けを呼びに行ってくれているといいんですけどね。」
「御者も馬もいないんじゃ、帰るのが大変そうだよね。‥‥ここどの辺だろう。王都の周りって結界があって魔獣は入れないんじゃなかったっけ。
‥‥ねえ、ここって‥‥。」
インゴさんは、腰につけていた鞄から小さい望見鏡をとりだして、周囲を見回した。
そして息を呑む音がした。
「‥‥ソーマ様。大変申し訳有りません。油断しておりました。ここは結界域の外です。」
「だから魔獣がでたのか。」
「暢気に言っている場合ではありませんよ。あちらに戻りましょう。」
インゴさんが険しい顔になって、皆が集まっている方に行くように促す。
「あ、待って。馬車の状態もちょっとみていい?御者の人が逃げ込んでいるかもしれないし」
遠くから見ても、馬車が横倒しになっているのはわかった。
御者が逃げていなかったとしたら、馬車の中に隠れていた可能性がある。一応見ておかないと。
馬車は倒れた時の衝撃か、車輪が一つはずれて、遠くの迄転がっていた。
近くまでくれば、人の気配がないことはわかるけれど、一応馬車の扉をあけてみる。
横倒しで、片側は地面についてしまっていて、もう片側はよじ上らないと開けられないが、御者席側から、窓を開ければ、中を覗き込めるし、身体をねじ込んで中に入る事もできる。
「御者サーン、いませんかー?」
一応声をかけてみるが、返事はない。
御者席の窓を開けて中を覗く。真っ暗だ。
風魔法で上側になっていた扉を吹き飛ばした。ドアから日の光が入り、馬車の中を照らす。誰もいない。
死体を見る事も、考慮に入れていたので、ちょっとホッとする。
「御者さんは逃げたのかな。」
「近くで、角狼にやられている可能性もありますけど、探し回るほど余裕はありませんね。」
インゴさんは、再度、皆が居るところに戻りましょうと僕を促した。
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